＊005:水溜り＊三井寿＊
グレ期ミッチーのお話。切ないだけなので、ご注意ください。幼馴染設定。



『会いに来てよ……』

寂しくて、寂しくて、どうしようもない。

土砂降りの雨は、部屋の窓ガラスを激しくたたく。

こんな夜に、一人で寝られそうもない。

『うそつき……』

そう言ってみたところで、想い人に届くはずはないのに。

あんなに大好きだったバスケットも辞めて、苦々しい表情ばかりを見せるようになって、私の心にもぽっかり穴が開いたみたい。

「怖かったら、俺を呼べよ！約束な！」って言ってくれたあの頃のキラキラした笑顔はどこ行っちゃったんだろ。

何を求めているか分からないけど、ただ、隣りにいてくれるだけで良いのに。

***

バシャンっ…

「ちっ……」

さっきまでの土砂降りで出来た水溜りに足を突っ込んでしまい、ツイてねぇと舌打ちする。

靴ん中までびしょ濡れになって、気持ち悪い。

っつか、こんなとこで水溜りにはまるなんてな……

幼馴染のあいつの家の前だと気付き、またムシャクシャしてくる。

はぁ……つまんねぇ………

夜中にこそこそと家に帰るのは、家にいる煩いババアが寝静まるのを待っているだけじゃなく、この家に住むあいつと顔を合わせたくねぇから。

さっきみたいな雷の鳴る土砂降りが苦手で、俺が家に助けに行くと「遅い…」なんて文句言いながらも嬉しそうな顔をするのを思い出してしまい、俺はまた舌打ちをする。

もう、俺みたいなやつがあいつの隣りにいていい訳ねぇよ。

***
2023.5.11.
Image Song：「隣」クボタカイ
めっちゃ切ないけど、グレ期ミッチーにピッタリな曲を見つけたので書いてみた。