Episode 12
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いつからだろうーーーー
彼女が俺を見てくれると、
彼女が俺に微笑みかけてくれると、
彼女が俺に話し掛けてくれると、
彼女が俺に触れてくれると、
俺の中に、まるで別の俺が出て来るみたいだ。
俺以外に見て欲しくなくて、
俺以外に微笑みかけて欲しくなくて、
俺以外に話し掛けて欲しくなくて、
俺以外に触れて欲しくなくて、
俺の中のもう一人の俺が、俺の心や思考をかき乱す。
もっと俺だけを見て欲しい、
もっと俺だけに微笑みかけて欲しい、
もっと俺だけに話し掛けて欲しい、
もっと俺だけに触れて欲しい、
もっと俺を知って欲しい、
もっと彼女に近付きたい、
もっと彼女の事を知りたい、
もっと彼女の為に尽くしたい、
もっと彼女に触れたい、
あぁ、知ってる。
この感情は・・・
ーーーーダメだ。
俺はゼロで、
潜入捜査官で、
いつ命を落としてもおかしくない存在で、
彼女はこの世界の住人じゃなくて、
彼女には帰るべき場所があって、
彼女には護るべき国があって、
それでも彼女を欲してしまう俺は、本当にどうかしてる。
わかっている。
頭ではわかっているんだ。
だから、せめて俺は彼女の事を護ると決めたんだ。
彼女がこの世界に居てくれる限り、安心してしあわせに過ごせるように・・・
彼女が笑って元の世界へ帰れるように・・・
俺の命に変えてでも必ず護ってみせる。
・・・そう、護るんだが・・・
彼女には、もっと危機感というものを持って欲しいと常々思う。
安室の視線の先には、ポアロの店先でせっせっと掃除をしている凛の姿がある。
いつもであれば仕事中はスキニーパンツの凛だが、本日は珍しくスカートだ。
さらに、本日は風が強い。
その為、凛のスカートは風でなびいている・・・いや、舞っているのだ。
危機管理がまったくなってない凛は、自身のスカートが舞ってる事など微塵にも気にせず、変わらずせっせっと掃除に勤しんでいる。
そんな凛の近くには、さも待ち合わせをしてるかのように見せながら、彼女の方へスマホを向けている男が居る。
もう一度言おう。
危機管理がまったくなってない凛は、スマホを向けられていようが気にしていないーーーー否、そもそも彼女は目の前の掃除に熱中していて気付いていないのかもしれない。
安室は溜め息を漏らすと、仕込みをしていた手を止めた。
そして出入口のドアへと早足で向かった。
カラン・・・
「凛さん。」
「あれ?
透さん、どうかしたの?」
「掃除を代わりますよ。」
「え、別にこれくらい私でも出来るよ?
いつもやってる事だし・・・」
「今日は風が冷たいので、女性が身体を冷やしてしまってはいけませんからね。
その代わりに、ケーキセットの仕込みの方をお願いしてもいいですか?」
「?
わかった。
気遣ってくれてありがとう。」
安室はにこやかな笑顔で凛から箒を受け取った。
そして、凛が店内でケーキセットの仕込みを始めたのを確認すると、安室が店外に出て来た瞬間にその場からそそくさと立ち去った男の後を追い掛けた。
