本作のヒロイン オペラップの本名
出会いー交際
ヒロインの名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「いらっしゃいっ! 空いてる席にどうぞー!」
ガラガラと引き戸を開けると、香ばしい醤油と出汁の香気と共に、賑やかで温かな声が出迎えてくれた。
静岡の街中に佇む『おぺら食堂』。
私服姿で訪れたホークスは、店内を見回して思わず目を細めた。
そこにあったのは、ヒーローコスチュームに身を包み、凛とした声で現場を指揮していた『オペラップ』の姿ではない。
髪を後ろでざっくりと結び、割烹着を着て大きなトレーを抱えて元気に店内を駆け回る、一人の親しみやすい「看板娘」の姿だった。
「あらホークス! 本当に来てくれたんだ!」
ホークスの存在に気づくと、彼女—— 歌織はパッと表情を輝かせ、フランクに駆け寄ってきた。
「えー! 私服めちゃくちゃオシャレ……!
流石、元が良いから似合うねぇ」
気さくに話しかけてくる歌織に、ホークスは羽を少し遊ばせながら笑みを返した。
「はい、約束通り来ちゃいました。
……ていうか、お店だとヒーローじゃなくて、お姉さんって感じなんすね」
「ふふ、まぁねぇ。ここでは肩肘張らずにくつろいで欲しいから、店ではこんな感じなの」
ふふ、と軽く笑う歌織。
いつも現場で見せる完璧な敬語や引き締まったプロの表情とは違う、等身大で気さくな口調。そのあまりにも自然体で愛らしいギャップに、ホークスの胸がどきりと大きく跳ねた。
(……やば。
プライベートこんな感じなんか……)
「さ、ホークス!
奥のカウンターでいいかしら?
うちのオススメは洋風照り焼きチキンなんだけど、気になるメニューある?」
「おー! 洋風? 珍しいすね。
俺、鶏肉好きなんで、それでお願いします」
「おっけー! 少々お待ちを♪」
手際よく注文を取り、おしぼりと水を出してくれる彼女の動作は、長年この店を切り盛りしてきた風格がある。
◇
店内の奥では、子どもたちが何人か楽しそうに食事をしている。
ふと壁を見渡すと、一枚の張り紙が目に留まった。
『子どものお食事無料
お腹がすいたらご飯を食べにおいで。お代は要りません。
あなたが将来お金を稼いでから払いに来てね。
もしくは、あなたが誰かのためにご飯を食べさせてくれたら嬉しいな。』
(……そういえば、店の前にも張り紙があったな)
店の入り口に『お腹が空いた子、いつでもどうぞ』と貼られていたのを思い出す。
歌織は子どもたちに食事を提供すると、「お待たせ〜! いっぱい食べてね!」
と明るく声をかけていた。
子どもたちの賑やかな声に耳を傾けながら、しばし店内を見渡していると、一人の男性が声を上げた。
「歌織ちゃん、お会計いいかな?」
声をかけたのは中年男性の常連客だ。
歌織が
「はいはーい! ただいま!」と張りのある声を上げ、レジへと向かう。
「はい、ではお釣りが……」
と言いかけた所で、男性は手を振って制した。
「いや、お釣りは要らないよ。
……全額は無理だけどさ、あの子らの食事代の足しにしてよ。
……俺も子供の頃腹空かせてた事あったからさ、ほっとけなくてよ」
照れくさそうに頭を掻く男性。
歌織は目を見開いてから、まっすぐに男性と目を合わせた。
「……ありがとうございます。大切に使わせていただきます」
「……よしてよ。たった数百円だよ」
謙遜する男性に対し、歌織は首を横に振る。
「いいえ、少なくとも私は貴方の善意に感動したし、感謝しました。
……本当にありがとうございます」
深くお辞儀をする歌織。
その姿に男性は照れくさそうに微笑んだ。
「……そんな風に言われると、嬉しいもんだね。また食べに来るよ」
「ええ! ぜひまたいらしてね。お待ちしております!」
男性を見送ると、歌織はパチンと自分の頬を叩き、気合を入れ直して厨房へと戻っていった。
◇
それから間もなく、洋風照り焼きチキン定食を持って歌織がホークスの前に戻ってくる。
「お待たせしました〜!
当店自慢の洋風照り焼きチキン定食です♪
熱いうちに召し上がれ〜」
慣れた手つきで配膳する彼女に、ホークスはカウンター越しに語りかけた。
「ありがとうございます。
……さっき、良い顔してましたね」
「……あは、見られちゃったかぁ。常連さんなんだけど、嬉しいよね。……ちょっとだけ私のヒーロー論語ってもいい?」
照れくさそうに、けれどどこか嬉しそうに話す歌織。
「ぜひ、聞きたいです」
ホークスが頷くと、彼女は目を輝かせて言葉を紡いだ。
「……私、みんなでヒーローみたいになる世界を目指してるんだよね。
色んな人のちょっとした優しさが集まって、取り残される人がいない世界が作れたらいいなーって。
だから……さっきみたいに言ってもらえると、理想に近付けた気がして……嬉しくなっちゃうの」
歌織は堪えきれずに「ふふ」と笑うと、パッと手で顔を覆った。
「……っはー!
