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Squall ~Takenori Akagi

2024/03/06 16:49
『やだ…雨…』

ザーッと夕立が降り始め、びしょ濡れになりながら、喫茶店の軒先で雨宿りすることにした。

軒先に入ると見覚えのある大男…もとい、同じクラスの赤木君だ。

『赤木君も雨宿り?』

「ああ…今日に限って傘を忘れてな…」

『私も一緒。ついてないなぁ…』

私は、ちょっとドキドキしてた。
私、ひそかに赤木君のこと、良いなって思ってたから。

バスケ部のキャプテンで、しかも成績優秀、人一倍努力家なのは1年生の時から見てたら、分かる。

そんな彼と二人きりになるなんて初めてだ。

「制服…びしょ濡れだぞ」

そう言って、赤木君はスポーツタオルとTシャツを貸してくれた。

『いや…悪いよ…』

「風邪ひくと困るからな。少し寄っていかないか?トイレでも借りれば着替えられるだろう」

そう言われるまま、喫茶店で二人きりで雨宿りすることになった。

さすがに赤木君のTシャツは大きすぎたけれど、肌寒くなった私は制服の上から着させてもらった。

赤木君のシャツ、着られるなんて、夢みたいだ。

二人でアイスティーを頼んで、他愛のない話をした。

嬉しさと緊張で少し舞い上がって、ついつい私ばかりが話してしまう。

それでも、嫌な顔一つしないで私の話に付き合ってくれ、時折ふっと笑う笑顔がカッコよくて、赤木君のこと、ますます好きになってしまう。


「おっ…雨が上がった…」

『ほんとだ』

もっと一緒にいたいのに…とがっかりした気持ちを隠して、私は氷が溶けたアイスティーを飲み干した。

喫茶店を出て、駅に向かう足取りは少し重い。

また学校で会えるのは分かっているけれど、二人きりでいられるのはこれで最後かもしれない。

ぎゅっと胸が締め付けられるほど切ない想いを隠して、駅のホームで別れた。

赤木君、大好き。

その気持ちが我慢できないほどに溢れてくる。

借りたタオルとTシャツを握りしめ、私は赤木君の後姿を見送った。


***
Inspired by 福山雅治 「Squall」

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