最終話 流れ星の誓約
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路地裏の小さな医院にはヒーローが寄り付かない。
それは有名な話だった。
理由は簡単、そこには絶対にヒーローを診ない医者がいたからだ。
それなのに――。
「ぎゃっははは!!! かっちゃんマジか!!」
そんな医院から、チャージズマこと上鳴電気の笑い声が漏れ聞こえていた。
そしてその笑い声に被せるように、ノイズを消した爆豪の鮮明な声がテレビから流れてくる。
『だから……そんな俺が死なねェーように、おまえが一生俺を治せや!』
上鳴の爆笑の原因は現在どこのチャンネルでも終始流れているこのニュースにある。
『大爆殺神ダイナマイト、薬師寺製薬会社の御令嬢に公然プロポーズ!』
当然のことながら、各新聞の一面もすべて爆豪と桜の話で埋め尽くされていた。
「いやぁネットニュースで見た時はガセだと思ってたけど、マジでプロポーズしてんじゃん、ヤベー!! 『おまえが一生俺を治せや』キリッ…ヤベー!!!」
「……アホ面コロス」
「ちょ、爆豪! 仮にも人助けする場所でやめろ!」
続いて、手からバチバチと火花を輝かせる爆豪と、そんな彼を羽交い締めにする切島の声が医院の中に響き渡った。
そんな彼らに、玲子はまるで客人に振る舞うが如く、お茶を出している。
何せ、今ここにいるヒーロー3人は患者ではないのだ。
「それにしても爆豪おまえすげーな」
「何がすげェんだ。てめェも殺されたいンか」
上鳴の胸ぐらを掴んだまま、爆豪は背後の切島に視線を向けた。
「だって普通今日はここ来ないだろ。ただでさえ今朝もパトロール中に報道陣が何度か囲んできてたのに」
「そりゃあ愛しの桜ちゃんに愛夫弁当届けるためでしょー?」
「愛夫弁当!?」
玲子の発言に上鳴が反応した。
そしてそれが事実であるからこそ、さらに爆豪の機嫌が悪化する。
「るせェ! それでなンでテメェらまでついてくンだ!?」
「いや、ここも報道陣いっぱいいるだろうなと思ってさ。おまえ容赦なく報道陣爆破しそうだから」
「うんうん。今朝はすっごく報道陣来てたんだけどね。おかげで私もテレビに映れちゃったんだけど」
そこまで言って、玲子は苦笑する。
「桜ちゃんの顔色が悪すぎて、みんな帰っちゃった」
玲子の答えに、爆豪は大きなため息を吐く。
その意味が分からない切島と上鳴はオロオロと的外れな心配を始めた。
「えっ、大丈夫なんすか? マスコミ苦手とか…?」
「イヤイヤ、爆豪が体調悪くなるまで昨晩彼女を――ってウッソ! ウソだから爆豪!!」
「てめェはいっぺん死ンどけ!!」
ふざける上鳴を爆豪が今度こそ爆破しようとしたその時、医院の奥の扉が開いた。
「ふぁ……爆豪君来たのー? ……って、あれ? 今日はお友達付き?」
まだ少し青白い顔の桜が出てきて、爆豪はさらにため息を重ねる。切島は「お久しぶりです」と丁寧に挨拶し、上鳴は桜の顔を正面から見るや否や、その場に土下座した。
「え」
「爆豪じゃなくて俺とかどうですか!?」
「上鳴!?」
上鳴の奇行に切島は冷や汗をかく。
爆豪に至ってはもう人間の顔をしておらず、上鳴の戯言を聞いた桜はカラカラと楽しげに笑っていた。
「噂に違わずだね、はじめまして、チャージズマ。烈怒頼雄斗も久しぶり」
2人に会釈して、桜は爆豪のもとに歩み寄る。
そうして桜が爆豪に手のひらを差し出すと、爆豪が慣れたように桜の手にその弁当箱を載せた。
「ありがとう、爆豪君。もしお弁当なかったら鉄分不足で死んじゃうとこだったよ」
「大袈裟なンだよ。今まで死んでなかったろォーが。……つーかオイ、クソババア!」
桜にかける優しい声とは一変して、爆豪が遠慮のない怒声を玲子に向けた。
「チャンネル変えろや! いつまでこんなクソ番組流しとンだ!」
終始テレビで流れ続ける昨日のキスシーンに、とうとう耐えられなくなった爆豪がそんな怒鳴り声をあげるけれど。
対する玲子も困り顔だ。
「今どのチャンネルもこのニュースだよ、ダイナマイト。……それにね」
「えー、いいじゃん。このニュース。私お気に入りだよ?」
桜はテレビを見上げながら、のんびりとした声で告げる。
そして玲子からリモコンを受け取り、テレビの音量を上げ始めた。
普通は公然でのキスに恥ずかしがるものだが、桜はむしろこのニュースを食い気味に見ていた。
「消せや」
「嫌だよ。だってこの爆豪君珍しくめちゃくちゃかっこい」
「ぶち殺す」
「褒めたのになんで???」
そんな2人の仲睦まじい会話を見せつけられて、切島は苦笑、上鳴は悲しみの涙を流していた。
「いやぁ、最初に会った時はまさかこんなことになるなんて思ってなかったな」
