◆◇◆シンプル・100のお題◆◇◆
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*084:今はもう……*三井寿*
安西先生のお宅に結婚した報告に行く三井夫婦のお話。安西先生夫妻の大幅な捏造あり。
『ミツ君、すっごく緊張してるけど、トイレ大丈夫?』
「……多分」
『コンビニ寄ってく?』
「いや、遅れたらまずいから、大丈夫だ」
安西先生のお宅に結婚の挨拶に行くのに、失礼があっちゃいけねぇ。
ふぅーっと大きく息を吐いて、大股で歩けば、後ろからパタパタと名前が着いてくる。
ほどなくして【安西】の表札が掲げられた入り口までたどり着けば、やっぱりトイレに言っておけばよかった…なんて考えがふとよぎる。
隣りを見れば、名前も緊張した面持ちで、バッグをギュっと握りしめるのを見て、覚悟を決めた。
インターホンのピンポーンという音にもドキッと心臓が跳ねるくらいに緊張しているのは情けないけれど、汗ばんだ手をズボンで拭って、手土産を再度持ち直した。
「はい、いらっしゃい。駅から遠いのに、ごめんなさいね」
先生の奥さんが迎えてくれた。
敷居を踏まない、靴はそろえる、手土産を渡すタイミングは玄関先で…
事前に確認してきた通り、失礼の無いようにと考えれば考えるほど、ぎこちない動きになりそうなのを名前がさりげなくサポートしてくれる。
「そんなに緊張しないで。そういえば、三井君が家に来るのは初めてだったかしら?」
「はい。いつも先生には湘北の体育館に会いに行っていたので」
「そう。あなた達の代の湘北が初めてインターハイに行った年の後の頃から、毎月のようにバスケ部の色んな子たちが遊びに来てくれるようになって。私達には子どもがいないから、嬉しく思っているのよ。でも、歳だから誰が来たかすぐに忘れてしまうのよねぇ…」
『いえ、たくさんの生徒さんに愛されていて素敵ですね。ミツ君…いや、三井さん……あ、寿さんからは、いつも安西先生のお話聞くので、素敵な先生なんだなぁと、今日、楽しみにしてきたんです。奥様も本当にお美しくて羨ましいです』
「あら、ありがとう。こちらへどうぞ」
案内されて、ふすまを開けたところに、少ししわの増えた安西先生がいらっしゃった。
「安西先生、失礼いたします」
『お邪魔いたします』
「ほっほっほ。よく来てくれたね。さ、座ってください」
「失礼します」
俺が座って、名前も座る。
「安西先生、俺はこちらの名前さんと結婚しましたので、今日はそのご報告に参りました」
「ありがとう。こうして、三井君が報告に来てくれて嬉しいよ」
少し話をしたところで、先生の奥さんがお茶を入れて持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
『いただきます』
「どうぞ。そうそう、三井君は、ミツ君と呼ばれているのね」
「あ、はい。そうです」
『えぇ、すいません。もう私も三井なんですけど、その呼び方が中々抜けなくって』
「実はね、今はもう……中々名前で呼ぶことも無くなってしまったけれど、私もこの人のこと、昔はミツ君と呼んでいたのよ」
「…マジですか?」
「昔のことだよ」
少し照れているような安西先生のことよりも、安西先生が奥さんから呼ばれているのと同じ呼ばれ方をされていることに甚く感動してしまう。
こいつ以外にミツ君なんて呼ばれたことが無くて、最初は違和感があった呼び名だけれど、こんな偶然があるのだろうか?
