◆◇◆シンプル・100のお題◆◇◆
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*007:町外れ*河田雅史*
高校一年生。初めてであう二人。
大きな希望を胸に入学した山王高校バスケ部の練習が想像以上にきつくて、逃げ出してはみたものの、弟もいる自宅に帰るのは恥ずかしくって、町外れまで来た。
学校から走って逃げ出せる場所なんてたかが知れているけれど、ここまでこればそう簡単には見つからないだろう。
人通りのない道路沿いにある自動販売機の前でひと休み。
ジュースを買おうにも小銭なんて持ち合わせていない。
しゃがみこんでため息をひとつ。
こんなはずじゃ…山王高校を辞めるしか……
そんな風に考えながら夜空を見上げると、
『あ、いる…!』
ニコニコと人懐っこい笑顔の女の子が俺の前に立っていた。
『噂は本当だったんだ』
嬉しそうに俺の前に屈むと、
『山王のバスケ部一年生でしょ?』
「何で……?」
『驚いた?』
俺がこくんと頷くとますます嬉しそうな顔をして、
『この辺の明るいとこっていったら、この自販機しかないでしょ?夜、ここの自動販売機にいる坊主頭は、厳しい練習から抜け出した山王のバスケ部の一年生なんだって』
「そうなのか…」
『キミの先輩達も、かつては抜け出したって思うと少し楽になる?』
そう言われると気は楽になるが、この女の子はわざわざ俺をからかいにきたのか…?
「冷やかしや慰めはいらねぇ…」
ムッとした気持ちでその言葉を投げた。
『ごめんなさい……そうだ!喉乾いてない?』
「まぁ…」
『お詫びにジュース買ってあげる!』
「あ、あぁ…」
『ポカリ?』
「何でも」
といった時にはもうお金を入れてボタンを押された後だった。
ガコンッとポカリの缶が落ちてくる音が、辺りに響く。
女の子は、ゆっくりと自販機から缶をとりだして、何故か緊張した面持ちで俺の方へと差し出した。
『はい……どーぞ』
「すまん」
さっきまでの勢いはどこへやら、女の子は急に黙り込んでしまったので、俺はプルタブを開けてゴクゴクと一気に飲み干した。
「ごちそーさん!」
ゴミ箱に缶を捨てれば、カランカランっと大きな音が響く。
いつの間にか高校を辞めるなんて気持ちはどっかにいってしまい、そろそろ寮にもどらなければという気持ちになってくる。
そういえば、この子を真っ暗闇に置いていくわけにはいかねぇよな…
「俺、そろそろ学校に戻るけど、家の近くまで送ってく」
『えっ……?』
あまりに驚いた声に俺の方がビックリしてしまう。
「夜道を一人で歩いて帰らせる訳にはいかねぇべ」
『やっぱりジンクスは本当だったのかも…』
「何だ?ジンクスって…」
『えっと……ここで出会った二人は恋人同士になれるってやつ』
「は?」
『うん、きっと運命ってやつよね!』
いきなり手をつかまれて、にっこりと微笑まれれば、もう何が何だかよく分からない。
『じゃ、自己紹介からね!』
全く事情を呑み込めないまま、女の子…苗字さん、いや名前の質問攻めにあって、あっという間に恋人宣言をされて、これ以上遅くなれないからと、キツネにつままれたような顔をして寮になんとか帰り着く。
出迎えてくれた先輩たちには、すべてお見通しといわんばかりの表情で、背中をバシバシ叩かれれば、やっと帰ってきたとほっと力が抜けると共に顔がカっと熱くなる。
そして、俺とおなじように監督も今の奥さんと出会ったのだと聞かされて、さらに驚いたのだった。
俺の恋の行方はどうなることやら…
***
2022.6.1.
高校一年生。初めてであう二人。
大きな希望を胸に入学した山王高校バスケ部の練習が想像以上にきつくて、逃げ出してはみたものの、弟もいる自宅に帰るのは恥ずかしくって、町外れまで来た。
学校から走って逃げ出せる場所なんてたかが知れているけれど、ここまでこればそう簡単には見つからないだろう。
人通りのない道路沿いにある自動販売機の前でひと休み。
ジュースを買おうにも小銭なんて持ち合わせていない。
しゃがみこんでため息をひとつ。
こんなはずじゃ…山王高校を辞めるしか……
そんな風に考えながら夜空を見上げると、
『あ、いる…!』
ニコニコと人懐っこい笑顔の女の子が俺の前に立っていた。
『噂は本当だったんだ』
嬉しそうに俺の前に屈むと、
『山王のバスケ部一年生でしょ?』
「何で……?」
『驚いた?』
俺がこくんと頷くとますます嬉しそうな顔をして、
『この辺の明るいとこっていったら、この自販機しかないでしょ?夜、ここの自動販売機にいる坊主頭は、厳しい練習から抜け出した山王のバスケ部の一年生なんだって』
「そうなのか…」
『キミの先輩達も、かつては抜け出したって思うと少し楽になる?』
そう言われると気は楽になるが、この女の子はわざわざ俺をからかいにきたのか…?
「冷やかしや慰めはいらねぇ…」
ムッとした気持ちでその言葉を投げた。
『ごめんなさい……そうだ!喉乾いてない?』
「まぁ…」
『お詫びにジュース買ってあげる!』
「あ、あぁ…」
『ポカリ?』
「何でも」
といった時にはもうお金を入れてボタンを押された後だった。
ガコンッとポカリの缶が落ちてくる音が、辺りに響く。
女の子は、ゆっくりと自販機から缶をとりだして、何故か緊張した面持ちで俺の方へと差し出した。
『はい……どーぞ』
「すまん」
さっきまでの勢いはどこへやら、女の子は急に黙り込んでしまったので、俺はプルタブを開けてゴクゴクと一気に飲み干した。
「ごちそーさん!」
ゴミ箱に缶を捨てれば、カランカランっと大きな音が響く。
いつの間にか高校を辞めるなんて気持ちはどっかにいってしまい、そろそろ寮にもどらなければという気持ちになってくる。
そういえば、この子を真っ暗闇に置いていくわけにはいかねぇよな…
「俺、そろそろ学校に戻るけど、家の近くまで送ってく」
『えっ……?』
あまりに驚いた声に俺の方がビックリしてしまう。
「夜道を一人で歩いて帰らせる訳にはいかねぇべ」
『やっぱりジンクスは本当だったのかも…』
「何だ?ジンクスって…」
『えっと……ここで出会った二人は恋人同士になれるってやつ』
「は?」
『うん、きっと運命ってやつよね!』
いきなり手をつかまれて、にっこりと微笑まれれば、もう何が何だかよく分からない。
『じゃ、自己紹介からね!』
全く事情を呑み込めないまま、女の子…苗字さん、いや名前の質問攻めにあって、あっという間に恋人宣言をされて、これ以上遅くなれないからと、キツネにつままれたような顔をして寮になんとか帰り着く。
出迎えてくれた先輩たちには、すべてお見通しといわんばかりの表情で、背中をバシバシ叩かれれば、やっと帰ってきたとほっと力が抜けると共に顔がカっと熱くなる。
そして、俺とおなじように監督も今の奥さんと出会ったのだと聞かされて、さらに驚いたのだった。
俺の恋の行方はどうなることやら…
***
2022.6.1.