Episode 2
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はい、私 神崎 凛はですね・・・
いきなりですが、ここで生きていく為の戸籍や居住地諸々を手に入れました。
いやいや、さっきの今でなんでだよって?
わかりますよ。
私も未だに、んな阿呆なって思ってますもん。
でもこれが嘘ではなく本当なんですよね。
え?じゃあ何故なんだって?
それは、なんか以前の大型トラック事故の時にお世話になった警察の方たちが、涙ぐみながらーーーー
「大丈夫ですよ、神崎さん!
道のりは長いかもしれませんが、私たちと一緒にゆっくりと思い出して行きましょうね!」
「安心してください、神崎さん!
僕たちが最後まで神崎さんを助けますので!」
ーーーーとか色々言いながら、あれよあれよの内にすべて準備してくださりました。
改めて話していても、いや、何でだよって感じですよね。
てかね、その刑事さん2人もそうだけど、コナンくんよ・・・
私の実年齢を知って、"え、凛さんって10代後半だと思ってた・・・"は酷いよ。
私はアラサーだ。
紛うことなきアラサーだ。
まぁ、こっちの世界ではどうやらまだ3月10日らしいから、とりあえず27歳と言ったが・・・
それでも変わらずアラサーだ。
思わずアラサーって3回も言ってしまった・・・否、これで4回か。
そんな褒められても嬉しくないし、今の私には飴ちゃん1つすら出せないのだよ。
ーーーーあ、ローブのポケットの中に、何時ぞや校長室からパクったカムカムキャンディなら出て来たわ。
これ、明らかに腐ってます。
カムカムキャンディが生きてませんもん。
というワケで、すごいですね。
私ならこんな謎だらけで正体不明の女が目の前に居れば、即捕まえて牢にブチ込むレベルですよ。
なんなら真実薬飲ませて、嘘偽りなくすべてを吐かせますね。
いやぁ、さすが私の知ってる日本とは違うね!
A HA HA HA HA☆
「ーーーーーって、和んでる場合かぁぁぁぁぁ!!」
凛は盛大にちゃぶ台ーーーーテーブルをひっくり返した。
テーブルの上に乗っていた湯のみは、華麗な円を描いて空を舞う。
そして、無惨にも中身を飛び散らかし、カーペットの上に転がった。
「いや、正直さ!
ここに私の戸籍とかない事なんて、もはやわかってたから有難いっちゃ有難いよ!?
でもさ!
同じ国家国民の為にその命を捧げる者としてどうなの!?
それでいいのか日本の警察よ!!!」
凛はカーペットの上を転げ回りながら続けた。
「てか、私の知ってる世界には存在しなかったあのハイクオリティ且つハイスペックな機械で検査しても異常なかったのに、記憶喪失ってどういう事!?
ここの国の医者は大丈夫なのかぁぁぁぁ!?」
凛は誰に言うワケでもない叫びを散々ぶちまけた後、ふと冷静に戻った。
そしてひっくり返されたテーブルをいそいそと戻し、カーペットに染み込んだ水の残骸を拭きながら項垂れた。
「・・・お腹空いた。」
ぐぅぅぅぅと大きな腹の虫が鳴り、凛はカーペットの上にうつ伏せに倒れた。
丁度頬の部分が水で濡れていたが、彼女はもはや気にする気力もない。
一度死んだ私が、何がどうなってまた生きてるのかわからない。
結局、この世界がどこなのかもわからない。
わからないけど、生きてる事だけは確かだ。
生きてりゃ腹も減る。
すっからかんの胃袋は、貴様の気持ちを叫ぶ前に何か物を寄越せと大層ご立腹だ。
一昨日までは日本警察の優しさに胡座をかいて、病院で暖かな食事にありつけていた。
長年ホグワーツの高カロリー且つ味の濃い食事で慣れていた我が身体は、久しぶりの日本食の薄味に、感動で打ち震えて涙したものだ。
だが、退院した今はどうだ?
私はかの偉大なダンブルドア先生のように、手をパンッと鳴らしたり、杖をひと振りしただけで豪華な料理は出せない。
あれは、ホグワーツの校長としもべ妖精たちが居てこそのなせる技だ。
「あー・・・昨日からお水だけじゃ、さすがにお腹は膨れない。
何これ、生き返って即 THE END?
死ぬ度に見知らぬ世界に行けるってなら、次はマリコシスターズの世界がいいですね。
キノコとか無限に食べてやる・・・
襲ってくるキノコみたいな奴も食べてやる・・・
なんなら亀も食べてやる・・・」
凛は極度の空腹で、もはや自分で何を言っているのかすらわからなくなっていた。
その時、来客を知らせるチャイムが部屋に鳴り響いた。
