本作のヒロイン オペラップの本名
出会いー交際
ヒロインの名前
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※前半、おぺら食堂店長視点のお話です。
歌織があの『チェリーポップ』の動画を公開してから、しばらくが経った頃。
それまでは頻繁におぺら食堂へ顔を出していたホークスが、最近めっきり姿を見せなくなった。
歌織から聞いた話によれば、「長期の張り込み任務が入ったからしばらく寄れない」ということらしい。
……だが、ここ最近の歌織の様子が、どうにもおかしいのだ。
表面上は普段通り元気に振る舞っているように見えて、ふとした瞬間に頬を赤らめ、
「はぁ……」
と熱っぽい溜息を吐いている。
体調でも崩したのかと心配して声をかけると、歌織は
「えーっ! いつも通り元気だよ?」
といつもの明るい笑顔を返してくるのだが。
歌織は仕込みや料理の最中、よく鼻歌を口ずさむ。
その際にも彼女の『個性』である心糸がふわふわと宙に舞うのだが……
ここ最近、厨房を飛び交う糸の色が明らかに違っていた。
色鮮やかな糸に混ざって、甘いピンク色や、見たこともない薄紫色の心糸がふわりと浮かんでいるのだ。
歌織とはもう4年以上一緒に食堂で働いているが、こんな糸が出ることなんて今まで一度もなかった。
「……なんか、最近歌織ちゃん雰囲気変わったわよね?」
コンロの脇で仕込みをしていた中年女性の厨房スタッフが、歌織に聞こえないよう声を潜めて振ってきた。
「……そうだな。何かあったのか……」
俺が腕を組み、あいつの身を案じて眉をひそめると、女性スタッフは「やぁだぁ〜!」と俺の肩を軽く叩いて笑い飛ばした。
「店長ったら鈍いんだから!
……あれは絶対恋よ、恋! 羨ましいわ〜若いって♪」
愉快そうに目を細めるスタッフの言葉に、俺はハッとして思い当たる節を探った。
(……そういえば、あのホークスが店に顔を出すようになってから……厨房で時々見かけるようになったな、ピンクの心糸)
なるほど、と一人で納得する。
……なら、あの急に増え始めた薄紫色の糸は一体何なんだ?
ホークスがぱったりと来なくなってから、ピンクに混ざって飛び交うようになったあの色。
思考を巡らせた末、俺は一つの答えに行き着いた。
(……寂しさ、か)
彼に会えない時間が生み出す、ほろ苦い恋慕と切なさ。
あの薄紫色の糸は、あいつの胸の奥から溢れ出た「ホークスに会いたい」という素直な寂しさが形になったものなのだろう。
「……俺ぁ、恋愛のことはてんで分からないからなぁ」
頭を掻きながら、仕込みの手を止めてぼんやりとしていた歌織の背中をポンと軽く叩いた。
「うわっ!? びっくりした! ……昼夜くん、どうかした?」
目を丸くして見上げてくる、小さな彼女。
不器用な俺に気の利いたアドバイスなんてできるはずもないが、店長として、仲間として、言えることは一つだけだった。
「ま、何かあったら話聞くからな」
「へ? あ、うん……ありがとね??」
頭の上にいくつもの「?」を浮かべながら返事をする歌織を横目に、俺は黙って自分の作業に戻ったのだった。
◇
その日の夜。食堂の営業が一通り終わり、片付けを終えた歌織は、事務所の収録ルームに一人でこもっていた。
マイクの前に立ち、伴奏を流す。
今夜選んだ曲は——『天ノ弱』。
切なく胸を締め付けるようなメロディに自分の今の心情を重ね合わせ、歌織は感情を乗せて歌い上げた。
旋律に合わせて、空間には切なげに揺らめく薄紫色の心糸が幾重にも生み出されては、静かに消えていく。
歌い終え、録画したデータをパソコンで確認していた歌織は、画面の中でセンチメンタルに歌う己の姿を見て顔を覆った。
「……はぁ。感情垂れ流しではっずかし……」
大きな溜息を吐き、情けなさそうに項垂れる歌織。
……だが、次の瞬間、彼女の瞳にプロヒーローとしての鋭い光が宿った。
「……とはいえ、こういう切ない歌は一部の層に強く刺さるのよねぇ。
良絽鼓舞(よろこぶ)の発動条件を緩和するためにも、私はもっと知名度を上げなければならないんだ……!!」
彼女の『個性』の真価を発揮するには、聴き手との繋がりや知名度が大きな鍵となる。
「この切ない感情すらも武器にして、ヒーロー社会をのし上がってみせる……!!」
