妄想会話
373の日。【豊玉高校】
2021/07/03 03:07【令和3年7月3日、南キャプテンの日なので、373の数字にまつわるプレゼントを南キャプテンのために用意してください!】
マネージャーから南を除いたグループメッセージが届いたのが、6月26日。
へとへとになって帰宅をし、飯を食おうとしている時だった。
この日、俺達はインターハイ予選決勝リーグを終え、大阪2位ではあったけれど、インターハイへの切符を手に入れていた。
後輩たちは、次々に了解のスタンプが送っている。
…あほらし。
羨ましい気持ちを認めたくなくて、スマホを切り、ガツガツと飯をかきこんだ。
「あんた、もっとゆっくり食べなあかんって、いつも言うてるやろ!」
母親の小言もうっとうしい。
…絶対、あいつのためにプレゼントなんて用意してやらへん。
俺は、固い決意を決めた…はずだった。
7月3日、当日。
この日ももちろん、朝からみっちり練習が入ってるが、マネージャーの号令でなんと練習開始1時間も前から集合させられていた。
クラッカーが配られ、誕生日以上の気合の入れようだ。
俺は、ポケットの中に入れてきた南へのプレゼントにニヤっとした。
これなら、ウケも抜群で、南の困る顔を拝むこともできるだろう。
南以外の部員たちと息をひそめて南が来るのを待つ。
ガチャリ……
来た!
パンパンパン!!!と景気のいいクラッカーの音が響く。
「うおっ!!」
普段冷静な男が、驚いて尻もちをつくのを見てみんなで爆笑していると、みるみるうちにいつもの不機嫌な顔に戻る。
「み…南キャプテン、今日は南キャプテンの日です!おめでとうございます!」
「はぁ?」
マネージャーの言葉に、ますます眉間にしわを寄せて、南は不機嫌さを隠そうともしない。
一瞬にして部室に張り詰めた空気が漂う。
「南、今日は令和3年7月3日。みなみの日や!皆でお祝いしたろうってマネージャーが企画してくれたんやで!もっと喜べや!」
「お…おん。すまんな…」
やっと事情が飲み込めたらしい南は少し表情を緩めた。
「では、部員から373にまつわるプレゼントでーす!」
マネージャーが気を取り直して仕切り始めると、皆は次々にプレゼントを渡し始める。
551を373に書き換えた豚まん、373粒の米粒、373円の一円玉、373mLのポカリ、373㎝の靴ひも、373gのアイシングスプレー…素数の本なんちゅう変なもんを渡しているやつもいる。
…なんでみんな、南のためにちゃんと準備してるん?
どのタイミングで渡そうかと考えているうちに、最後になってしまった。
「最後は…岸本か。すごいもん、くれるんやろな?」
ニヤリと発した南の言葉に、部員からの視線が俺に一気に集まる。
……こいつは、鬼畜や…
俺は、意を決して、
「当たり前やろ!驚くなよ!!」
俺は、そっとポケットに忍ばせた……
…レシートを差し出した。
令和3年7月3日 午前3時7分3秒 373円の合計金額に373円出して払ったレシートだ。
商品は…やるつもりはなかったが、他のやつらがこれだけしっかり準備しているんやから、やらない訳にはいかないと、レジ袋に入れっぱなしの商品も鞄から引っ張り出して、一緒に差し出した。
「………」
南がそのレシートを回覧させ始めたので、部室がシーンと静まり返る。
しまった…スベったか…俺はがっくりうなだれ始めた時、
「岸本副キャプテン!南キャプテンの事、こんなに考えてたなんて…私、感動しました!!」
マネージャーは俺の手を握ってぶんぶんふり、部室が拍手の嵐に包まれた。
南も照れくさそうに笑って、
「ありがとな…」
なんて言ってくる。
その言葉に完全にギャグのつもりやった俺は、何か照れくさくなってしまった。
373の日。
俺にとっても忘れられない思い出になりそうだ。
このレシートを出すために協力してくれた綺麗なお姉さんの話は……俺だけの秘密や。
