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Lonely house ~Ryota Miyagi

2024/03/06 16:54
スマホのアプリから流れる流行りの曲。

適当に身体を揺らして、鼻歌を歌いながら、昼食を作る。

小鍋に冷蔵庫にあった余り物の野菜を適当な大きさに切って放り込む。
水と飲みかけの日本酒をちょっと、今日は中華だしを入れる。

火にかけて沸騰したら、肉を入れて、軽く火を通したら、冷凍のうどん。
うどんがほぐれたら、卵を落として、出来上がり。

自炊するのも、だいぶ慣れた。

キッチンでうどんをすする。

もう、ずいぶん彼女に会えてない気がする…
カレンダーを見ると、まだ1週間しかたっていない。

俺は、自宅で2週間隔離される身になった。

一日がこんなに長いなんて初めてだ。


うどんを食べ終え、いつもはシャワーだが、今日は思い立って、風呂を沸かすことにした。
浴槽を磨いて、勢いよく湯を出す。

もくもくと湯気が立ち込める風呂場にもスマホを持ち込んで、音楽を聞いた。

シーンとした空間に俺は耐えられる気がしないんだ。



ふと携帯からメッセージの着信音。

彼女からのお決まりのメッセージ。

【何してるの?欲しいものある?】

俺も短いメッセージを返す。

【音楽聞いてる。飯の材料頼む。作り方も教えて】



必要なものを届けてもらって、扉越しの逢瀬。

『触れたいね…』

「おう。こんなに近くにいるのにな…」

『生きて…また抱きしめてね!』

「あぁ。もちろんだ!」

こぼれそうな涙をこらえて、そう返す。

彼女の声は、震えていた。


寝る前、電話をすれば、ワンコールですぐに出た。

電話の向こうからは、

『もしもし』

の言葉と共に、俺が見ているのと同じ音楽番組の曲が聞こえる。

「俺。同じ番組、見てるんだな…」

『ふふふっ。離れてるのに一緒にいるみたい』

心地よい彼女の笑い声。

俺は、一人じゃない。そう強く感じた。


***
Inspired by 星野源 「うちで踊ろう」

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