本作のヒロイン オペラップの本名
出会いー交際
ヒロインの名前
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ホークスの長期任務が終わった頃。
歌織は数曲の切ない恋愛ソングを歌い上げ、動画をSNSに投稿していた。
その画面に映り込むのは、寂しさを滲ませた薄紫色や藤色の心糸。
しかし、それ以上に目立つのは——以前よりも格段に密度と鮮やかさを増した、あの淡い桜色の心糸だった。
いつもと違う色味と雰囲気に、SNSのファンからは絶え間なくコメントが寄せられる。
『表現の幅が広がった!』
『なんだか心にジーンとくる……』
『聴いててこっちまで切なくなるよ!』
事情を知らない視聴者にまで、彼女の心の変化は丸わかりだったのだ。
「………まぁ、みんな気付くよね。」
動画のコメント欄をスクロールしながら、歌織はハァと溜息を吐いた。
「そして……みんなが気付くってことは、あの超鋭いヒーローが気付いていないってことは……まぁ、有り得ないわよね……」
歌織はさらに大きな溜息を吐き出すと、自分の両頬をパチンッ!と勢いよく叩いた。
「よしっ!
どうせ私の個性じゃ隠したって丸わかりだし、さっさと告白しよ!
ダメならダメで諦めつくし!」
彼女の『心音頭』は嘘を許さない。
だからこそ歌織は、普段から己の心にどこまでも素直に行動することを信条としていた。
つまり——こと恋愛に関しても、恐ろしいほど脳筋なのだ。
(ここ数年、恋愛で現を抜かすこともなかったんだ。
これはこれで良い経験になった!って割り切ればいいんだから!)
「次のライブで仕掛ける!」
歌織の心にメラメラと火がついた。
以前ホークスから「次は仕掛けます」と宣戦布告された歌織である。
その『次』をおめおめと指をくわえて待っているような、か弱く可愛いだけの女の子に収まるつもりは毛頭なかった。
「ふふ……歌唱ヒーロー『オペラップ』! その勝負、乗ったああああ!」
「うおおおおお!」と気合の雄叫びを上げながら、挑戦的な恋愛ソングのセットリストを組み上げていくのだった。
◇
一方、福岡。
長期の過酷な張り込み任務を無事に終えたホークスは、事務所のソファに深く腰掛け、久しぶりにオペラップのアカウントを開いた。
画面を再生した瞬間、しっとりとした恋愛ソングを切なげに歌う歌織の姿と、浮遊する桜色、藤色、薄紫色の心糸が目に飛び込んでくる。
(……マジすか歌織さん)
思わず口元がニヤけてしまうのを抑えられない。
切なさを示す新色の出現だけでも目を引くが、何よりピンク色の心糸は、新しい動画になるにつれてどんどん勢いを増していた。
歌織の恋心が、日に日に大きく育っている圧倒的な証明。
(……流石に勘違いの訳ないよなぁ。
巷じゃ俺も『速すぎる男』なんて呼ばれてるけど……ハッ、上には上がおるわ)
視聴者コメントの盛り上がりを眺めながら、ホークスはふっと口元を緩めた。
彼女のストレートすぎる返答に胸を締め付けられながら、メッセージ画面を開いてフリック入力を打つ。
『長期任務、無事終わりました。今度ライブ行きます』
送信ボタンを押し、スマホをポケットに収める。
(……さて。ここまで煽られてから、やられっぱなしの九州男児はおらんよ)
こちらもこちらで、静かに情熱の炎を燃やしていた。
◇
ホークスからのメッセージを受け取った歌織は、胸に手を当ててホッと息を吐いた。
「……まずは無事の確認が出来てよかった」
どんなに恋心で胸がいっぱいになろうと、彼は常に死と隣り合わせの現場に立つヒーローだ。
恋心よりも前に、まずは同業者として彼の無事を心から安堵し、労う。
『お疲れ様ホークス!
ご無事で何よりです。
次回のライブ、お会いできる事を楽しみにしています』
送信を終えると、歌織は再び顔を上げて拳を握りしめた。
「……よし!
本人も来るのなら余計に燃えるというもの!
目に物見せてくれるわぁ!」
◇
野外ライブ当日。
楽屋裏でオペラップが機材や衣装の最終チェックに勤しんでいると、背後から軽い足音が近づいてきた。
「オペラップさん、お久しぶりです」
ひょっこり現れ、右手を軽く上げて気さくに挨拶する男。
「あっ! ホークス!
