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f**k yourself ~Hisashi Mitsui

2024/03/06 16:51
昔から、「真面目だよね」と耳にタコが出来るほど言われるくらい優等生で通してきた私。

今日の社内の飲み会でも、優等生の仮面をかぶって、上司にお酌をし、料理を取り分ける。

グラスが空にならないように、料理がまんべんなくいきわたる様に。

誰に頼まれたわけでもないのに、気を配っている。

少し落ち着いたころを見計らって、お手洗いに立つ。

手を洗って、ふ~っとため息をつく。

クソだりぃな……

声には出せない悪態をつく。

お酒は嫌いじゃないけど、今日はワイン飲みたい気分。

でも、今日は和食の居酒屋。

乾杯のビールの後は、焼酎の流れだろう。

戻る途中に先回りして店員に焼酎のボトルのセットを頼む。

運ばれてきた焼酎の水割りを作って上司、同僚に配る。

そして、お酒が入って盛り上がってこれば、お決まりの質問。

「彼氏とかいないの?」

うっせいわ!っと一喝出来たらどんなにすっきりするだろう。

そんな度胸なんて微塵もないから、あいまいに微笑む。

『なかなか良い人っていないですよ…』

「じゃあ、こいつは?」

そう言って、指さしたのは、移動してきたばかりの先輩。

確か……三井寿さん。

「はっ?俺っすか?」

『ふふっ…三井さんはイケメンですから、もう彼女いますって』

心の中では舌打ちしてみるけれど、それをおくびにも出さず、我ながら優等生の回答。

いや、これは本心だ。

黙っていても女性が寄ってくるタイプで、私とは住む世界が違う人だ。

「いや、彼女なんていねぇよ。おめぇ、さっきから何かひっかかる……本心隠してねーか?」

『へっ…あ?』

予想外の言葉に思わず変な声が出る。

「ははっ!真面目で優等生な奴かと思ったけど、そんな顔も出来んだな。その顔、可愛いぜ」

三井さんはにかっと笑いかけてきた。

そんな彼にドキッとしたことが悔しくて、小声でつぶやく。

『うっせぇわ…』

「くくっ!その方が素直でいいぜ!」

(そんなこと言われなくても十分健康です)の言葉を飲み込んで顔をそらす。

どうかこの真っ赤な顔、見られていませんように。

私はタイミングよく皿を下げにきた店員さんに、ワインを頼んだ。

***
Inspired by Ado 「うっせぇわ」
2024.3.19.加筆・修正

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