＊030：紫陽花＊藤真健司＊
結婚してます。


毎年、ゴールデンウィークが明け、だんだんと暑くなり、もうすぐ梅雨入りだという季節に進むにつれて、思い出すのが、高校3年生のインターハイ予選の初戦のこと。

今年こそは海南を倒すと意気込んでいたのに、負けてしまったあの試合。

悔し涙を、これでもかというくらいに流した。

今となっては良い思い出だと思っているけれど、この時期になると悔しかった気持ちがよみがえってくる。

「未だに、高3のあの時のこと、思い出しちまうんだよな…」

なんて、名前にぽつりと呟いた。

『あの時って…負けた試合のこと？私にとっては、頼りがいがあってかっこよくて男前でNO.1PGで世界一の旦那様なんだから自信もって！』

ビシッと指さして言われてしまう。

こうやって、いつも名前は、俺のことを大好きでいてくれる。

俺への好きという気持ちを声を大にして伝えてくれるところも惚れた理由の一つだ。

結婚して一年と少し経つのに毎日のようにかっこいいや好きを伝えてくれるから、喧嘩らしい喧嘩はしたことがない。

この間も母の日だからって、俺の母親のためのプレゼントを贈りたいからと連れていかれた花屋でも、「こんなに旦那様のことを好きでいてくれる奥様、素敵ですね」そう言われたのを思い出して、俺は笑みが漏れる。

その時に選んだ紫陽花の花言葉は「和気あいあい、団らん、家族」だそうで、母の日にピッタリですよとおススメしてくれたことまで思い出した。

名前と結婚してよかったと心から思っている。

母親も「名前ちゃんと結婚してくれて本当によかったわ。大人になって健司から、母の日のプレゼントなんてもらったことないのよ」なんて言われるくらいに、俺の親とも仲良くしてくれている。

「ありがとな…」

中々普段伝えることのない思いがふと口から出た。

『えっと……』

いつも、隙あらば大好きだとくっついてくる名前が黙って顔を赤くしている姿を見て、俺まで恥ずかしくなってしまう。

「ちょ、何で黙るんだよ…」

『だって、健司さんからそんな風にお礼言われること、あんまり無いから……』

両手で顔を覆う名前が愛おしくてぎゅっと抱きしめる。

いつか子どもが出来て、母の日に紫陽花を贈るようになったら、あの日のことを笑って子どもに伝える日が来るんだろうな…なんて、名前の温もりを感じながら考えるのだった。

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2023.5.25.
ayakaさま、キャラリクエストありがとうございました！
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