お久しぶりです。お元気そうで良かった!」
いつもと変わらない彼の無傷な姿を見て、心から安堵する歌織。
……だったのだが、次の瞬間、メッセージのやり取りや自分の仕掛けた動画のことを思い出し、みるみる顔が真っ赤に染まっていく。
「ぅ…あの! きょ、今日は……たっぷり皆さんを魅了するつもりでやるので!
覚悟しておいてくださいね!」
最初は盛大にまごついたものの、途中で腹を括った歌織。
真っ赤な顔で不敵に笑い、自分を直視して宣言してくる彼女の勢いに、ホークスも思わず毒気を抜かれて薄く頬を染めた。
「……ふーん。楽しみに拝見しますよ。
ところで歌織さん、俺に会えなくて寂しかったりしてません?
ハグでもしておきます?」
敢えておちゃらけて両手を広げてみせるホークス。
歌織は一瞬でアワアワとパニックを起こした。
「は、ハグ!? そんなことしませんよ!!」
そう叫ぶや否や、ピューッと風を切って物陰に隠れてしまった。
ホークスは広げた腕を下ろし、「ざーんねん」と楽しそうに呟いて観覧エリアへと足を向けた。
◇
「みんなー! 今日も来てくれてありがとう!
歌唱ヒーロー『オペラップ』です!
今日も恋愛ソングメインだよ!
最近SNSに上げて人気の楽曲もてんこ盛りです♪
楽しんでいってねー!」
【セットリスト】
* ボルテッカー
* 恋は戦争
* セツナトリップ
* おじゃま虫
* 君じゃなきゃダメみたい
* 天ノ弱
* チェリーポップ
弾けるようなイントロと共に、挑戦的な恋愛ソングが次々と繰り出される。
歌声に合わせて、青空の下に鮮やかなピンク色の心糸が幾重にも弾け飛んだ。
光の糸が舞い散る圧巻のステージに、観客席からは大歓声が巻き起こる。
歌織は歌唱の合間、客席の後方に立つホークスと視線が合うたびに、パチンッとウィンクを飛ばしたり、指でピストルを作ってバン☆と狙い撃ちしてみせた。
一見すると「観客全体に向けたファンサービス」だが、その視線と心糸の集中先は明らかにただ一人。
(プロヒーローとして、パフォーマーとして、私にもプライドがある!
私のホームで先制獲ろうなんて、舐めた真似させないわよ若造がぁぁぁ!!)
もはや半分意地でバチバチに攻撃(アピール)を仕掛けていく姿は、彼女の恋愛慣れしていない不器用さをこれでもかと物語っていた。
それを見上げていたホークスは、思わず「ふははっ」と声を漏らして吹き出してしまった。
(……あかん、可愛すぎるやろ。
俺を煽ろうとして必死になっとるのも、恋愛経験なさすぎて空回りしとるのも、全部バレバレやって……)
自分の様子などお構いなしに、己の信じる最高のパフォーマンスを完璧にやり遂げていく目の前の彼女。
「……さすがヒーロー」
ホークスは愛おしさに胸を突かれながら、ぽそりと呟くのだった。
◇
ライブは大盛況のうちに幕を閉じた。
撤収作業に入るスタッフたちを労い、お礼を言って回る歌織。
ステージ裏のテントで、撤収作業の合間に冷たいペットボトルの水を口に含んで一休憩を入れていると——
「お疲れ様ですオペラップ! いやあ流石のパフォーマンスでしたね!」
ひょっこりと顔を出したホークス。
「グフッ! ゲホゲホッ!?」
不意を突かれた歌織は派手に咽せた。
「ほ、ホークス……ありがとうございます……」
水を飲み込み、タオルで口元を拭いながら、歌織は急激に冷や汗と恥ずかしさを覚え始める。
ステージの上ではドーパミンが出過ぎてしまい、調子に乗って散々彼を指差し、挑発するようなパフォーマンスをしてしまったのだ。
みるみるうちに顔が真っ赤になり、小さくなっていく歌織。
さっきまで堂々と歌っていたプロヒーローと同一人物とは思えないほどの落差に、ホークスの中で愛おしさと同時に、むくむくと小さな加虐心が湧き上がってくる。
ホークスは静かに距離を詰めると、歌織の耳元にそっと顔を寄せた。
「……好きって言って欲しかったんですか?」
耳孔を揺らす、低く熱を帯びた声。
「っ!?」
歌織は真っ赤になった耳を手に押し当て、バッと振り返ると、言葉にならない声で口をパクパクと金魚のように開閉させた。
そんな彼女の反応を愛おしそうに見つめた後、ホークスは表情を真剣なものへと切り替えた。
「……歌織さん、俺、あなたのこと好きですよ」
まっすぐに彼女の目を見つめて紡がれる言葉。
「あなたの綺麗なところも、泥臭いところも、自分を責めて吐き出した醜い本音も……全部に惹かれてしまいました。
今日のパフォーマンスも最高でしたよ。
……もっと色んなあなたを、一番近くで見たい。
……ダメですか?」
ホークスは誤魔化しの一切ない、誠実でまっすぐな瞳で彼女に向き直った。
(……まあ、一番はこの『嘘のつけない性質』に安心したんやけどね。)
不意打ちの本気すぎる告白に、歌織は目を丸くしてパチパチさせた後、おずおずと口を開いた。
「うえ……ほ、ほんとに……?