「うおー!」と自分で自分に気合を入れ、歌織は照れくささを振り切るようにキーボードを叩き、動画の編集を終えてSNSへアップロードするのだった。
歌織があの『チェリーポップ』の動画を公開してから、しばらくが経った頃。
それまでは頻繁におぺら食堂へ顔を出していたホークスが、最近めっきり姿を見せなくなった。
歌織から聞いた話によれば、「長期の張り込み任務が入ったからしばらく寄れない」ということらしい。
……だが、ここ最近の歌織の様子が、どうにもおかしいのだ。
表面上は普段通り元気に振る舞っているように見えて、ふとした瞬間に頬を赤らめ、
「はぁ……」
と熱っぽい溜息を吐いている。
体調でも崩したのかと心配して声をかけると、歌織は
「えーっ! いつも通り元気だよ?」
といつもの明るい笑顔を返してくるのだが。
歌織は仕込みや料理の最中、よく鼻歌を口ずさむ。
その際にも彼女の『個性』である心糸がふわふわと宙に舞うのだが……
ここ最近、厨房を飛び交う糸の色が明らかに違っていた。
色鮮やかな糸に混ざって、甘いピンク色や、見たこともない薄紫色の心糸がふわりと浮かんでいるのだ。
歌織とはもう4年以上一緒に食堂で働いているが、こんな糸が出ることなんて今まで一度もなかった。
「……なんか、最近歌織ちゃん雰囲気変わったわよね?」
コンロの脇で仕込みをしていた中年女性の厨房スタッフが、歌織に聞こえないよう声を潜めて振ってきた。
「……そうだな。何かあったのか……」
俺が腕を組み、あいつの身を案じて眉をひそめると、女性スタッフは「やぁだぁ〜!」と俺の肩を軽く叩いて笑い飛ばした。
「店長ったら鈍いんだから!
……あれは絶対恋よ、恋! 羨ましいわ〜若いって♪」
愉快そうに目を細めるスタッフの言葉に、俺はハッとして思い当たる節を探った。
(……そういえば、あのホークスが店に顔を出すようになってから……厨房で時々見かけるようになったな、ピンクの心糸)
なるほど、と一人で納得する。
……なら、あの急に増え始めた薄紫色の糸は一体何なんだ?
ホークスがぱったりと来なくなってから、ピンクに混ざって飛び交うようになったあの色。
思考を巡らせた末、俺は一つの答えに行き着いた。
(……寂しさ、か)
彼に会えない時間が生み出す、ほろ苦い恋慕と切なさ。
あの薄紫色の糸は、あいつの胸の奥から溢れ出た「ホークスに会いたい」という素直な寂しさが形になったものなのだろう。
「……俺ぁ、恋愛のことはてんで分からないからなぁ」
頭を掻きながら、仕込みの手を止めてぼんやりとしていた歌織の背中をポンと軽く叩いた。
「うわっ!? びっくりした! ……昼夜くん、どうかした?」
目を丸くして見上げてくる、小さな彼女。
不器用な俺に気の利いたアドバイスなんてできるはずもないが、店長として、仲間として、言えることは一つだけだった。
「ま、何かあったら話聞くからな」
「へ? あ、うん……ありがとね??」
頭の上にいくつもの「?」を浮かべながら返事をする歌織を横目に、俺は黙って自分の作業に戻ったのだった。
◇
その日の夜。食堂の営業が一通り終わり、片付けを終えた歌織は、事務所の収録ルームに一人でこもっていた。
マイクの前に立ち、伴奏を流す。
今夜選んだ曲は——『天ノ弱』。
切なく胸を締め付けるようなメロディに自分の今の心情を重ね合わせ、歌織は感情を乗せて歌い上げた。
旋律に合わせて、空間には切なげに揺らめく薄紫色の心糸が幾重にも生み出されては、静かに消えていく。
歌い終え、録画したデータをパソコンで確認していた歌織は、画面の中でセンチメンタルに歌う己の姿を見て顔を覆った。
「……はぁ。感情垂れ流しではっずかし……」
大きな溜息を吐き、情けなさそうに項垂れる歌織。
……だが、次の瞬間、彼女の瞳にプロヒーローとしての鋭い光が宿った。
「……とはいえ、こういう切ない歌は一部の層に強く刺さるのよねぇ。
良絽鼓舞(よろこぶ)の発動条件を緩和するためにも、私はもっと知名度を上げなければならないんだ……!!」
彼女の『個性』の真価を発揮するには、聴き手との繋がりや知名度が大きな鍵となる。
「この切ない感情すらも武器にして、ヒーロー社会をのし上がってみせる……!!」
「うおー!」と自分で自分に気合を入れ、歌織は照れくささを振り切るようにキーボードを叩き、動画の編集を終えてSNSへアップロードするのだった。