「野蛮人代表の爆豪が……美人女医を捕まえるとか……世の中不条理すぎだろ」
それぞれの呟きを聞いて、桜はクスリと笑った。
それは有名な話だった。
理由は簡単、そこには絶対にヒーローを診ない医者がいたからだ。
それなのに――。
「ぎゃっははは!!! かっちゃんマジか!!」
そんな医院から、チャージズマこと上鳴電気の笑い声が漏れ聞こえていた。
そしてその笑い声に被せるように、ノイズを消した爆豪の鮮明な声がテレビから流れてくる。
『だから……そんな俺が死なねェーように、おまえが一生俺を治せや!』
上鳴の爆笑の原因は現在どこのチャンネルでも終始流れているこのニュースにある。
『大爆殺神ダイナマイト、薬師寺製薬会社の御令嬢に公然プロポーズ!』
当然のことながら、各新聞の一面もすべて爆豪と桜の話で埋め尽くされていた。
「いやぁネットニュースで見た時はガセだと思ってたけど、マジでプロポーズしてんじゃん、ヤベー!! 『おまえが一生俺を治せや』キリッ…ヤベー!!!」
「……アホ面コロス」
「ちょ、爆豪! 仮にも人助けする場所でやめろ!」
続いて、手からバチバチと火花を輝かせる爆豪と、そんな彼を羽交い締めにする切島の声が医院の中に響き渡った。
そんな彼らに、玲子はまるで客人に振る舞うが如く、お茶を出している。
何せ、今ここにいるヒーロー3人は患者ではないのだ。
「それにしても爆豪おまえすげーな」
「何がすげェんだ。てめェも殺されたいンか」
上鳴の胸ぐらを掴んだまま、爆豪は背後の切島に視線を向けた。
「だって普通今日はここ来ないだろ。ただでさえ今朝もパトロール中に報道陣が何度か囲んできてたのに」
「そりゃあ愛しの桜ちゃんに愛夫弁当届けるためでしょー?」
「愛夫弁当!?」
玲子の発言に上鳴が反応した。
そしてそれが事実であるからこそ、さらに爆豪の機嫌が悪化する。
「るせェ! それでなンでテメェらまでついてくンだ!?」
「いや、ここも報道陣いっぱいいるだろうなと思ってさ。おまえ容赦なく報道陣爆破しそうだから」
「うんうん。今朝はすっごく報道陣来てたんだけどね。おかげで私もテレビに映れちゃったんだけど」
そこまで言って、玲子は苦笑する。
「桜ちゃんの顔色が悪すぎて、みんな帰っちゃった」
玲子の答えに、爆豪は大きなため息を吐く。
その意味が分からない切島と上鳴はオロオロと的外れな心配を始めた。
「えっ、大丈夫なんすか? マスコミ苦手とか…?」
「イヤイヤ、爆豪が体調悪くなるまで昨晩彼女を――ってウッソ! ウソだから爆豪!!」
「てめェはいっぺん死ンどけ!!」
ふざける上鳴を爆豪が今度こそ爆破しようとしたその時、医院の奥の扉が開いた。
「ふぁ……爆豪君来たのー? ……って、あれ? 今日はお友達付き?」
まだ少し青白い顔の桜が出てきて、爆豪はさらにため息を重ねる。切島は「お久しぶりです」と丁寧に挨拶し、上鳴は桜の顔を正面から見るや否や、その場に土下座した。
「え」
「爆豪じゃなくて俺とかどうですか!?」
「上鳴!?」
上鳴の奇行に切島は冷や汗をかく。
爆豪に至ってはもう人間の顔をしておらず、上鳴の戯言を聞いた桜はカラカラと楽しげに笑っていた。
「噂に違わずだね、はじめまして、チャージズマ。烈怒頼雄斗も久しぶり」
2人に会釈して、桜は爆豪のもとに歩み寄る。
そうして桜が爆豪に手のひらを差し出すと、爆豪が慣れたように桜の手にその弁当箱を載せた。
「ありがとう、爆豪君。もしお弁当なかったら鉄分不足で死んじゃうとこだったよ」
「大袈裟なンだよ。今まで死んでなかったろォーが。……つーかオイ、クソババア!」
桜にかける優しい声とは一変して、爆豪が遠慮のない怒声を玲子に向けた。
「チャンネル変えろや! いつまでこんなクソ番組流しとンだ!」
終始テレビで流れ続ける昨日のキスシーンに、とうとう耐えられなくなった爆豪がそんな怒鳴り声をあげるけれど。
対する玲子も困り顔だ。
「今どのチャンネルもこのニュースだよ、ダイナマイト。……それにね」
「えー、いいじゃん。このニュース。私お気に入りだよ?」
桜はテレビを見上げながら、のんびりとした声で告げる。
そして玲子からリモコンを受け取り、テレビの音量を上げ始めた。
普通は公然でのキスに恥ずかしがるものだが、桜はむしろこのニュースを食い気味に見ていた。
「消せや」
「嫌だよ。だってこの爆豪君珍しくめちゃくちゃかっこい」
「ぶち殺す」
「褒めたのになんで???」
そんな2人の仲睦まじい会話を見せつけられて、切島は苦笑、上鳴は悲しみの涙を流していた。
「いやぁ、最初に会った時はまさかこんなことになるなんて思ってなかったな」
「野蛮人代表の爆豪が……美人女医を捕まえるとか……世の中不条理すぎだろ」
それぞれの呟きを聞いて、桜はクスリと笑った。