期待のヒーローと仲良くなれたから、ちょっとテンション上がっちゃった!
お喋りに付き合ってくれてありがとね♪
…何を隠そう実は私、ペラペラお喋りだから『オペラップ』ってヒーロー名にしたの!」
誇らしげに胸を張る彼女に、ホークスは思わず吹き出した。
「……ははっ!
まじすかオペラップ……いや、歌織さん。
めちゃくちゃ面白いっすね!」
「あはは、そうでしょ!
よく言われる〜♪」
カラカラと笑うと、
「さ、ちょっと冷めちゃったかな?
ごめんね、ごゆっくり!」
と言って、次の料理を忙しく運びに向かっていった。
彼女の背中に目を遣りながら、ホークスは胸の奥に広がる感情に浸っていた。
(………道理で居心地が良いわけだ)
幼い頃の自分が求めた安心感を、すべて持っているような陽だまりの様な心地よさ。
そんな温かさに心が解れていく一方で、胸がギュッと締め付けられるような切なさを覚える。
「……うわ、うま」
料理に箸をつけると、慣れ親しんだ照り焼きチキンをベースに、バターの濃厚な香りと爽やかな香りが鼻に抜けた。
(……なるほど、洋風だ)
味もピカイチと来たものだから、たまったものじゃない。
◇
「……はぁ、生き返った〜。
ご馳走様でした、歌織さん」
「はーいお粗末さま! お口にあった?」
「いや〜、めちゃくちゃ美味かったです。
こりゃ通っちゃうな」
「えー! 拠点福岡だったよね!?
熱心なファンが出来て嬉しいわ〜」
冗談と受け取ってカラッと笑う歌織。
ホークスはそんな彼女を見つめ、少しだけ声をトーンダウンさせて含みを持たせた笑みを浮かべた。
「……いや、なるべく来ますよ。あなたに会いにね」
ストレートで甘いその言葉に、歌織は一瞬固まり、ボッと顔を真っ赤に染めた。
「そ、そうですか?
では、また……お待ちしております……」
もじもじと落ち着かない様子で、ホークスの背中を見送る歌織。
(……また来ます、か)
去っていくホークスの翼を見つめながら、歌織の胸がトクンと深く脈打った。
ガラガラと引き戸を開けると、香ばしい醤油と出汁の香気と共に、賑やかで温かな声が出迎えてくれた。
静岡の街中に佇む『おぺら食堂』。
私服姿で訪れたホークスは、店内を見回して思わず目を細めた。
そこにあったのは、ヒーローコスチュームに身を包み、凛とした声で現場を指揮していた『オペラップ』の姿ではない。
髪を後ろでざっくりと結び、割烹着を着て大きなトレーを抱えて元気に店内を駆け回る、一人の親しみやすい「看板娘」の姿だった。
「あらホークス! 本当に来てくれたんだ!」
ホークスの存在に気づくと、彼女—— 歌織はパッと表情を輝かせ、フランクに駆け寄ってきた。
「えー! 私服めちゃくちゃオシャレ……!
流石、元が良いから似合うねぇ」
気さくに話しかけてくる歌織に、ホークスは羽を少し遊ばせながら笑みを返した。
「はい、約束通り来ちゃいました。
……ていうか、お店だとヒーローじゃなくて、お姉さんって感じなんすね」
「ふふ、まぁねぇ。ここでは肩肘張らずにくつろいで欲しいから、店ではこんな感じなの」
ふふ、と軽く笑う歌織。
いつも現場で見せる完璧な敬語や引き締まったプロの表情とは違う、等身大で気さくな口調。そのあまりにも自然体で愛らしいギャップに、ホークスの胸がどきりと大きく跳ねた。
(……やば。
プライベートこんな感じなんか……)
「さ、ホークス!
奥のカウンターでいいかしら?
