◆◇◆シンプル・100のお題◆◇◆
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*053:観覧車*高校生、付き合ってます。ちょっと情けない帝王のお話。
「……揺らすなよ…」
硬い表情の牧くんに私は思わず笑ってしまう。
『牧くん、もしかして高所恐怖症?』
「いや、そんなつもりはなかったが…これはダメかもしれん…」
観覧車にこんなに緊張した面持ちで乗っている男がいるだろうか?
しかも、牧くんは強豪バスケ部の主将で、神奈川の帝王なんて呼ばれるような男だ。
考えれば考えるほど面白すぎるし、微動だにしない牧くんに我慢できなくて噴き出してしまった。
『ふふふっ!ちょっと、面白すぎる…!』
「だから、揺らすなって…」
吹き出した拍子に少し動いただけで、牧くんは慌てたように私を制する。
『ごめん、ごめん。揺らさないよう静かにしてるね』
「すまん」
乗る前は観覧車の頂上に着いたら、キスしたいな…とかロマンチックなことを考えていたけれど、どうやら無理そうだ。
牧くんは頂上に近づくにつれて、なるべく下を見ないよう上の方へ視線を泳がせている。
しっかりしているように見えて、ちょっと抜けたところがあるのはよく知っているけれど、まさか観覧車が苦手とは思わなかった。
こうやって牧くんの弱点を知れるのも、彼女の特権だよな~と嬉しくなる。
観覧車はゆっくりと頂上に着いて、またゆっくりと降り始める。
まだまだ硬い表情の表情の牧くんに声をかける。
『あと半分、大丈夫?』
「あぁ…後は降りるだけだと思ったら、少しは気が楽になった」
『なら、よかった~まさか牧くんが観覧車苦手だなんて思ってもみなかったよ…』
「いや、小さい頃は平気だったんだがな。久しぶりに乗ったが、なんというか…不安定さに、怖くなった」
『絶対安全なのに?』
「物事に絶対はないからな…」
牧くんは腕組みをして深いため息をついた。
バスケをしている時には絶対見られない表情に、よほど怖かったんだろうなって同情するけれど、その対象が観覧車だということがやっぱり面白い。
『あ、もうすぐ降りれるよ』
「ああ…なんだかどっと疲れたな…」
『あはは。お疲れ様』
牧くんは先に降りて、スマートに手を伸ばして私が降りるのを手伝ってくれる。
降り口に頭をぶつけないよう反対の手でガードまでしてくれるところは、本当に高校生ですか?と聞きたくなるほど紳士的だ。
『観覧車のこと、皆に言いたくなっちゃうな』
「黙っておいてもらえたらありがたいが…」
苦笑いの表情に、良いことをひらめく。
『じゃ、口止め料を…』
人通りの少ない場所で、私は歩くのをやめて牧くんに向かって目を閉じて唇を少しだけ付きだす。
「俺が得するだけじゃないか?」
なんて嬉しそうな口調で牧くんの顔が近づいて、すぐに唇が重なった。
その唇がいつもよりかさついているのを感じて、観覧車本当に怖かったんだな…と改めて感じたのだった。
***
2022.9.28.
「……揺らすなよ…」
硬い表情の牧くんに私は思わず笑ってしまう。
『牧くん、もしかして高所恐怖症?』
「いや、そんなつもりはなかったが…これはダメかもしれん…」
観覧車にこんなに緊張した面持ちで乗っている男がいるだろうか?
しかも、牧くんは強豪バスケ部の主将で、神奈川の帝王なんて呼ばれるような男だ。
考えれば考えるほど面白すぎるし、微動だにしない牧くんに我慢できなくて噴き出してしまった。
『ふふふっ!ちょっと、面白すぎる…!』
「だから、揺らすなって…」
吹き出した拍子に少し動いただけで、牧くんは慌てたように私を制する。
『ごめん、ごめん。揺らさないよう静かにしてるね』
「すまん」
乗る前は観覧車の頂上に着いたら、キスしたいな…とかロマンチックなことを考えていたけれど、どうやら無理そうだ。
牧くんは頂上に近づくにつれて、なるべく下を見ないよう上の方へ視線を泳がせている。
しっかりしているように見えて、ちょっと抜けたところがあるのはよく知っているけれど、まさか観覧車が苦手とは思わなかった。
こうやって牧くんの弱点を知れるのも、彼女の特権だよな~と嬉しくなる。
観覧車はゆっくりと頂上に着いて、またゆっくりと降り始める。
まだまだ硬い表情の表情の牧くんに声をかける。
『あと半分、大丈夫?』
「あぁ…後は降りるだけだと思ったら、少しは気が楽になった」
『なら、よかった~まさか牧くんが観覧車苦手だなんて思ってもみなかったよ…』
「いや、小さい頃は平気だったんだがな。久しぶりに乗ったが、なんというか…不安定さに、怖くなった」
『絶対安全なのに?』
「物事に絶対はないからな…」
牧くんは腕組みをして深いため息をついた。
バスケをしている時には絶対見られない表情に、よほど怖かったんだろうなって同情するけれど、その対象が観覧車だということがやっぱり面白い。
『あ、もうすぐ降りれるよ』
「ああ…なんだかどっと疲れたな…」
『あはは。お疲れ様』
牧くんは先に降りて、スマートに手を伸ばして私が降りるのを手伝ってくれる。
降り口に頭をぶつけないよう反対の手でガードまでしてくれるところは、本当に高校生ですか?と聞きたくなるほど紳士的だ。
『観覧車のこと、皆に言いたくなっちゃうな』
「黙っておいてもらえたらありがたいが…」
苦笑いの表情に、良いことをひらめく。
『じゃ、口止め料を…』
人通りの少ない場所で、私は歩くのをやめて牧くんに向かって目を閉じて唇を少しだけ付きだす。
「俺が得するだけじゃないか?」
なんて嬉しそうな口調で牧くんの顔が近づいて、すぐに唇が重なった。
その唇がいつもよりかさついているのを感じて、観覧車本当に怖かったんだな…と改めて感じたのだった。
***
2022.9.28.