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Brightness ~Tsuyoshi Minami

2024/03/04 16:35
一人で、鉛みたいなもん背負って、自分苦しめとったんに気付いたのは、3年の最後のインターハイ。

エースキラーと呼ばれていた俺は、もやもやした想いを無視して、勝つためならなんだってやったるんやと粋がっとった。

北野さんに再会して、俺が一番バスケを楽しんどった時の気持ち思い出した。

結果、一回戦敗退という悔しい結果になってしもうたけれど、すがすがしい思いで会場を後にした。


その夜。

寝る前に急に彼女のことを思い出した。

俺の事、好きやと言ってくれて、付き合うことになったあいつのこと。

今まで、たいしてデートらしいデートもしたこともないし、学校で声かけてきても冷たくあしらったこともある。

都合のいい時だけ呼びつけて、気の向くときだけ連絡して…

それでも、俺が好きだと会う時はいつも笑顔でいてくれたんは、あいつだけ。

急に声が聴きたくなって、携帯をとって、電話をかける。

もう寝てしまったのか電話に出ないので、メッセージを送る。

【負けてもうた。明日、会えへんか?】

急に約束するなんて、びっくりするやろか…

身体は疲れているはずなのに目が覚めてしまって、明かりをつけ、テレビのスイッチを入れた。

深夜のくだらないお笑い番組をぼーっと見ていると、携帯が鳴った。

「おう、俺。起こしてもうたか?」

『大丈夫。それより、南くん、急にどうしたん?』

「いつも、ありがとうな。明日デート、しよか?」

『え?何で?』

「何でって…急におまえのこと思い出してん。そしたら、会いとうなって…」

電話の向こうで鼻をすする音が聞こえる。

俺は、テレビを消して、電話に神経を集中させる。

「もしかして、泣いとるん?」

『嬉し…くて…ひっく…みな…みくんが…私を頼ってくれるなんて…』

「明日、行きたいとこあらへん?」

『おいしいもん食べて、いっぱいお喋りしたい…』

「任せとき!」

彼女の存在が俺の心の中で光り輝いてるみたいだ。

俺らの未来はここから始まる。


***
Inspired by 宇多田 ヒカル「光」

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