◆◇◆シンプル・100のお題◆◇◆
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*060:ジェラシー*高校生。付き合ってます。
『かずくん、あーん』
「あー」
パンダ型のバームクーヘンのはじっこを私の彼氏、かずくんこと長谷川一志の口元へ差し出す。
パンダの形に型抜き出来るこのバームクーヘンに一目惚れして、かずくんと私の分を買ってきたのだ。
かずくんの部活前に、教室で二人っきりになれたこの貴重な時間にうってつけのお菓子だ。
『おいしい?』
「うん、うまいよ」
細い目をさらに細めたかずくんに私の口元もほころぶ。
私は切り込みに沿って丁寧にバームクーヘンをパンダの形に抜いていく。
『綺麗に出来た!かずくんにあげたのも開けてよ』
「ああ」
「おっ!何食ってんだ?」
現れたのは、天敵…じゃなくてバスケ部の主将兼監督の藤真健司。
もちろん、かずくんにとっては大切な仲間ではあるけれど…
『げっ…』
思わず漏れた小さな心の声は、バッチリ監督様の耳に届いたようだ。
もちろん、かずくんにも聞こえているだろう。
「んだよ…お、一志の持ってるそれ、俺も食いてぇなー」
「ああ」
かずくんは、ちらっと私の方を見たので私はしぶしぶ頷いた。
こうなってしまったら、かずくんは監督様にダメと言えない。
私がダメだと言ってやってもいいのだけれど、後から部活でかずくんが悪く言われたら嫌だから我慢することにした。
箱から取り出して、ビニールの封を切るだけになっていたバームクーヘンはかずくんの手から奪い取られるようにして監督様の手に収まった。
「ちょうど甘いもん食いたかったんだよな」
そう言いながら、監督様は封を切り、ろくろくパンダの柄を見ることもなく、大口を開けて噛り付いた。
『あ…!』
型抜きが出来ることを伝える暇もなく、たった二口でパンダのバームクーヘンは無くなってしまった。
『これ、型抜きして見た目を楽しんで食べるものだったのに…それに、高かったんだけど!』
「ん?旨かったぜ?」
「藤真…」
『ヒドイ!高かったんだから!いつもかずくん独占してるし…最低!!』
食べ物の恨みに加えて、嫉妬心まで沸き上がる。
私だってもっとかずくんの側にいたいのに、バスケを頑張っている彼は放課後も休日も藤真健司と一緒だ。
試合や練習を見に行けば、その信頼関係は嫌でも分かる。
もちろん、かずくんが一番大切にしているのがバスケだって知っているから全力で応援しているけれど、貴重な二人の時間を邪魔されると、くっそぉ…と恨みたい気になる。
「名前……藤真、二人っきりにしてくれないか?」
「ったく…俺が邪魔者みたいじゃねーか…一志、練習遅れるなよ!」
ぶつくさ言いながら去っていく監督様の背中に向かってべーっと舌を出して見送った。
「名前、ごめん…」
『かずくんは悪くない』
「でも…」
『いいの!せっかく二人っきりに戻ったし、こっちのバームクーヘン半分こしよ?』
型抜き去れたパンダの愛らしさに何とか気持ちを持ち直そうとすると、かずくんは私の頭を遠慮がちに撫でた。
「いつも、長く一緒にいられなくてごめん」
『かずくん…』
恋愛漫画だったら、ここでキスの一つでもするのかもしれないけれど、超がつくほど奥手のかずくんとは、私から手を繋いだりあーんしたりすることはあっても、こうやってかずくんから私に触れること自体初めてで大きく心臓が跳ねる。
ハッとした顔のかずくんにそれは本当に偶然にしてしまった仕草なのだと分かる。
『…もう一回、さわって』
「あ、ああ…」
真っ赤な顔は、お互い様だろう。
パンダの真っ黒なお目目に見つめられているのを感じながら、かずくんの大きな手が私の頭にゆっくり乗せられたのを確認してそっと目を閉じた。
***
2022.12.31.
2022年ラストは一志!ふじまくんに文句言ってみたい願望を詰めただけとも言えますが…
一年間ありがとうございました!
