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*28:Deja vu―既視感―*赤木剛憲*
結婚して息子がいます。


ゴールデンウィーク。

家族で少し離れたところにある公園にやってきた。

二人の息子たちは、大はしゃぎで遊具に夢中だ。

妻には、大きな広場にある木陰にレジャーシートをしき、荷物番を兼ねて、のんびりしてもらっている。

日本の平均身長より20cm近く大きな身体をもて余すこともあるが、バスケをやっていた時だけでなく、今も子どもを高い所に簡単に上らせてやれるし、やんちゃな幼児の息子二人をひょいと抱き上げることも出来るから、やはり良かったと思う。

会社員で、営業職をしているから、昔に比べたら体力が落ちたとは思うが、まだまだ俺も…子ども達を見守りながら、人気のない鉄棒で腕立て伏せをしたりしてみる。

一通り遊具で遊んで飽きたのか、

「父ちゃん!鬼ごっこしよ~」

「おう、いいぞ」

「兄ちゃん、オレもやる!」

「よっし、父ちゃんが鬼やって!」

「よーし、数えるぞ!1,2,3,…10!行くぞ!」

最初は兄の方に狙いを定めて…と大きく一歩を踏み出した時、ぐにゃりと身体が傾いた。

「……っ!!!!!」

逆の足で転ばないよう身体を支えて、手をついてしゃがみこんだ。

「お前たち、ちょっと、待ってくれ!父ちゃんのとこに、集合!!」

遠くに逃げていく息子たちに大きな声で待ったをかけて、息子たちを呼び寄せる。

「父ちゃん…?」

「すまん、足をひねったみたいだから、母ちゃん、呼んできてくれるか?」

神妙な顔で兄の方が頷いた。

弟の方は、泣きそうな顔をしているが、

「母ちゃん、呼びに行くよ!」

兄が手を引いて連れて行ってくれた。

もっと入念に準備運動しておくんだったな…と思っても後の祭りだ。

どんどん痛みは増すばかりだ。

『父ちゃん!大丈夫?』

「あぁ…」

『立てる?』

「何とか…」

妻の手を借りて、ゆっくり立ち上がる。

そして、心配そうな息子達に見守られながら、足を引きずってレジャーシートのところまで行く。

タオルを差し出してきた妻に、

「いいから、テーピングだ」

思ったよりも大きな声で威圧的な態度になってしまったと後悔してしまうが、妻はきょとんとしている。

『テーピング…?』

「俺の鞄の中に入っとるだろ」

「父ちゃん、絆創膏じゃないの?」

「いーや、こういう時は足を固定しておくのが一番だ。この感じだと骨折はしてないからな」

「父ちゃん、大丈夫?」

「もちろんだ。鬼ごっこは出来ないが、すまんな」

「よかった!」

息子達に笑顔が戻ったことにほっとする。

『テーピングってこれ?』

「すまんな」

妻が俺の鞄から取り出したテーピングを受け取って、靴と靴下を脱ぐ。

見事に赤く腫れあがっているけれど、折れてはないだろう。

本当はコールドスプレーで冷やしたい所だが、そんなものは持ち合わせていない。

久しぶりだと思いながら、テーピングを巻く。

いつかの試合では、とにかく冷やして、テーピングを巻いて試合に出たんだったな…

ちょっとノスタルジックな気持ちになりつつも、今日はこれ以上無理する訳にはいかない。

なにせ、俺は一家の大黒柱で、明日からも日常を続けていかなければならない。

テーピングを巻き終えて、顔をあげると、まだ心配そうな家族と目が合う。

「もう、大丈夫だ!ゆっくりだが歩けるしな」

妻のほっとした表情、息子たちの嬉しそうな表情に改めて幸せを感じる。

息子たちをちょいちょいと手招きして、ぎゅっと抱き寄せる。

そして、妻と目を見合わせて微笑みあったのだった。


***
2023.5.30.
読者にとってのデジャビュを目指して書いてみました。笑
「いいからテーピングだ!」のセリフ言わせたいだけ。
28/100ページ
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