私なんて、しがない地方ヒーローだし、君よりも歳上だし……
個性も性格もムラがあり過ぎるし……!!
こんな私で……いいんですか……?」
自信なさげに見上げてくる歌織に、ホークスは柔らかく微笑んだ。
「もちろん。前に俺から仕掛けるって言ったでしょ?
……あなたの方から仕掛けてきたのには驚きましたが、そういう男前なところもグッときました」
ホークスの言葉に、歌織は顔をさらに赤くして俯いた。
それから、上目遣いにチラリと彼を見つめ——覚悟を決めたように小さく息を吸う。
「……では、私も……
君のこと、もっと知りたいです。
君の存在が私の中でどんどん大きくなっていって……いつの間にか、好きに……なってたみたい……。
よ、よろしくお願いします……!」
真っ赤な顔のまま、おずおずと右手を差し出す歌織。
ホークスはその手をすくい上げるように下から優しく包み込むと、そのまま唇を引き寄せ——
チュッ。
音を立てて、彼女の手の甲に熱いキスを落とした。
「っっっ〜〜〜〜〜!!???
ちょっ、ちょっと!! 握手じゃないの!?」
手の甲を押さえ、見たこともないほど顔を爆発させて絶叫する歌織。
「え〜、歌織さん純情っすね〜♪」
「〜〜〜〜〜っっっ!!(声にならない悲鳴)」
ケラケラと嬉しそうに笑うホークスと、あまりの刺激にキャパオーバーを起こして悶絶する歌織。
ちなみに、周囲で撤収作業をしていたスタッフたちは、二人のただならぬ甘い空気を察して見事な連携で遠くの機材を運ぶフリをし、完璧なプライベート空間を作り出してくれていたのだった。
歌織は数曲の切ない恋愛ソングを歌い上げ、動画をSNSに投稿していた。
その画面に映り込むのは、寂しさを滲ませた薄紫色や藤色の心糸。
しかし、それ以上に目立つのは——以前よりも格段に密度と鮮やかさを増した、あの淡い桜色の心糸だった。
いつもと違う色味と雰囲気に、SNSのファンからは絶え間なくコメントが寄せられる。
『表現の幅が広がった!』
『なんだか心にジーンとくる……』
『聴いててこっちまで切なくなるよ!』
事情を知らない視聴者にまで、彼女の心の変化は丸わかりだったのだ。
「………まぁ、みんな気付くよね。」
動画のコメント欄をスクロールしながら、歌織はハァと溜息を吐いた。
「そして……みんなが気付くってことは、あの超鋭いヒーローが気付いていないってことは……まぁ、有り得ないわよね……」
歌織はさらに大きな溜息を吐き出すと、自分の両頬をパチンッ!と勢いよく叩いた。
「よしっ!
どうせ私の個性じゃ隠したって丸わかりだし、さっさと告白しよ!
ダメならダメで諦めつくし!」
彼女の『心音頭』は嘘を許さない。
だからこそ歌織は、普段から己の心にどこまでも素直に行動することを信条としていた。
つまり——こと恋愛に関しても、恐ろしいほど脳筋なのだ。
(ここ数年、恋愛で現を抜かすこともなかったんだ。
これはこれで良い経験になった!って割り切ればいいんだから!)
