◆◇◆シンプル・100のお題◆◇◆
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*090:メッセージ*流川楓*
Image song:藤井風「死ぬのがいいわ」
高校生、付き合ってます。初詣のお話。
曲のタイトルは、死が入っていますが、死にません。甘いお話です。
苗字と2人、初詣に来たけれど、俺の想像の10倍は混んでいて、お参りするのに1時間近く並ぶらしい。
毎年のことだからと慣れた様子の苗字と違い、俺は行列を見ただけでげんなりしてしまった。
そもそも俺は、会話が得意じゃねぇから、苗字に変な気を使わせてるんじゃないかとまだどこか遠慮している。
苗字は、『一緒にいられるだけで嬉しいんだよ?』って言ってくれるけれど、バスケばかりで、女とのデートなんて経験のない俺は、退屈な思いをさせてるんじゃないかといつも不安だ。
そんな気持ちが伝わったのか、列が半分くらい進んだところで、
『別れるって考えたことある?』
唐突に苗字に問いかけられて固まってしまった。
「は…?」
質問の意図も分からず、一文字発するのが精一杯だ。
「あ……ゴメン。楓くんの誕生日のおめでたい日なのにこんなこと言って……」
顔の前で手を合わせて謝る苗字が、手を下ろしたのを見計らってその手をぎゅっと握る。
「別れるっつうのはおめぇがいなくなるってことか?」
『……まぁ、そういうことだね。恋人じゃなくて、付き合う前の関係かそれ以下の知り合いになる感じかな』
「ムリ」
『無理…?』
「別れるくらいなら、死ぬ」
『えぇ!?』
…そんなに驚くことか?
高校生だけど、こいつと一生一緒にいたいと思ったから付き合うことも了解したのだ。
別れるなんて、ちーっとも考えていない。
そんなことを聞かれるなんて、彼氏っつう存在として信頼されていないんじゃないかと思い、ムッとしてしまう。
『……本当にゴメンね。ちょっとだけ、心配になっちゃって』
「何がだ?」
『楓くんは背が高くてカッコいいから、今でも周りの女の子たちに注目されてるでしょ?』
「だから?」
『ちょっと、不安になっちゃったの。いつか他の女の子のこと好きになるかもって…』
俺が握った手をぎゅっと力強く握り返してくれた。
「他の女が良いと思ったことはねぇ」
『ありがと。楓くんが私より大切だと思う存在はバスケだけ?』
「……」
『あ、また重いこと言っちゃった!もうすぐ、順番来るからお賽銭、準備しよ!』
「……っす」
バスケとこいつとを天秤にかけるなんてことをしたことなかった。
バスケの方が大事だと感じたら、いわゆる浮気っつうやつなのか…?
苗字からの、バスケか彼女かどっちか選べというメッセージなのか?