恩師と同じ呼ばれ方をしていることを知って、急にミツ君という呼ばれ方に愛着がわいてくる。
名前に感謝してもしきれないくらいだ。
『ミツ君…?』
あえてこの呼び方を使ったのか、たまたま普段通りに呼んでしまったのか分からないけれど、改めてこの呼び方を聞いて、じーんとしてしまう。
「悪ぃ。何か…こう……」
『ふふ、先生も奥様にミツ君って同じ名前で呼ばれてた時があったなんて偶然、感動しちゃうよね』
「本当に、偶然よね。あら、ごめんなさい。私のお客さんじゃないのに長話してしまって。ごゆっくりしていってくださいね」
「ありがとうございます!」
『すいません』
その後、安西先生と今の湘北バスケ部のことや同級生だった赤木や木暮のことなんかを話しているうちにあっという間に時間は過ぎていった。
「長々とすいません。安西先生にご挨拶できて良かったです!」
『ありがとうございました』
「私の方こそ、楽しかったですよ。また、二人で遊びに来てください」
「『はい!』」
来た時よりずいぶんリラックスした気持ちで靴を履く。
玄関には安西先生と奥さんが見送りに来てくれた。
「本当にお邪魔しました」
『ありがとうございました。奥様、是非、安西先生のこと、ミツ君って呼んであげてください』
「バカ…変なこと言うなって」
『すいません…』
「そうね、久しぶりにミツ君って呼ぶようにしてみるわ」
「ほっほっほっ」
こうして、俺たちの安西先生への結婚の報告が終わった。
その帰り道。
『素敵なご夫婦だね』
「そうだな。なんつったって、安西先生だしな!」
『ふふふ、本当に安西先生のこと尊敬してるんだね。先生がミツ君って呼ばれてること、知れてよかった?』
「ったりめーだろ!!ミツ君って俺のこと呼んでくれる名前のこと、ますます好きになったっつうの」
『……急にそういうこと言うの、ズルい』
「そっちこそ…急に照れるなよ……」
腕を絡めて、顔を隠すように照れる名前に俺も顔がカッと熱くなる。
「ずっと、ミツ君って呼んでくれよな…」
『もちろん!』
俺の小さなつぶやきに嬉しそうに答えてくれた名前を俺はギュっと抱き寄せたのだった。
***
2023.2.21.
安西先生も三っちゃんも、奥さんからミツ君って呼ばれてたらなんかイイな…という妄想。
安西先生のお宅に結婚した報告に行く三井夫婦のお話。安西先生夫妻の大幅な捏造あり。
『ミツ君、すっごく緊張してるけど、トイレ大丈夫?』
「……多分」
『コンビニ寄ってく?』
「いや、遅れたらまずいから、大丈夫だ」
安西先生のお宅に結婚の挨拶に行くのに、失礼があっちゃいけねぇ。
ふぅーっと大きく息を吐いて、大股で歩けば、後ろからパタパタと名前が着いてくる。
ほどなくして【安西】の表札が掲げられた入り口までたどり着けば、やっぱりトイレに言っておけばよかった…なんて考えがふとよぎる。
隣りを見れば、名前も緊張した面持ちで、バッグをギュっと握りしめるのを見て、覚悟を決めた。
インターホンのピンポーンという音にもドキッと心臓が跳ねるくらいに緊張しているのは情けないけれど、汗ばんだ手をズボンで拭って、手土産を再度持ち直した。
「はい、いらっしゃい。駅から遠いのに、ごめんなさいね」
先生の奥さんが迎えてくれた。
敷居を踏まない、靴はそろえる、手土産を渡すタイミングは玄関先で…
事前に確認してきた通り、失礼の無いようにと考えれば考えるほど、ぎこちない動きになりそうなのを名前がさりげなくサポートしてくれる。
「そんなに緊張しないで。そういえば、三井君が家に来るのは初めてだったかしら?」
「はい。いつも先生には湘北の体育館に会いに行っていたので」
「そう。あなた達の代の湘北が初めてインターハイに行った年の後の頃から、毎月のようにバスケ部の色んな子たちが遊びに来てくれるようになって。私達には子どもがいないから、嬉しく思っているのよ。でも、歳だから誰が来たかすぐに忘れてしまうのよねぇ…」