「次のライブで仕掛ける!」
歌織の心にメラメラと火がついた。
以前ホークスから「次は仕掛けます」と宣戦布告された歌織である。
その『次』をおめおめと指をくわえて待っているような、か弱く可愛いだけの女の子に収まるつもりは毛頭なかった。
「ふふ……歌唱ヒーロー『オペラップ』! その勝負、乗ったああああ!」
「うおおおおお!」と気合の雄叫びを上げながら、挑戦的な恋愛ソングのセットリストを組み上げていくのだった。
◇
一方、福岡。
長期の過酷な張り込み任務を無事に終えたホークスは、事務所のソファに深く腰掛け、久しぶりにオペラップのアカウントを開いた。
画面を再生した瞬間、しっとりとした恋愛ソングを切なげに歌う歌織の姿と、浮遊する桜色、藤色、薄紫色の心糸が目に飛び込んでくる。
(……マジすか歌織さん)
思わず口元がニヤけてしまうのを抑えられない。
切なさを示す新色の出現だけでも目を引くが、何よりピンク色の心糸は、新しい動画になるにつれてどんどん勢いを増していた。
歌織の恋心が、日に日に大きく育っている圧倒的な証明。
(……流石に勘違いの訳ないよなぁ。
巷じゃ俺も『速すぎる男』なんて呼ばれてるけど……ハッ、上には上がおるわ)
視聴者コメントの盛り上がりを眺めながら、ホークスはふっと口元を緩めた。
彼女のストレートすぎる返答に胸を締め付けられながら、メッセージ画面を開いてフリック入力を打つ。
『長期任務、無事終わりました。今度ライブ行きます』
送信ボタンを押し、スマホをポケットに収める。
(……さて。ここまで煽られてから、やられっぱなしの九州男児はおらんよ)
こちらもこちらで、静かに情熱の炎を燃やしていた。
◇
ホークスからのメッセージを受け取った歌織は、胸に手を当ててホッと息を吐いた。
「……まずは無事の確認が出来てよかった」
どんなに恋心で胸がいっぱいになろうと、彼は常に死と隣り合わせの現場に立つヒーローだ。
恋心よりも前に、まずは同業者として彼の無事を心から安堵し、労う。
『お疲れ様ホークス!
ご無事で何よりです。
次回のライブ、お会いできる事を楽しみにしています』
送信を終えると、歌織は再び顔を上げて拳を握りしめた。
「……よし!
本人も来るのなら余計に燃えるというもの!
目に物見せてくれるわぁ!」
◇
野外ライブ当日。
楽屋裏でオペラップが機材や衣装の最終チェックに勤しんでいると、背後から軽い足音が近づいてきた。
「オペラップさん、お久しぶりです」
ひょっこり現れ、右手を軽く上げて気さくに挨拶する男。
「あっ! ホークス!
お久しぶりです。お元気そうで良かった!」
いつもと変わらない彼の無傷な姿を見て、心から安堵する歌織。
……だったのだが、次の瞬間、メッセージのやり取りや自分の仕掛けた動画のことを思い出し、みるみる顔が真っ赤に染まっていく。
「ぅ…あの! きょ、今日は……たっぷり皆さんを魅了するつもりでやるので!
覚悟しておいてくださいね!」
最初は盛大にまごついたものの、途中で腹を括った歌織。
真っ赤な顔で不敵に笑い、自分を直視して宣言してくる彼女の勢いに、ホークスも思わず毒気を抜かれて薄く頬を染めた。
「……ふーん。楽しみに拝見しますよ。
ところで歌織さん、俺に会えなくて寂しかったりしてません?
ハグでもしておきます?」
敢えておちゃらけて両手を広げてみせるホークス。
歌織は一瞬でアワアワとパニックを起こした。
「は、ハグ!? そんなことしませんよ!!」
そう叫ぶや否や、ピューッと風を切って物陰に隠れてしまった。
ホークスは広げた腕を下ろし、「ざーんねん」と楽しそうに呟いて観覧エリアへと足を向けた。
◇
「みんなー! 今日も来てくれてありがとう!
歌唱ヒーロー『オペラップ』です!
今日も恋愛ソングメインだよ!
最近SNSに上げて人気の楽曲もてんこ盛りです♪
楽しんでいってねー!」
【セットリスト】
* ボルテッカー
* 恋は戦争
* セツナトリップ
* おじゃま虫
* 君じゃなきゃダメみたい
* 天ノ弱
* チェリーポップ
弾けるようなイントロと共に、挑戦的な恋愛ソングが次々と繰り出される。
歌声に合わせて、青空の下に鮮やかなピンク色の心糸が幾重にも弾け飛んだ。
光の糸が舞い散る圧巻のステージに、観客席からは大歓声が巻き起こる。
歌織は歌唱の合間、客席の後方に立つホークスと視線が合うたびに、パチンッとウィンクを飛ばしたり、指でピストルを作ってバン☆と狙い撃ちしてみせた。
一見すると「観客全体に向けたファンサービス」だが、その視線と心糸の集中先は明らかにただ一人。
(プロヒーローとして、パフォーマーとして、私にもプライドがある!
私のホームで先制獲ろうなんて、舐めた真似させないわよ若造がぁぁぁ!!)
