＊096：奇跡＊清田信長＊
Image song：GReeeeN「キセキ」
結婚式のお話。


明日は、今日より絶対好きになってる。

なんつーか分かんねぇけど、名前といると自然とそう思える。

それを口に出すのは、ちょっと照れ臭いから言えねーんだけど。

高校のころから付き合い始めて、大学、社会人と距離が出来ても別れなかったのは奇跡だと思う。

電話で別れ話をしたこともあったけど、会えばやっぱり別れるなんて出来なくて、泣いて仲直りして乗り越えてきた。

周りには、まだ結婚してないのかって揶揄われる時もあるくらい長い付き合いの俺たちだけど、やっと今日、永遠の愛を誓う。

さっきから手汗が止まらない。

初めての白いタキシードと履き慣れない綺麗に磨かれた真っ白い靴。

普段スーツも着ない俺は、落ち着かないことこの上ない。

長めの髪もスタイリストの人にセットしてもらったから、がーっと頭をかきむしる訳にもいかない。

立ったり座ったり部屋をうろついてみても、一向に時計の針は進まない。

ここにバスケットボールでもあれば暇潰せるのにな…なんてドリブルの真似事をしてしまうくらいだ。

「新婦様のお支度が出来ました」

やっと係の人が俺を呼びに来たので、慌ててズボンでて汗を拭う。

やっべーな……心臓が飛び出そうなくらい緊張している。

名前が待っている隣の部屋の扉が開けられた。

一歩一歩と君に近づいていく。

名前がゆっくりと振り向く。

言葉にならないほどキレイにおめかしした名前に、熱いものが込み上げてくる。

綺麗に笑った名前の笑顔と泣きそうな俺じゃあ格好がつかねぇな……

俺は必死に笑顔を作る。

心の中では「キレイじゃん！また好きになってる」って叫びたいのに言葉がでない。

『何か言ってよね』

とからっと笑う名前に

「キレイすぎて……」

としか返せない。

『ありがと』

名前のとびきりの笑顔に、やっと緊張がほぐれる。

今日はきっとありがとうはいっぱい言えても、愛してるをいっぱい伝えられるかはわからないから、

「愛してる」

先に伝えておく。

俺の言葉にはにかむ君に、本当に俺はめっちゃくちゃ幸せ者だと思う。

愛しい名前へ、最後の一秒まで一緒に笑顔でいてください。

***
2023.9.26.
この曲はめちゃくちゃノブくんっぽいと思って書きました！