うちのオススメは洋風照り焼きチキンなんだけど、気になるメニューある?」
「おー! 洋風? 珍しいすね。
俺、鶏肉好きなんで、それでお願いします」
「おっけー! 少々お待ちを♪」
手際よく注文を取り、おしぼりと水を出してくれる彼女の動作は、長年この店を切り盛りしてきた風格がある。
◇
店内の奥では、子どもたちが何人か楽しそうに食事をしている。
ふと壁を見渡すと、一枚の張り紙が目に留まった。
『子どものお食事無料
お腹がすいたらご飯を食べにおいで。お代は要りません。
あなたが将来お金を稼いでから払いに来てね。
もしくは、あなたが誰かのためにご飯を食べさせてくれたら嬉しいな。』
(……そういえば、店の前にも張り紙があったな)
店の入り口に『お腹が空いた子、いつでもどうぞ』と貼られていたのを思い出す。
歌織は子どもたちに食事を提供すると、「お待たせ〜! いっぱい食べてね!」
と明るく声をかけていた。
子どもたちの賑やかな声に耳を傾けながら、しばし店内を見渡していると、一人の男性が声を上げた。
「歌織ちゃん、お会計いいかな?」
声をかけたのは中年男性の常連客だ。
歌織が
「はいはーい! ただいま!」と張りのある声を上げ、レジへと向かう。
「はい、ではお釣りが……」
と言いかけた所で、男性は手を振って制した。
「いや、お釣りは要らないよ。
……全額は無理だけどさ、あの子らの食事代の足しにしてよ。
……俺も子供の頃腹空かせてた事あったからさ、ほっとけなくてよ」
照れくさそうに頭を掻く男性。
歌織は目を見開いてから、まっすぐに男性と目を合わせた。
「……ありがとうございます。大切に使わせていただきます」
「……よしてよ。たった数百円だよ」
謙遜する男性に対し、歌織は首を横に振る。
「いいえ、少なくとも私は貴方の善意に感動したし、感謝しました。
……本当にありがとうございます」
深くお辞儀をする歌織。
その姿に男性は照れくさそうに微笑んだ。
「……そんな風に言われると、嬉しいもんだね。また食べに来るよ」
「ええ! ぜひまたいらしてね。お待ちしております!」
男性を見送ると、歌織はパチンと自分の頬を叩き、気合を入れ直して厨房へと戻っていった。
◇
それから間もなく、洋風照り焼きチキン定食を持って歌織がホークスの前に戻ってくる。
「お待たせしました〜!
当店自慢の洋風照り焼きチキン定食です♪
熱いうちに召し上がれ〜」
慣れた手つきで配膳する彼女に、ホークスはカウンター越しに語りかけた。
「ありがとうございます。
……さっき、良い顔してましたね」
「……あは、見られちゃったかぁ。常連さんなんだけど、嬉しいよね。……ちょっとだけ私のヒーロー論語ってもいい?」
照れくさそうに、けれどどこか嬉しそうに話す歌織。
「ぜひ、聞きたいです」
ホークスが頷くと、彼女は目を輝かせて言葉を紡いだ。
「……私、みんなでヒーローみたいになる世界を目指してるんだよね。
色んな人のちょっとした優しさが集まって、取り残される人がいない世界が作れたらいいなーって。
だから……さっきみたいに言ってもらえると、理想に近付けた気がして……嬉しくなっちゃうの」
歌織は堪えきれずに「ふふ」と笑うと、パッと手で顔を覆った。
「……っはー!
期待のヒーローと仲良くなれたから、ちょっとテンション上がっちゃった!
お喋りに付き合ってくれてありがとね♪
…何を隠そう実は私、ペラペラお喋りだから『オペラップ』ってヒーロー名にしたの!」
誇らしげに胸を張る彼女に、ホークスは思わず吹き出した。
「……ははっ!
まじすかオペラップ……いや、歌織さん。
めちゃくちゃ面白いっすね!」
「あはは、そうでしょ!
よく言われる〜♪」
カラカラと笑うと、
「さ、ちょっと冷めちゃったかな?
ごめんね、ごゆっくり!」
と言って、次の料理を忙しく運びに向かっていった。
彼女の背中に目を遣りながら、ホークスは胸の奥に広がる感情に浸っていた。
(………道理で居心地が良いわけだ)
幼い頃の自分が求めた安心感を、すべて持っているような陽だまりの様な心地よさ。
そんな温かさに心が解れていく一方で、胸がギュッと締め付けられるような切なさを覚える。
「……うわ、うま」
料理に箸をつけると、慣れ親しんだ照り焼きチキンをベースに、バターの濃厚な香りと爽やかな香りが鼻に抜けた。
(……なるほど、洋風だ)
味もピカイチと来たものだから、たまったものじゃない。
◇
「……はぁ、生き返った〜。
ご馳走様でした、歌織さん」
「はーいお粗末さま! お口にあった?」
「いや〜、めちゃくちゃ美味かったです。
こりゃ通っちゃうな」
「えー! 拠点福岡だったよね!?
熱心なファンが出来て嬉しいわ〜」
冗談と受け取ってカラッと笑う歌織。
ホークスはそんな彼女を見つめ、少しだけ声をトーンダウンさせて含みを持たせた笑みを浮かべた。
「……いや、なるべく来ますよ。あなたに会いにね」
ストレートで甘いその言葉に、歌織は一瞬固まり、ボッと顔を真っ赤に染めた。
「そ、そうですか?
では、また……お待ちしております……」
もじもじと落ち着かない様子で、ホークスの背中を見送る歌織。
(……また来ます、か)
去っていくホークスの翼を見つめながら、歌織の胸がトクンと深く脈打った。
