start【福田吉兆SS】
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終わりは始まりの合図。
そんなような言葉があったような気がするけれど、今日はその言葉がぴったりの日だ。
インターハイ予選が終わり、魚住さんと池上さんが、今日をもって引退した。
夏の鬱陶しいくらいにギラギラした太陽にまだ夏の終わりの気配は無く、こんな日に引退しなくてもいいじゃないかと思うが、今日が新しい陵南高校バスケ部の始まりでもある。
軽めに終わった練習を終え、一人体育館を出た俺は日差しに目を細めて、ふぅ…とため息を一つ付いたその時、
『フッキー!』
まるりんの大声が聞こえてきたのでビクッと身体を震わせた。
こんな日にどうしてまるりんが学校に来るんだと驚いたことを悟られないよう努めて冷静にまるりんの方を振り向いた。
『お疲れ様!試合…惜しかったね……』
そう声をかけられて、あの時、湘北に負けて魚住さんたちの引退が決まったんだよな…と悔しい気持ちが込み上げる。
『どうしても今日伝えたくって……先輩たちは、今日引退?』
俺はコクコクと頷いた。
やっぱりまだ消化しきれていない感情が溢れて、涙が出そうになるのを必死にこらえる。
『はい、タオル』
まるりんから受け取ったタオルでごしごしと顔を拭う。
『もう一つさ、伝えたいことあるんだ…』
汗と涙を吸い込んでくれたタオルから顔をあげて、まるりんの方を見た。
『私をフッキーの彼女にして下さい!時期、陵南のキャプテンになるかもしれない男の…』
「あっ…?」
言っている意味が分からなくて、手に持っていたハンカチを落として、ボケっとしてしまう。
彼女って何だ?そして…キャプテン?
キャプテンに関しては、仙道にほぼ決まっているようなもんだが、もしかしたら、俺が指名されることもあるかもしれない。
四番のユニフォームを着た俺、サイコーにかっこいいんじゃね?
そう考えるとつい武者震いしてしまう。
そして、改めて彼女という言葉の意味を考える。
「彼女……?」
『何回も言わせないでよね!』
突然、バシッと背中をたたかれてぐふっと変な声が出てしまう。
『付き合って欲しいって言ってるの!』
更にバシバシと背中をたたかれて、ようやく俺は状況を理解し始める。
「好きってやつなのか?」
『フッキー、それ返事になってない』
ムッとした表情のまるりんに俺はどうしていいのか分からず、ただ顔がカッと熱くなるばかりだ。
こいつとは、中学からの腐れ縁で、気の置けない友だち以上の感情を持っていなかったと言ったら嘘になるが、まるりんが俺の事そう言う目で見ていたなんて事を考えたこともなくて……
「えっと……俺の彼女になってくれ」
ゆっくりと答えた言葉は、体育館に反響するように響いた。
『もちろん!』
まるりんが嬉しそうに笑ったと同時に
「要チェックや!」「バカヤロウ!」
彦一と越野の声が聞こる。
ゆっくりと振り向けば、越野が彦一を取り押さえて気まずそうな顔と仙道の嬉しそうな顔、植草のちょっと冷めた表情が見える。
「……!」
覗かれていたことが恥ずかしくて、まるりんを振り払ってとびかかろうとするけれど、
『フッキー、ケンカはダメ!』
まるりんに手を握って止められて、大人しくその場にとどまる。
「羨ましいなぁ…フッキーかぁ~」
のんきな仙道にガクッと力が抜ける。
「フッキー、まるりんちゃんお幸せに!」
越野にカッコつけて言われるのはちょっとムカつくし、せっかくの恋人ってやつになったのに他の奴らに邪魔されるのは気にくわない。
俺はまるりんの手を握り直して、ずんずんと校門へと向かう。
『フッキー?』
「まるりん、二人っきりになれるとこ、行こーぜ」
『うん!』
俺たち二人の関係も今日からまた新たに始まる。
日に焼けたにしてはやけに赤い顔をしている俺たちを、魚住さんや池上さんに見られていたのをこの時の俺はまだ知らない。
***
2022.4.13. 毎月13日は福田の日でいいよね
