Episode 18
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この日、降谷はひどく疲れ切っていた。
彼の目元には濃い隈が見事出現していた為、朝からコンシーラー片手に奮闘する程だった。
「ーーーーん。」
「透さーん?」
「透さん!」
いつもであればすぐに反応出来た凛の呼び掛けにさえ気付かず、降谷は慌てて返事をした。
「すみません、凛さん。
どうしましたか?」
「・・・そのグラス、ずっと磨いてるよ。」
凛に指を差された方へ釣られて視線を移すと、自身の手にはいつから磨いていたのかさえわからないグラスが一つあった。
「何か考え事?」
「えぇ、まぁ・・・」
降谷はグラスを棚に戻しながら苦笑いをした。
降谷の濁した返答に納得いかなかったのか、凛がさらに問い掛けた。
「珍しいね。
透さんがそこまでボーッとしてるのも。
ここ数日は特に疲れてるみたいだし・・・大丈夫?」
(・・・相変わらず、そういう所にはすぐ気付くんだな。)
降谷は困ったようにフッと微笑むと、凛の頭を優しく撫でた。
彼女の柔らかい毛質が手のひらを伝って感じて、それがとても心地よかった。
「大丈夫ですよ。
心配かけてすみません。」
降谷はいつもの通りの愛想良い微笑みで答えながら彼女の頭から手を離すと、凛に突然その手を掴まれた。
そのまま掴まれた手を彼女の方へ引き寄せられ、降谷は自然に任せて凛の方へ身体を屈めた。
「凛さん?
どうしーーーー!?」
次の瞬間、降谷は無理矢理心をこじ開けられて記憶を覗き見られるのを感じ、眉間に皺を深く刻んだ。
その不快感をなんとか耐え凌いだ降谷は、凛の肩を優しく掴んで彼女の身体を少し離した。
「ーーーーっ
こら・・・、勝手に見るんじゃない。」
「ごめんなさい。
透さんが嘘をつくから覗いちゃった。」
凛は降谷の方へずずいと顔を近付けると、ニヤリと笑みを浮かべた。
その笑顔を見た降谷は、嫌な予感がした。
「・・・ねぇ、私のこの力。
透さんにとって、すっごく役立つと思うんだけど?」
「・・・貴女なら絶対そう言うと思ったので、僕は本当の事を言わなかったんですよ。」
嫌な予感が見事的中した降谷は溜め息を漏らすと、そそくさと凛から離れた。
凛はその背中を慌てて追い掛けて、降谷の手を掴んだ。
「どうして?
使えるものは使ってよ。
こんなにも便利グッズなんだよ?」
「僕は貴女を道具として見ていません。」
「じゃあ、下僕だ。」
「以ての外です。」
「なら、部下。」
「部下としても見ていません。」
「OK・・・犬ならどうだ。」
「ペットなら間に合っています。」
「・・・自分は公安の犬のくせに・・・」
「おや、僕の空耳だと思うのですが・・・
まさか今、凛さんが何か言いましたか?」
「イエ、ナニモ。」
引き下がらない凛に、降谷は再び溜め息を漏らした。
握られた手を振り解く事はせず、むしろその手を握り返す。
自分の手よりも小さいその手は、とても柔らかく滑らかだった。
その手の甲を親指で撫でながら、降谷は口を開いた。
「とにかく・・・
僕は貴女の事を道具としても下僕としても部下としても犬としても見ていません。」
「えー・・・
じゃあ、何としてなら見てくれるの?」
「まったく・・・
そうではなく、僕は凛さんに危険な事をさせたくないだけなんです。」
「透さんが居るから大丈夫でしょ?
ほら、お客様も居ない事だし・・・さっさと閉店作業しちゃおっか!」
キョトンとして話す凛に、降谷は心の中でそうじゃない!と盛大に項垂れた。
