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*065:秋桜*宮城カオル、宮城アンナ
健全寄り。アンナちゃんが嫁ぐ前日のカオルさんとの1コマ。
Image Song: 山口百恵「秋桜」
「あたしが居なくなったら、やっぱり寂しいよね?」
「そうねぇ。寂しいけど、大丈夫よ?それよりアンナの方が心配よ」
私は明日、結婚してこの家を出ていく。
というのに先延ばしにしていた引っ越し準備は全然終わっておらず、お母さんの手を借りて慌てて段ボールに荷物を詰めている最中だ。
家族との悲しい別れがあった沖縄の家から引っ越してきた時から十数年が経ち、思い出の品物一つ一つが懐かしく、つい手が止まってしまう。
「それにしても、リョーちゃんもさ、アメリカじゃなくて日本にいるんだから、引っ越しの準備手伝ってくれたっていいのにね」
「忙しいんよ。それに、自分の荷物くらい自分で片づけてちょうだい」
「はーい」
ついついてきぱきと片づけてくれるお母さんには甘えてしまう。
そんなお母さんが小さくンンっと咳払いをしたので、そちらを見るとアルバムを手にしていた。
「懐かしい。こんなところにあったんね」
「ね、見てみよ」
段ボールを少し避けてスペースを作り、床にアルバムを広げてのぞき込む。
私が幼い頃の写真には、当然、お父さんもソーちゃんも写っている。
私はお父さんのことも、一番上の兄、ソーちゃんのことも、沖縄の家のことだって朧げな記憶しかなくなってきているけれど、お母さんの中ではきっとまだくっきりと記憶に残っているのだろう。
記憶を手繰り寄せるようにゆっくりとページをめくっていく。
「昔から家はみんなバスケが大好きだったんよ…」と、バスケットボールが写真に登場するたびに小さな声でお母さんは呟いている。
私の写っている写真には常に誰かがそばにいて、何だかんだ愛されてきたんだとじんとくる。
このアルバムは家族みんながそろっていた時のもので、その後、悲しい別れが沢山あったけど、お母さんはいつも私の側にいてくれた。
アルバムの最後のページをめくり終えると、
「健康と怪我にだけは気を付けて、元気に…」
涙声のお母さんに、私も涙が溢れる。
「うん。きっと新しい家族とも色々あってもさ、、いつか笑い話にするよ…」
へへへっと笑おうにもちょっと上手くいかない。
「元気で…いて……」
繰り返すお母さんに、私はうんうんと頷く。
ひとしきり泣いた後、私はお母さんに最後……じゃないかもしれないけど、我儘を言う。
「分かってるって。まだ私、お母さんの子どもなんだから、荷物まだまだあるす手伝ってよね!」
こんな娘だけれど、お母さんも笑ってくれる。
穏やかな日差しが降り注ぐ団地の外では、花壇に植えられた秋桜が揺れているのが目にはいる。
こんな小春日和の穏やかな日は、もう少しあなたの子どもでいさせてください。
ありがとう、お母さん。
***
2023.9.25.
Image song: 山口百恵「秋桜」
歌詞の一節お借りしました。
健全寄り。アンナちゃんが嫁ぐ前日のカオルさんとの1コマ。
Image Song: 山口百恵「秋桜」
「あたしが居なくなったら、やっぱり寂しいよね?」
「そうねぇ。寂しいけど、大丈夫よ?それよりアンナの方が心配よ」
私は明日、結婚してこの家を出ていく。
というのに先延ばしにしていた引っ越し準備は全然終わっておらず、お母さんの手を借りて慌てて段ボールに荷物を詰めている最中だ。
家族との悲しい別れがあった沖縄の家から引っ越してきた時から十数年が経ち、思い出の品物一つ一つが懐かしく、つい手が止まってしまう。
「それにしても、リョーちゃんもさ、アメリカじゃなくて日本にいるんだから、引っ越しの準備手伝ってくれたっていいのにね」
「忙しいんよ。それに、自分の荷物くらい自分で片づけてちょうだい」
「はーい」
ついついてきぱきと片づけてくれるお母さんには甘えてしまう。
そんなお母さんが小さくンンっと咳払いをしたので、そちらを見るとアルバムを手にしていた。
「懐かしい。こんなところにあったんね」
「ね、見てみよ」
段ボールを少し避けてスペースを作り、床にアルバムを広げてのぞき込む。
私が幼い頃の写真には、当然、お父さんもソーちゃんも写っている。
私はお父さんのことも、一番上の兄、ソーちゃんのことも、沖縄の家のことだって朧げな記憶しかなくなってきているけれど、お母さんの中ではきっとまだくっきりと記憶に残っているのだろう。
記憶を手繰り寄せるようにゆっくりとページをめくっていく。
「昔から家はみんなバスケが大好きだったんよ…」と、バスケットボールが写真に登場するたびに小さな声でお母さんは呟いている。
私の写っている写真には常に誰かがそばにいて、何だかんだ愛されてきたんだとじんとくる。
このアルバムは家族みんながそろっていた時のもので、その後、悲しい別れが沢山あったけど、お母さんはいつも私の側にいてくれた。
アルバムの最後のページをめくり終えると、
「健康と怪我にだけは気を付けて、元気に…」
涙声のお母さんに、私も涙が溢れる。
「うん。きっと新しい家族とも色々あってもさ、、いつか笑い話にするよ…」
へへへっと笑おうにもちょっと上手くいかない。
「元気で…いて……」
繰り返すお母さんに、私はうんうんと頷く。
ひとしきり泣いた後、私はお母さんに最後……じゃないかもしれないけど、我儘を言う。
「分かってるって。まだ私、お母さんの子どもなんだから、荷物まだまだあるす手伝ってよね!」
こんな娘だけれど、お母さんも笑ってくれる。
穏やかな日差しが降り注ぐ団地の外では、花壇に植えられた秋桜が揺れているのが目にはいる。
こんな小春日和の穏やかな日は、もう少しあなたの子どもでいさせてください。
ありがとう、お母さん。
***
2023.9.25.
Image song: 山口百恵「秋桜」
歌詞の一節お借りしました。