***
令和3年7月3日 373の日。
マネージャーから南を除いたグループメッセージが届いたのが、6月26日。
へとへとになって帰宅をし、飯を食おうとしている時だった。
この日、俺達はインターハイ予選決勝リーグを終え、大阪2位ではあったけれど、インターハイへの切符を手に入れていた。
後輩たちは、次々に了解のスタンプが送っている。
…あほらし。
羨ましい気持ちを認めたくなくて、スマホを切り、ガツガツと飯をかきこんだ。
「あんた、もっとゆっくり食べなあかんって、いつも言うてるやろ!」
母親の小言もうっとうしい。
…絶対、あいつのためにプレゼントなんて用意してやらへん。
俺は、固い決意を決めた…はずだった。
7月3日、当日。
この日ももちろん、朝からみっちり練習が入ってるが、マネージャーの号令でなんと練習開始1時間も前から集合させられていた。
クラッカーが配られ、誕生日以上の気合の入れようだ。
俺は、ポケットの中に入れてきた南へのプレゼントにニヤっとした。
これなら、ウケも抜群で、南の困る顔を拝むこともできるだろう。
南以外の部員たちと息をひそめて南が来るのを待つ。
ガチャリ……
来た!
パンパンパン!!!と景気のいいクラッカーの音が響く。
「うおっ!!」
普段冷静な男が、驚いて尻もちをつくのを見てみんなで爆笑していると、みるみるうちにいつもの不機嫌な顔に戻る。
「み…南キャプテン、今日は南キャプテンの日です!おめでとうございます!」
「はぁ?」
マネージャーの言葉に、ますます眉間にしわを寄せて、南は不機嫌さを隠そうともしない。
一瞬にして部室に張り詰めた空気が漂う。
「南、今日は令和3年7月3日。みなみの日や!皆でお祝いしたろうってマネージャーが企画してくれたんやで!もっと喜べや!」
「お…おん。すまんな…」
やっと事情が飲み込めたらしい南は少し表情を緩めた。
「では、部員から373にまつわるプレゼントでーす!」
マネージャーが気を取り直して仕切り始めると、皆は次々にプレゼントを渡し始める。
551を373に書き換えた豚まん、373粒の米粒、373円の一円玉、373mLのポカリ、373㎝の靴ひも、373gのアイシングスプレー…素数の本なんちゅう変なもんを渡しているやつもいる。
…なんでみんな、南のためにちゃんと準備してるん?
どのタイミングで渡そうかと考えているうちに、最後になってしまった。
「最後は…岸本か。すごいもん、くれるんやろな?」
ニヤリと発した南の言葉に、部員からの視線が俺に一気に集まる。
……こいつは、鬼畜や…
俺は、意を決して、
「当たり前やろ!驚くなよ!!」
俺は、そっとポケットに忍ばせた……
…レシートを差し出した。
令和3年7月3日 午前3時7分3秒 373円の合計金額に373円出して払ったレシートだ。
商品は…やるつもりはなかったが、他のやつらがこれだけしっかり準備しているんやから、やらない訳にはいかないと、レジ袋に入れっぱなしの商品も鞄から引っ張り出して、一緒に差し出した。
「………」
南がそのレシートを回覧させ始めたので、部室がシーンと静まり返る。
しまった…スベったか…俺はがっくりうなだれ始めた時、
「岸本副キャプテン!南キャプテンの事、こんなに考えてたなんて…私、感動しました!!」
マネージャーは俺の手を握ってぶんぶんふり、部室が拍手の嵐に包まれた。
南も照れくさそうに笑って、
「ありがとな…」
なんて言ってくる。
その言葉に完全にギャグのつもりやった俺は、何か照れくさくなってしまった。
373の日。
俺にとっても忘れられない思い出になりそうだ。
このレシートを出すために協力してくれた綺麗なお姉さんの話は……俺だけの秘密や。
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令和3年7月3日 373の日。