Candy【三井寿】

Side.堀田徳男

三っちゃんは、一緒に悪さをしている時から、どこか人を惹きつける男だった。

行動に華があると言ったらいいのか、とにかくカッコいい男だ。

それでいて、仲間想いの熱い男だから、俺たちのリーダーだ。


それでも、時折、どこか辛そうで寂しそうな顔をすることがある。

本人に直接聞いたことはなかったが、何か辛いことがあったのは聞かなくとも分かる。

しかも、まだその柵から抜け出せていないことも。




その謎は、バスケ部襲撃の時に解けた。

三っちゃんは、バスケ部で、ずっとバスケがしたかったんだ。

悪さをしても、タバコはやらないし、どこか身体を気遣うことが多かったのもそのためだったのか。

俺は、どこまでも三っちゃんのこと、応援するぜ!

そのくらい、俺は三井寿という男に惚れている。




謹慎処分が明けて、久しぶりの学校。

俺は、三っちゃんと同じクラスだが、教室で会うのは初めてだ。


教室に入れば、俺の席に三っちゃん…と思わしき人物。

それと隣で親しげに喋っているのは、如月さん。

「三っちゃん、髪型…」

「おう!徳男。短けぇのもいいだろ?色々世話になって…ありがとな!」

そうさわやかに笑う三っちゃんは、眩しい。

本当にバスケ部に復帰できて良かったと心から思った。

『徳男くん、おはよ~。ケガ、大丈夫?』

と、如月さんに声をかけられた。


如月さんは、進級した時から隣の席で、俺に時々、飴やお菓子をくれる優しい女子だ。

「うっす。如月さん、いつもありがとっす」

「おい、如月。いつもって、こいつと仲いいのか?しかも下の名前…」

『うん。3年生になって、隣の席で、よくお菓子あげたりして、仲いいよ?』

三っちゃんの鋭い視線が痛い。
もしかして、三っちゃん、如月さんのこと…

「あぁ、まぁ…隣の席だし。三っちゃんこそ、如月さんと仲良さそうで…」

俺の言葉に、三っちゃんは、顔を赤くした。
如月さんを好きなこと…図星だったのか。

「まっ、あれだ。その…つ…付き合ってるってやつだ」

如月さんを見れば、如月さんも真っ赤な顔で、三っちゃんを見ている。



三っちゃんは、バスケに復帰して、恋の幸せも手に入れて…

本当に良かったと思うと、涙が出てきた。

「三っちゃん…よかったな!」

「おっおい、泣くなよ…気持ちわりーな…」

「俺は嬉しいよ…三っちゃん…」

『徳男君、これ』

如月さんは、タオルを貸してくれた。

優しい彼女が出来て、三っちゃんは本当に幸せもんだと思うと、さらに涙があふれる。


ずびびびっっと借りたタオルで涙と鼻水を拭く。


「如月、徳男に貸したそれ、俺があげたやつじゃねーかよ!」

『いいでしょ。大事なお友達なんだから』

「そうだけどよ…」

泣いている俺の横で、イチャイチャし始める二人を見て、嬉しくてたまらない。



「三っちゃん、恋もバスケも、どこまでも応援するぜ!」

「おう、ありがとな!」

そう言って、にかっと笑う三井寿は、最高にかっこいい男だ。

俺は、どこまでも熱く、三っちゃんを応援し続けるぜ!


***
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