もはや半分意地でバチバチに攻撃(アピール)を仕掛けていく姿は、彼女の恋愛慣れしていない不器用さをこれでもかと物語っていた。
それを見上げていたホークスは、思わず「ふははっ」と声を漏らして吹き出してしまった。
(……あかん、可愛すぎるやろ。
俺を煽ろうとして必死になっとるのも、恋愛経験なさすぎて空回りしとるのも、全部バレバレやって……)
自分の様子などお構いなしに、己の信じる最高のパフォーマンスを完璧にやり遂げていく目の前の彼女。
「……さすがヒーロー」
ホークスは愛おしさに胸を突かれながら、ぽそりと呟くのだった。
◇
ライブは大盛況のうちに幕を閉じた。
撤収作業に入るスタッフたちを労い、お礼を言って回る歌織。
ステージ裏のテントで、撤収作業の合間に冷たいペットボトルの水を口に含んで一休憩を入れていると——
「お疲れ様ですオペラップ! いやあ流石のパフォーマンスでしたね!」
ひょっこりと顔を出したホークス。
「グフッ! ゲホゲホッ!?」
不意を突かれた歌織は派手に咽せた。
「ほ、ホークス……ありがとうございます……」
水を飲み込み、タオルで口元を拭いながら、歌織は急激に冷や汗と恥ずかしさを覚え始める。
ステージの上ではドーパミンが出過ぎてしまい、調子に乗って散々彼を指差し、挑発するようなパフォーマンスをしてしまったのだ。
みるみるうちに顔が真っ赤になり、小さくなっていく歌織。
さっきまで堂々と歌っていたプロヒーローと同一人物とは思えないほどの落差に、ホークスの中で愛おしさと同時に、むくむくと小さな加虐心が湧き上がってくる。
ホークスは静かに距離を詰めると、歌織の耳元にそっと顔を寄せた。
「……好きって言って欲しかったんですか?」
耳孔を揺らす、低く熱を帯びた声。
「っ!?」
歌織は真っ赤になった耳を手に押し当て、バッと振り返ると、言葉にならない声で口をパクパクと金魚のように開閉させた。
そんな彼女の反応を愛おしそうに見つめた後、ホークスは表情を真剣なものへと切り替えた。
「……歌織さん、俺、あなたのこと好きですよ」
まっすぐに彼女の目を見つめて紡がれる言葉。
「あなたの綺麗なところも、泥臭いところも、自分を責めて吐き出した醜い本音も……全部に惹かれてしまいました。
今日のパフォーマンスも最高でしたよ。
……もっと色んなあなたを、一番近くで見たい。
……ダメですか?」
ホークスは誤魔化しの一切ない、誠実でまっすぐな瞳で彼女に向き直った。
(……まあ、一番はこの『嘘のつけない性質』に安心したんやけどね。)
不意打ちの本気すぎる告白に、歌織は目を丸くしてパチパチさせた後、おずおずと口を開いた。
「うえ……ほ、ほんとに……?
私なんて、しがない地方ヒーローだし、君よりも歳上だし……
個性も性格もムラがあり過ぎるし……!!
こんな私で……いいんですか……?」
自信なさげに見上げてくる歌織に、ホークスは柔らかく微笑んだ。
「もちろん。前に俺から仕掛けるって言ったでしょ?
……あなたの方から仕掛けてきたのには驚きましたが、そういう男前なところもグッときました」
ホークスの言葉に、歌織は顔をさらに赤くして俯いた。
それから、上目遣いにチラリと彼を見つめ——覚悟を決めたように小さく息を吸う。
「……では、私も……
君のこと、もっと知りたいです。
君の存在が私の中でどんどん大きくなっていって……いつの間にか、好きに……なってたみたい……。
よ、よろしくお願いします……!」
真っ赤な顔のまま、おずおずと右手を差し出す歌織。
ホークスはその手をすくい上げるように下から優しく包み込むと、そのまま唇を引き寄せ——
チュッ。
音を立てて、彼女の手の甲に熱いキスを落とした。
「っっっ〜〜〜〜〜!!???
ちょっ、ちょっと!! 握手じゃないの!?」
手の甲を押さえ、見たこともないほど顔を爆発させて絶叫する歌織。
「え〜、歌織さん純情っすね〜♪」
「〜〜〜〜〜っっっ!!(声にならない悲鳴)」
ケラケラと嬉しそうに笑うホークスと、あまりの刺激にキャパオーバーを起こして悶絶する歌織。
ちなみに、周囲で撤収作業をしていたスタッフたちは、二人のただならぬ甘い空気を察して見事な連携で遠くの機材を運ぶフリをし、完璧なプライベート空間を作り出してくれていたのだった。
