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Morning Glow ~Shinichi Maki
2024/03/07 15:28夜明け前の海風は刺すような冷たさだ。
どうしても海で朝焼けが見たいと連れ出された。
今日はサーフボードは持っていない。
紳一と何度もきた湘南の海。
車を降りて、真っ暗闇の中のわずかな街灯の明かりを頼りにいつもの場所にたどり着いた。
彼と私が出会った場所。
いつもの流木に腰を下ろせば、暖かい恰好をしていても、寒さに身震いがする。
『元旦でもないのに、こんな寒い時に、日の出が見たいなんてどうしたの?』
「まぁな…」
歯切れの悪い返事…彼にしては珍しい。
お互い、大学生の頃に知り合った。
シーズンには毎週のように波乗りにくる私と月に一度程度しか波乗りできない紳一。
初めて見かけたその日から、波乗りに行くたびに彼の姿を探していた。
先に声をかけてくれたのは、紳一だったと思う。
「毎回、会いますね」
そう声をかけられて、ひどく驚いたことを覚えている。
私だけが、彼のことを目で追っていて、彼は私の存在を知らないと思っていたから。
『たまにしかいらっしゃいませんよね?私は、毎週来ているから…』
「そう、なのか…羨ましいな」
そんな会話をしたと思う。
もう何年も前の話だ。
少しずつ太陽が水平線から顔を出し始める。
真っ赤に燃えるような朝日が顔を出す。
お互い、口に出さなくても分かる。
ここ最近、すれ違ってばかりだったこと。このままの関係じゃいけないってこと。
私は、紳一の横顔を見つめた。
何かを迷っているような顔で、打ち寄せる波を見つめている。
「なぁ…俺達、まだやり直せるよな…」
私は、無理に笑顔を作って、
『ははっ…紳一。わたしだってやり直せるものなら、やり直したい…』
二人が乗り越えなければいけない波は、高くて困難だ。
肩を抱き寄せられ、紳一のぬくもりに包まれる。
「何年かかるか分からんが、信じて、ついてきて欲しい」
『うん…』
私たちの夜明けはいつになるのか。
それでも寄り添って生きていきたい。
***
Inspired by 川村 結花 「朝焼けの歌」
どうしても海で朝焼けが見たいと連れ出された。
今日はサーフボードは持っていない。
紳一と何度もきた湘南の海。
車を降りて、真っ暗闇の中のわずかな街灯の明かりを頼りにいつもの場所にたどり着いた。
彼と私が出会った場所。
いつもの流木に腰を下ろせば、暖かい恰好をしていても、寒さに身震いがする。
『元旦でもないのに、こんな寒い時に、日の出が見たいなんてどうしたの?』
「まぁな…」
歯切れの悪い返事…彼にしては珍しい。
お互い、大学生の頃に知り合った。
シーズンには毎週のように波乗りにくる私と月に一度程度しか波乗りできない紳一。
初めて見かけたその日から、波乗りに行くたびに彼の姿を探していた。
先に声をかけてくれたのは、紳一だったと思う。
「毎回、会いますね」
そう声をかけられて、ひどく驚いたことを覚えている。
私だけが、彼のことを目で追っていて、彼は私の存在を知らないと思っていたから。
『たまにしかいらっしゃいませんよね?私は、毎週来ているから…』
「そう、なのか…羨ましいな」
そんな会話をしたと思う。
もう何年も前の話だ。
少しずつ太陽が水平線から顔を出し始める。
真っ赤に燃えるような朝日が顔を出す。
お互い、口に出さなくても分かる。
ここ最近、すれ違ってばかりだったこと。このままの関係じゃいけないってこと。
私は、紳一の横顔を見つめた。
何かを迷っているような顔で、打ち寄せる波を見つめている。
「なぁ…俺達、まだやり直せるよな…」
私は、無理に笑顔を作って、
『ははっ…紳一。わたしだってやり直せるものなら、やり直したい…』
二人が乗り越えなければいけない波は、高くて困難だ。
肩を抱き寄せられ、紳一のぬくもりに包まれる。
「何年かかるか分からんが、信じて、ついてきて欲しい」
『うん…』
私たちの夜明けはいつになるのか。
それでも寄り添って生きていきたい。
***
Inspired by 川村 結花 「朝焼けの歌」