『かずくん、あーん』
「あー」
パンダ型のバームクーヘンのはじっこを私の彼氏、かずくんこと長谷川一志の口元へ差し出す。
パンダの形に型抜き出来るこのバームクーヘンに一目惚れして、かずくんと私の分を買ってきたのだ。
かずくんの部活前に、教室で二人っきりになれたこの貴重な時間にうってつけのお菓子だ。
『おいしい?』
「うん、うまいよ」
細い目をさらに細めたかずくんに私の口元もほころぶ。
私は切り込みに沿って丁寧にバームクーヘンをパンダの形に抜いていく。
『綺麗に出来た!かずくんにあげたのも開けてよ』
「ああ」
「おっ!何食ってんだ?」
現れたのは、天敵…じゃなくてバスケ部の主将兼監督の藤真健司。
もちろん、かずくんにとっては大切な仲間ではあるけれど…
『げっ…』
思わず漏れた小さな心の声は、バッチリ監督様の耳に届いたようだ。
もちろん、かずくんにも聞こえているだろう。
「んだよ…お、一志の持ってるそれ、俺も食いてぇなー」
「ああ」
かずくんは、ちらっと私の方を見たので私はしぶしぶ頷いた。
こうなってしまったら、かずくんは監督様にダメと言えない。
私がダメだと言ってやってもいいのだけれど、後から部活でかずくんが悪く言われたら嫌だから我慢することにした。
箱から取り出して、ビニールの封を切るだけになっていたバームクーヘンはかずくんの手から奪い取られるようにして監督様の手に収まった。
「ちょうど甘いもん食いたかったんだよな」
そう言いながら、監督様は封を切り、ろくろくパンダの柄を見ることもなく、大口を開けて噛り付いた。
『あ…!』
型抜きが出来ることを伝える暇もなく、たった二口でパンダのバームクーヘンは無くなってしまった。
『これ、型抜きして見た目を楽しんで食べるものだったのに…それに、高かったんだけど!』
「ん?旨かったぜ?」
「藤真…」
『ヒドイ!高かったんだから!いつもかずくん独占してるし…最低!!』
食べ物の恨みに加えて、嫉妬心まで沸き上がる。
私だってもっとかずくんの側にいたいのに、バスケを頑張っている彼は放課後も休日も藤真健司と一緒だ。
試合や練習を見に行けば、その信頼関係は嫌でも分かる。
もちろん、かずくんが一番大切にしているのがバスケだって知っているから全力で応援しているけれど、貴重な二人の時間を邪魔されると、くっそぉ…と恨みたい気になる。
「名前……藤真、二人っきりにしてくれないか?」
「ったく…俺が邪魔者みたいじゃねーか…一志、練習遅れるなよ!」
ぶつくさ言いながら去っていく監督様の背中に向かってべーっと舌を出して見送った。
「名前、ごめん…」
『かずくんは悪くない』
「でも…」
『いいの!せっかく二人っきりに戻ったし、こっちのバームクーヘン半分こしよ?』
型抜き去れたパンダの愛らしさに何とか気持ちを持ち直そうとすると、かずくんは私の頭を遠慮がちに撫でた。
「いつも、長く一緒にいられなくてごめん」
『かずくん…』
恋愛漫画だったら、ここでキスの一つでもするのかもしれないけれど、超がつくほど奥手のかずくんとは、私から手を繋いだりあーんしたりすることはあっても、こうやってかずくんから私に触れること自体初めてで大きく心臓が跳ねる。
ハッとした顔のかずくんにそれは本当に偶然にしてしまった仕草なのだと分かる。
『…もう一回、さわって』
「あ、ああ…」
真っ赤な顔は、お互い様だろう。
パンダの真っ黒なお目目に見つめられているのを感じながら、かずくんの大きな手が私の頭にゆっくり乗せられたのを確認してそっと目を閉じた。
***
2022.12.31.
2022年ラストは一志!ふじまくんに文句言ってみたい願望を詰めただけとも言えますが…
一年間ありがとうございました!