彼女に倣って、財布を取り出して、ビリビリとマジックテープを外して、五円玉を取り出す。
『あ、楓くんのお財布、マジックテープなんだ』
「まあ…」
小学生の頃に親にもらったままのこれを彼女の前でも使うのはさすがにまずかったか…
「昔から使ってるやつだけど、新しいの買ってもいい」
『そうなの!今度部活の休みあったら、一緒に買いに行きたいな』
嬉しそうな彼女の顔を見るだけで俺も嬉しい気持ちになれる。
俺があんまりしゃべらないから訪れるちょっと気まずい瞬間も、いつだって彼女の笑顔が吹き飛ばしてくれる。
程なくして、俺たちのお賽銭の順番が訪れる。
五円玉を賽銭箱に投げ入れて、立て看板に書いてある通りに2礼、2拍手をして、お願い事を心の中でする。
願い事は、彼女と死ぬまで添い遂げられますように――
そして、1礼して次の人に順番を譲った。
『必勝祈願のお守り、買う?』
「いや、そっちは実力で勝つからいい」
『お守り、買わないの?』
「いや、買う」
『ふふふ…!なんか今日は楓くんの意外な一面知れて嬉しいな』
「バスケに浮気しないようにする」
『……!!それはどういうこと?』
「バスケより時間は割けねぇけど、苗字のこと、一番大事っつうこと」
『ヤバ…泣きそうかも……』
まだお守り売り場にもついていないのに、苗字はハンカチで目元を覆った。
にぎやかな境内でさすがに目立つのは憚られて、そっと俺の胸で隠れて泣けるようにと抱き寄せた。
『楓くんのそういうさりげないしぐさ、嬉しい。泣いちゃってゴメン…』
「お守り2つ買ってきてやる」
『ありがとう』
少し落ち着いたのを見計らって、俺は恋愛のお守りを二つ買って、一つを苗字に渡した。
『嬉しい。でも、恋愛成就じゃ、まるで恋がかなってないみたいだね』
「じょうじゅ?」
『恋が叶いますようにってこと』
「間違えた」
『大丈夫!おそろいのお守りすごくうれしい!これからも2人の恋が続きますように…ってことで』
「っす…」
やっぱり、苗字の笑顔には俺を元気にする力がある。
これからも2人の恋がずっと続くようにとメッセージが込められたお守りを俺は、早速リュックの内ポケットのチャックに結んだ。
苗字は、嬉しそうに眺めてずっと握っている。
『楓くんは、私に永遠の愛を与えてくれそうだなって、思えたの!だから、もう変なこと聞いたりしない』
「別れるって俺が言うことあったら、針でも飲む」
『指切りげんまんする?』
苗字が小指を差し出してきたので、その指に俺も小指を絡める。
『ずーっと一緒、約束ね?』
「あったりめーだ」
嬉しそうに笑う彼女の笑顔を見て、改めて、小指をしっかり絡めたのだった。
***
2023.1.1.
Happy birthday to Kaede Rukawa!
Image song is 藤井風「死ぬのがいいわ」
流川くんは、彼女のために死ねると思ってそうだというイメージからこんなお話にしてみました。
Image song:藤井風「死ぬのがいいわ」
高校生、付き合ってます。初詣のお話。
曲のタイトルは、死が入っていますが、死にません。甘いお話です。
苗字と2人、初詣に来たけれど、俺の想像の10倍は混んでいて、お参りするのに1時間近く並ぶらしい。
毎年のことだからと慣れた様子の苗字と違い、俺は行列を見ただけでげんなりしてしまった。
そもそも俺は、会話が得意じゃねぇから、苗字に変な気を使わせてるんじゃないかとまだどこか遠慮している。
苗字は、『一緒にいられるだけで嬉しいんだよ?』って言ってくれるけれど、バスケばかりで、女とのデートなんて経験のない俺は、退屈な思いをさせてるんじゃないかといつも不安だ。
そんな気持ちが伝わったのか、列が半分くらい進んだところで、
『別れるって考えたことある?』
唐突に苗字に問いかけられて固まってしまった。
「は…?」
質問の意図も分からず、一文字発するのが精一杯だ。
「あ……ゴメン。楓くんの誕生日のおめでたい日なのにこんなこと言って……」
顔の前で手を合わせて謝る苗字が、手を下ろしたのを見計らってその手をぎゅっと握る。
「別れるっつうのはおめぇがいなくなるってことか?」
『……まぁ、そういうことだね。恋人じゃなくて、付き合う前の関係かそれ以下の知り合いになる感じかな』
「ムリ」
『無理…?』
「別れるくらいなら、死ぬ」
『えぇ!?』
…そんなに驚くことか?
