Episode 12
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『お前は忠実な良き下僕であった・・・』
『・・・我が君?』
『これからせねばならぬ事を残念に思う・・・』
『我が君ーーーーっ!』
スネイプの少し焦った声の後、格子状のガラスに彼の身体がぶつかった。
何度も何度もぶつかる音と苦痛に耐えるようにして抑えた呻き声。
凛が格子状のガラスへ視線を移すと、そこはスネイプの血がこびりついていた。
凛はその光景に耐え切れず、その場から飛び出した。
『セブルス!!』
『ーーーーゴホッ、リン・・・くる、な・・・』
『嫌だ!
どうしてっ貴方までーーーっ』
凛は首元から大量の血を流して絶え絶えに呼吸を繰り返すスネイプの傍らに走り寄った。
そして、斜めに掛けていた小さめの鞄の中から、いくつかの魔法薬の入った小瓶を取り出し、スネイプの首元の傷や毒の治療を試みた。
『あぁ・・・
お前があの"規格外の魔女"で有名なリン・カンザキか・・・
是非とも1度逢ってみたかったのだ・・・』
凛はその不気味な笑い声の主であるヴォルデモートを、キッと鋭く睨みつけた。
『ヴォルデモート・・・』
スネイプをこの状態にした人物を目前に、凛の怒りは湧き上がる一方だ。
彼女は歯をギリィッと強く噛み締め、手に握られた小瓶や杖は、怒りのあまり震える手によって小刻みに揺れていた。
もちろんヴォルデモートが凛の眼力ぐらいで怯むはずがない。
それどころか、彼女が懸命に治療を試みる姿を嘲笑うかのようにヴォルデモートは鼻を鳴らした。
『そいつはもう何をしても無駄だ。
・・・だが、お前はこれからの俺様の世で役に立ちそうだ。
この世に存在する多くの魔族より、より強い魔力を持つ者・・・お前をずっと俺様は欲していた。
俺様の元へ来ると言うのであれば、お前だけは助けてやろう・・・どうだ?』
ヴォルデモートは指先でニワトコの杖をクルクルと弄びながら、チラリと視線を凛に移した。
凛は先程よりも一層強くヴォルデモートを睨み付けながら叫んだ。
『誰がお前なんかの元に行くか!
お前なんかの元に行くくらいなら、死んだ方がマシだ!』
凛のその言葉にヴォルデモートの口元がピクリと僅かに引き攣った。
『・・・あぁ、そうか。
それが貴様の答えか・・・』
その場に一気に冷ややかな空気が流れる。
強い怒りを含ませた赤い瞳に、凛の身体は主の意思関係なく震えを纏った。
そして、ひどく低い声がポツリと落とされた。
『ーーーーならば、死ね。』
凛はヴォルデモートの言葉を聞いてすぐさま魔力を解放し、自身の背後一面に分厚い氷壁を造り出した。
自身の後ろに居る者たちを護る為にーーーー
『『アバダ・ケダブラ(息絶えよ)!!』』
二人が杖腕を前に出して呪文を唱えたのは同時で、互いの杖先から出た緑の閃光がぶつかり合った。
ぶつかり合った呪文は相殺され、辺りに火花を散らす。
ヴォルデモートは口の端をゆっくりと持ち上げ、凛はこめかみからツゥッと一筋の汗が流れ落ちた。
そして互いに放った死の呪文が合図であったかのように、二人はひたすらに激しい攻防を続ける。
『それがお前のもう一つの姿か!
だが、例え姿変わろうとも俺様の前では無に等しい!!
お前がいくら強い魔力を持っていたとしてもな!!』
凛はヴォルデモートの圧倒的な魔力の強さに押され、奥歯を噛み締めた。
あまりにも強く噛み締めたせいか、歯茎が悲鳴を上げて血を流す。
しかし、今の彼女にそれを気にする余裕などない。
余裕な笑みを浮かべているヴォルデモートは、傍らに居た大蛇のナギニに、シューシューと蛇語で何かを指示していた。
主からの命令を聞いたナギニは、シュルリと身体をくねらせてその場から離れ、凛が造った氷壁へと近付いて行った。
そして氷壁へ向かって体当たりを繰り返し始めた。
ついに氷壁にヒビが入ってしまった時、凛はヴォルデモートとの攻防を止めた。
そして、ヒビ割れて穴が空いた氷壁に身体を押し込んでいるナギニに向かって、凛は左手をかざして鋭い氷塊を出した。
『俺様との勝負の最中によそ見をするな!!
アバダ・ケダブラ!!』
ヴォルデモートの放った緑の閃光が凛の身体を貫いた瞬間、辺りは真っ暗になった。
再び眩しい程の強い光に覆われ、降谷がゆっくりと目を開けると、そこは凛のマンションのリビングだった。
「・・・これが、私の世界での私の記憶のすべて。」
「ーーーーっ」
降谷はすぐに何も言えなかった。
幼い頃に目の前で両親を殺され、
周りから意味もわからず恐れられ、
やっと救われたかと思えば環境は変わらず、
仲の良かった人物は次々に殺され、
最後に残った唯一の一人も重体で助かったのかもわからず、
挙句凛自身も殺された・・・
こんな・・・こんなつらくて哀しい事なんてないだろ?
降谷は拳を強く握って奥歯を噛み締めた。
「・・・なんか、ごめんね?
その、私の事が怖くなった?」
「そんな事はない!」
「ふふ、そっか。
でも記憶を見てわかったと思うけど・・・
私は確かに化け物でーーーー」
「違う!
君は化け物なんかじゃない!」
降谷は凛を強く抱きしめた。
震えているのは自分自身か、それとも彼女なのかーーーー
降谷はただ強く強く彼女を抱きしめた。
「・・・零さん?」
「ずっとつらかったよな・・・
苦しかったよな・・・
すべて背負い込んで、多くの大切な者を目の前で亡くして・・・
ずっと一人で、よく耐えてきたよな・・・」
降谷の言葉に、凛の目から涙が零れ落ちた。
降谷の背中に腕を回して強く掴んだ。
震えていたのは彼女の方だった。
「うん・・・とてもつらかった。
大切なみんなが次々に目の前から居なくなっちゃう。
もう一人にはなりたくないんだ。
もう誰も死んで欲しくないの。」
「大丈夫。
もう大丈夫だから・・・
俺が必ず凛さんを護るから・・・
凛さんがもう哀しまなくていいようにするから・・・」
「・・・零さん、ありがとう。」
降谷は凛が泣き疲れて眠るまで、ずっと離れずに傍に居た。