『いえ、たくさんの生徒さんに愛されていて素敵ですね。ミツ君…いや、三井さん……あ、寿さんからは、いつも安西先生のお話聞くので、素敵な先生なんだなぁと、今日、楽しみにしてきたんです。奥様も本当にお美しくて羨ましいです』
「あら、ありがとう。こちらへどうぞ」
案内されて、ふすまを開けたところに、少ししわの増えた安西先生がいらっしゃった。
「安西先生、失礼いたします」
『お邪魔いたします』
「ほっほっほ。よく来てくれたね。さ、座ってください」
「失礼します」
俺が座って、名前も座る。
「安西先生、俺はこちらの名前さんと結婚しましたので、今日はそのご報告に参りました」
「ありがとう。こうして、三井君が報告に来てくれて嬉しいよ」
少し話をしたところで、先生の奥さんがお茶を入れて持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
『いただきます』
「どうぞ。そうそう、三井君は、ミツ君と呼ばれているのね」
「あ、はい。そうです」
『えぇ、すいません。もう私も三井なんですけど、その呼び方が中々抜けなくって』
「実はね、今はもう……中々名前で呼ぶことも無くなってしまったけれど、私もこの人のこと、昔はミツ君と呼んでいたのよ」
「…マジですか?」
「昔のことだよ」
少し照れているような安西先生のことよりも、安西先生が奥さんから呼ばれているのと同じ呼ばれ方をされていることに甚く感動してしまう。
こいつ以外にミツ君なんて呼ばれたことが無くて、最初は違和感があった呼び名だけれど、こんな偶然があるのだろうか?
恩師と同じ呼ばれ方をしていることを知って、急にミツ君という呼ばれ方に愛着がわいてくる。
名前に感謝してもしきれないくらいだ。
『ミツ君…?』
あえてこの呼び方を使ったのか、たまたま普段通りに呼んでしまったのか分からないけれど、改めてこの呼び方を聞いて、じーんとしてしまう。
「悪ぃ。何か…こう……」
『ふふ、先生も奥様にミツ君って同じ名前で呼ばれてた時があったなんて偶然、感動しちゃうよね』
「本当に、偶然よね。あら、ごめんなさい。私のお客さんじゃないのに長話してしまって。ごゆっくりしていってくださいね」
「ありがとうございます!」
『すいません』
その後、安西先生と今の湘北バスケ部のことや同級生だった赤木や木暮のことなんかを話しているうちにあっという間に時間は過ぎていった。
「長々とすいません。安西先生にご挨拶できて良かったです!」
『ありがとうございました』
「私の方こそ、楽しかったですよ。また、二人で遊びに来てください」
「『はい!』」
来た時よりずいぶんリラックスした気持ちで靴を履く。
玄関には安西先生と奥さんが見送りに来てくれた。
「本当にお邪魔しました」
『ありがとうございました。奥様、是非、安西先生のこと、ミツ君って呼んであげてください』
「バカ…変なこと言うなって」
『すいません…』
「そうね、久しぶりにミツ君って呼ぶようにしてみるわ」
「ほっほっほっ」
こうして、俺たちの安西先生への結婚の報告が終わった。
その帰り道。
『素敵なご夫婦だね』
「そうだな。なんつったって、安西先生だしな!」
『ふふふ、本当に安西先生のこと尊敬してるんだね。先生がミツ君って呼ばれてること、知れてよかった?』
「ったりめーだろ!!ミツ君って俺のこと呼んでくれる名前のこと、ますます好きになったっつうの」
『……急にそういうこと言うの、ズルい』
「そっちこそ…急に照れるなよ……」
腕を絡めて、顔を隠すように照れる名前に俺も顔がカッと熱くなる。
「ずっと、ミツ君って呼んでくれよな…」
『もちろん!』
俺の小さなつぶやきに嬉しそうに答えてくれた名前を俺はギュっと抱き寄せたのだった。
***
2023.2.21.
安西先生も三っちゃんも、奥さんからミツ君って呼ばれてたらなんかイイな…という妄想。