そんなような言葉があったような気がするけれど、今日はその言葉がぴったりの日だ。
インターハイ予選が終わり、魚住さんと池上さんが、今日をもって引退した。
夏の鬱陶しいくらいにギラギラした太陽にまだ夏の終わりの気配は無く、こんな日に引退しなくてもいいじゃないかと思うが、今日が新しい陵南高校バスケ部の始まりでもある。
軽めに終わった練習を終え、一人体育館を出た俺は日差しに目を細めて、ふぅ…とため息を一つ付いたその時、
『フッキー!』
まるりんの大声が聞こえてきたのでビクッと身体を震わせた。
こんな日にどうしてまるりんが学校に来るんだと驚いたことを悟られないよう努めて冷静にまるりんの方を振り向いた。
『お疲れ様!試合…惜しかったね……』
そう声をかけられて、あの時、湘北に負けて魚住さんたちの引退が決まったんだよな…と悔しい気持ちが込み上げる。
『どうしても今日伝えたくって……先輩たちは、今日引退?』
俺はコクコクと頷いた。
やっぱりまだ消化しきれていない感情が溢れて、涙が出そうになるのを必死にこらえる。
『はい、タオル』
まるりんから受け取ったタオルでごしごしと顔を拭う。
『もう一つさ、伝えたいことあるんだ…』
汗と涙を吸い込んでくれたタオルから顔をあげて、まるりんの方を見た。
『私をフッキーの彼女にして下さい!時期、陵南のキャプテンになるかもしれない男の…』
「あっ…?」
言っている意味が分からなくて、手に持っていたハンカチを落として、ボケっとしてしまう。
彼女って何だ?そして…キャプテン?
キャプテンに関しては、仙道にほぼ決まっているようなもんだが、もしかしたら、俺が指名されることもあるかもしれない。
四番のユニフォームを着た俺、サイコーにかっこいいんじゃね?
そう考えるとつい武者震いしてしまう。
そして、改めて彼女という言葉の意味を考える。
「彼女……?」
『何回も言わせないでよね!』
突然、バシッと背中をたたかれてぐふっと変な声が出てしまう。
『付き合って欲しいって言ってるの!』
更にバシバシと背中をたたかれて、ようやく俺は状況を理解し始める。
「好きってやつなのか?」
『フッキー、それ返事になってない』
ムッとした表情のまるりんに俺はどうしていいのか分からず、ただ顔がカッと熱くなるばかりだ。
こいつとは、中学からの腐れ縁で、気の置けない友だち以上の感情を持っていなかったと言ったら嘘になるが、まるりんが俺の事そう言う目で見ていたなんて事を考えたこともなくて……
「えっと……俺の彼女になってくれ」
ゆっくりと答えた言葉は、体育館に反響するように響いた。
『もちろん!』
まるりんが嬉しそうに笑ったと同時に
「要チェックや!」「バカヤロウ!」
彦一と越野の声が聞こる。
ゆっくりと振り向けば、越野が彦一を取り押さえて気まずそうな顔と仙道の嬉しそうな顔、植草のちょっと冷めた表情が見える。
「……!」
覗かれていたことが恥ずかしくて、まるりんを振り払ってとびかかろうとするけれど、
『フッキー、ケンカはダメ!』
まるりんに手を握って止められて、大人しくその場にとどまる。
「羨ましいなぁ…フッキーかぁ~」
のんきな仙道にガクッと力が抜ける。
「フッキー、まるりんちゃんお幸せに!」
越野にカッコつけて言われるのはちょっとムカつくし、せっかくの恋人ってやつになったのに他の奴らに邪魔されるのは気にくわない。
俺はまるりんの手を握り直して、ずんずんと校門へと向かう。
『フッキー?』
「まるりん、二人っきりになれるとこ、行こーぜ」
『うん!』
俺たち二人の関係も今日からまた新たに始まる。
日に焼けたにしてはやけに赤い顔をしている俺たちを、魚住さんや池上さんに見られていたのをこの時の俺はまだ知らない。
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2022.4.13. 毎月13日は福田の日でいいよね
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