Episode 12
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場面が変わったーーーー
窓の外は深い闇色に染まり、大粒の雨が窓をしきりに叩き付けている。
聞こえる雷鳴は、まるでこの状況を楽しんで笑っているかようにひどく鳴り響く。
そう、事態は先程よりも悪化していたのだ。
バキィッ!!
壊された玄関ドアから、数人もの役人らしき男たちが土足で部屋の中に入り込んできた。
ひどい大雨を纏った男たちは、玄関やリビングを平気で濡らし、ドロドロに汚す。
母親が泣きじゃくる凛を抱きしめ、父親はその二人の前に立って護っていた。
すると、数人もの役人らしき男たちの中で、一人長のような男が前に出た。
「・・・アイツが当時の日本魔法省のトップである魔法大臣よ。」
凛は奥歯をギリッと噛み締めながら、低めの声で唸るようにして言った。
魔法大臣である男が、スッと父親の後ろに隠れていた凛を指差した。
「・・・神崎、いい加減我々の言う事を聞きなさい。
そこの規格外の魔女は、非常に危険な存在です。
規格外の魔女が今後力を身に付け、我々の脅威となる事は、貴方もわかっている事でしょう?」
「凛は普通の魔女だ!
危険な存在なんかじゃない!
魔法界の脅威にもならない!」
「フッ・・・
何を寝言を言ってるのやら・・・
すでにその力を恐れたマホウトコロに、入校を拒否される程だと言うのに?」
「マホウトコロに入校が出来ずとも、魔法学校は他国にもたくさんある!」
「はぁ・・・神崎、いいですか?
ーーーー"それ"は、ただの化け物ですよ。」
魔法大臣の男の言葉に父親の目は瞳孔を開き、握りしめた拳は震えていた。
そのあまりにも強く握りしめられた拳からは、血が流れ出ていた。
今にも魔法大臣の男に殴り掛かりそうな勢いの父親の腕を引いて抑えた母親は、その場で土下座をした。
「魔法大臣、お願いします!
凛は普通の魔女なのです!
この子はとても心優しい子です!
今もこれからも魔法界の脅威には、絶対なりません!
それは私たちが身を持って保証します!」
母親の叫びも虚しく、魔法大臣の男は母親を蔑んだ目で見下ろしながら溜め息を漏らした。
「まったく・・・埒が明きませんね。
神崎、貴方は我々の指示に従わなかった為、反逆者として処します。
そこで非常に無意味な事をしている貴女も同罪です。
・・・連れて行きなさい。」
魔法大臣の男は右手を軽く上げた。
すると、それを合図に魔法大臣の男の後ろに居た別の役人が、凛の方へ杖を向けた。
その瞬間、父親はすぐさま杖を取り出し、その役人に向かって魔法を放った。
「俺の娘に攻撃するな!」
父親の放った魔法が当たった役人は、壁を突き破って外へ飛んで行った。
それを見ていた魔法大臣の男は、口の端をゆっくりと持ち上げた。
「フッ・・・ハハッ!
ついにやりましたね、神崎!
我々の指示に従わないどころか、我々に攻撃をするとは!!
・・・私はね、前から貴方たち一家が気に食わなかったんですよ。」
魔法大臣の男は、ゆっくりと杖を父親と母親に向けた。
2人は急いで凛の元へ駆け寄り、きつく抱きしめた。
「凛、どんな事があろうとも必ず生きろ!
お前は俺たちの希望の光だ!」
「凛・・・最期まで貴女を護れなくてごめんなさい!
愛してるわ!
これからどんなにつらい事が待ち受けても、いつかは必ず報われる時が来るから!」
次の瞬間ーーーー
部屋中を覆い尽くすかのような光に覆われ、光が落ち着いた時には、父親も母親も凛に覆い被さるようにして動かなくなっていた。
「・・・ぱぱ? ま、ま・・・?」
凛は幼きながらもそれが何を意味するのか理解したようだった。
大きな瞳からボロボロと涙を零し、もう動く事のない父親と母親に懸命にしがみつく。
その凛を、魔法大臣の男は引きずり出して乱暴に髪の毛を掴んだ。
「ーーーーやっ!いや!!
離して!!
パパ!ママ!」
魔法大臣の男の手から逃れようと、凛は自身の髪の毛が抜け落ちようとも構わずに強く暴れた。
そして魔法大臣の男の手から逃れると、父親と母親の亡骸に必死にしがみつく。
魔法大臣の男は大きく舌打ちをすると、父親と母親にしがみつく凛の首根っこを掴んで持ち上げ、彼女の頬を容赦なく殴った。
5歳の子どもが、大人の拳など耐えられるはずがない。
いとも簡単に吹っ飛んだ凛は、壁に勢いよく身体を打ち付け、その場に血反吐を吐きながら崩れ落ちた。
「ーーーーチッ、薄汚い糞餓鬼が・・・
私の手を煩わせるな。」
その凛の腕を掴んで無理矢理立たせると、魔法大臣の男は神崎家から姿現しを使って消えた。
あまりにも悲惨な凛の過去に、降谷は奥歯を強く食いしばり、震える程に拳を強く握りしめた。
しかしこれがまだほんの始まりにすぎなかった事など、この時の降谷は当然知らなかった。