高校生だけど、こいつと一生一緒にいたいと思ったから付き合うことも了解したのだ。
別れるなんて、ちーっとも考えていない。
そんなことを聞かれるなんて、彼氏っつう存在として信頼されていないんじゃないかと思い、ムッとしてしまう。
『……本当にゴメンね。ちょっとだけ、心配になっちゃって』
「何がだ?」
『楓くんは背が高くてカッコいいから、今でも周りの女の子たちに注目されてるでしょ?』
「だから?」
『ちょっと、不安になっちゃったの。いつか他の女の子のこと好きになるかもって…』
俺が握った手をぎゅっと力強く握り返してくれた。
「他の女が良いと思ったことはねぇ」
『ありがと。楓くんが私より大切だと思う存在はバスケだけ?』
「……」
『あ、また重いこと言っちゃった!もうすぐ、順番来るからお賽銭、準備しよ!』
「……っす」
バスケとこいつとを天秤にかけるなんてことをしたことなかった。
バスケの方が大事だと感じたら、いわゆる浮気っつうやつなのか…?
苗字からの、バスケか彼女かどっちか選べというメッセージなのか?
彼女に倣って、財布を取り出して、ビリビリとマジックテープを外して、五円玉を取り出す。
『あ、楓くんのお財布、マジックテープなんだ』
「まあ…」
小学生の頃に親にもらったままのこれを彼女の前でも使うのはさすがにまずかったか…
「昔から使ってるやつだけど、新しいの買ってもいい」
『そうなの!今度部活の休みあったら、一緒に買いに行きたいな』
嬉しそうな彼女の顔を見るだけで俺も嬉しい気持ちになれる。
俺があんまりしゃべらないから訪れるちょっと気まずい瞬間も、いつだって彼女の笑顔が吹き飛ばしてくれる。
程なくして、俺たちのお賽銭の順番が訪れる。
五円玉を賽銭箱に投げ入れて、立て看板に書いてある通りに2礼、2拍手をして、お願い事を心の中でする。
願い事は、彼女と死ぬまで添い遂げられますように――
そして、1礼して次の人に順番を譲った。
『必勝祈願のお守り、買う?』
「いや、そっちは実力で勝つからいい」
『お守り、買わないの?』
「いや、買う」
『ふふふ…!なんか今日は楓くんの意外な一面知れて嬉しいな』
「バスケに浮気しないようにする」
『……!!それはどういうこと?』
「バスケより時間は割けねぇけど、苗字のこと、一番大事っつうこと」
『ヤバ…泣きそうかも……』
まだお守り売り場にもついていないのに、苗字はハンカチで目元を覆った。
にぎやかな境内でさすがに目立つのは憚られて、そっと俺の胸で隠れて泣けるようにと抱き寄せた。
『楓くんのそういうさりげないしぐさ、嬉しい。泣いちゃってゴメン…』
「お守り2つ買ってきてやる」
『ありがとう』
少し落ち着いたのを見計らって、俺は恋愛のお守りを二つ買って、一つを苗字に渡した。
『嬉しい。でも、恋愛成就じゃ、まるで恋がかなってないみたいだね』
「じょうじゅ?」
『恋が叶いますようにってこと』
「間違えた」
『大丈夫!おそろいのお守りすごくうれしい!これからも2人の恋が続きますように…ってことで』
「っす…」
やっぱり、苗字の笑顔には俺を元気にする力がある。
これからも2人の恋がずっと続くようにとメッセージが込められたお守りを俺は、早速リュックの内ポケットのチャックに結んだ。
苗字は、嬉しそうに眺めてずっと握っている。
『楓くんは、私に永遠の愛を与えてくれそうだなって、思えたの!だから、もう変なこと聞いたりしない』
「別れるって俺が言うことあったら、針でも飲む」
『指切りげんまんする?』
苗字が小指を差し出してきたので、その指に俺も小指を絡める。
『ずーっと一緒、約束ね?』
「あったりめーだ」
嬉しそうに笑う彼女の笑顔を見て、改めて、小指をしっかり絡めたのだった。
***
2023.1.1.
Happy birthday to Kaede Rukawa!
Image song is 藤井風「死ぬのがいいわ」
流川くんは、彼女のために死ねると思ってそうだというイメージからこんなお話にしてみました。