Episode 18
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降谷と共に主犯格に近い男が居る取り調べ室へ向かい、降谷がその部屋のドアノブに手を掛けた。
凛の方へ視線を移し、彼女が頷いたのを確認すると、ドアノブを回して部屋のドアを開けた。
開けられたドアの向こうに居た男は、出入口から見てわかる程の耳には大きく穴が空いたピアスホール、短い金髪に頬は少し痩せこけ、無精髭を生やした男だった。
その男の瞳はひどく淀んでおり、虚ろだった。
まるで生きる事にすべて諦めたかのような、そんな瞳だった。
その男が、開いたドアから入って来た凛をチラリと一瞥した。
「・・・なんだ、いつものヤツらじゃねぇのか。
アンタの隣に居る男は、何度か見た事あるけどよ・・・」
ゆっくりと気怠げに話した男は、ニヤリと口元を持ち上げた。
男が身動きした事で、パイプ椅子が軋んで高い音が小さく鳴った。
「なんの作戦か知らねぇが・・・残念だったな。
尋問する相手が女に代わったからって、俺ァなんも話せねぇぜ?」
凛は男の言葉に何も言わず、男とテーブルを挟んだ向かい側のパイプ椅子を引いて静かに座った。
その隣に降谷が立つ。
「しかし・・・アンタ、随分とひ弱そうだな。
本当にサツか?」
男の問い掛けに答えず、じっと男の淀んで虚ろな瞳を見つめた。
「なんだよ・・・
だんまりか?」
何も言葉を発さず、目の前にだだ座って見つめてくるだけの凛に、男は痺れを切らして強く舌打ちをした。
「ーーーーんだよ、テメェは!!
見てんじゃねぇよ!」
男は勢いよく立ち上がり、テーブルの上に手錠に掛けられた手を乱暴に振り落とした。
瞬間、降谷は凛の腕を掴んで無理矢理立たせて自身の後ろへ引っ張った。
パイプ椅子が倒れた音と、テーブルを叩きつけた音が部屋中に響いた。
「・・・OK、もう全部わかったよ。」
ポツリと零された凛の言葉に、男は眉間に皺を寄せて降谷の後ろに居る彼女を睨んだ。
「・・・あ?
今、なんつった?」
「"全部わかったよ"。」
もう一度同じ言葉を言った凛に、男はますます眉間の皺を深くして睨み付けた。
そんな男に動じず、凛は降谷の後ろから離れて男の前に行こうとした。
凛の行動を理解した降谷は、掴んでいた彼女の腕に少し力を込めた。
「・・・この人は大丈夫。
私を信じて。」
「だが・・・」
降谷が静止の声を掛けようとしたが、凛は有無言わさぬ目だった。
その目を信じておずおずと腕を離すと、凛は礼を述べて男の前へと歩みを進めた。
淀んだ虚ろな目に見下ろされながら、凛は口を開いた。
「・・・もう大丈夫です。」
「何を言ってやがる・・・」
「何も心配はありません。
後は我々に任せてください。」
「テメェらに何を任せろってんだ・・・
テメェらなんか無能だろ。
テメェに何がわかって、んな事が言えるんだ。」
「わかりますよ、全部。
貴方の何よりも大切なご家族を人質に取られてしまっては・・・何も話せませんよね。」
凛の言葉に男の目は見開かれ、勢いよく彼女の胸ぐらを掴んだ。
「凛さん!!」
すぐさま降谷が凛の胸ぐらを掴んでいた男の手を振り払い、男を押さえつけようとした。
しかし、凛は降谷の腕を強く引いて止めた。
「零さん、大丈夫だから。」
「あんな事されておきながら何を言っている!」
「もー・・・ ちょっと胸ぐらを掴まれただけじゃない。
それくらいで怒っちゃダメだよ。」
まだ何か言いたげな降谷を凛は窘めながら、男へと視線を移した。
視線が合った男は、あきらか動揺していた。
「我々が必ず貴方のご家族を守りますので。」
「なん・・・で・・・
俺ァ何も話して・・・」
「大丈夫です。
貴方はリーダーさんとの約束通り何も話していません。
何も話さくてもかまいません。
もうすべてわかっていますから。」
凛の意志の強い瞳を見ていた男は、その場にゆっくりと座り込んだ。
そして頭を下げた。
「・・・お願いだ。
こんな事、罪を犯した俺が言うのは間違ってるってのはわかってる・・・
でも・・・
俺の・・・家族を必ず守ってくれ。」
「はい、必ず守ると約束します。」
「ーーーーっ
あと、さっきは乱暴して悪かった。」
男の謝罪に、凛はフッと微笑んだ。
「乱暴されたなんてまったく思ってないので、その謝罪は受け取れませんね。」
その凛の返答に、降谷は困ったように溜め息を漏らした。
凛は男を部屋に残したまま降谷と共に出ると、すぐさま口を開いた。
「零さん・・・一度に言うよ?
麻薬保管場所は、海津倉庫のD。
ここにはたくさんの強腕な護衛が居るから要注意。
リーダーのおじさんは、海津倉庫から東に80キロ程離れた場所にあるBAR"ブルーハワイ"の2階を根城にしてる。
毎週月、水、金、日曜日は護衛を何人か付けて、くだらない演説周りで基本的そこには帰らないみたい。
でも、火、木、土曜日はその根城に若い女の子を連れ込んで朝までお盛ん。
その曜日は護衛も付けないみたい。
まぁ、おじさんは護衛なくても相当な腕の持ち主みたいだから、一人でも大丈夫みたいね。
元外国の軍隊に所属してたんだって。
それと・・・あの人の家族は、海津倉庫Dに隣接する小屋に閉じ込められてる。
ロクに食料とか貰えてるか定かじゃないから、急いだ方がいいかも。」
凛の口から次々と発せられる欲しかった情報に、降谷は頷いた。
そして、廊下へと出て来ていた公安部の部下たちに視線を向けた。
「聞いていたか?
大谷の班は閉じ込められた人の救助、松原の班は麻薬保管場所の制圧、あとの班は俺と共にブルーハワイへと向かう。」
「「「了解しました!」」」
降谷の的確な指示を受けた公安部の部下たちは、すぐさま出動しようとした。
「待ってください。」
その部下たちを呼び止めた凛は、彼らに向かって杖を振った。
「・・・護りの魔法をかけました。
くれぐれも気を付けてくださいね。」
凛に礼を述べて出動して行く部下たちを見送った降谷は、彼女に視線を移した。
「凛さん、ありがとう。
すごく助かった。」
「何言ってるの。
まだ終わってないよ。」
降谷の腕を引いて廊下を歩き出した凛に、降谷は慌てて呼び止めた。
「待て!
まさか・・・君も行くのか?」
「?
当然。」
「さすがに危険すぎる!
あとは俺たちの仕事だ!」
「零さんたちを護るのが私の仕事なの!
ほら、さっさと行くよ!」
渋る降谷を無理矢理引っ張って歩く凛に、降谷は片手で顔を覆って項垂れた。
