◆◇◆シンプル・100のお題◆◇◆
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*021:雲一つ無い青空*水戸洋平*
同棲しているお正月の一コマ。タバコ出てきますので苦手な方注意。
「くわぁっ…」
ベッドから降りてあくびをして、時計を見ると、まだ10時。
今日は正月だというのに、微妙な時間に目が覚めてしまった。
もう少しゆっくり寝ていてもいいかもしれないが、そんな気分でもない。
早々に実家には「正月は帰らねぇ」と宣言してしまった俺と違って、同棲中の名前は、『ごめん。お姉ちゃんと甥っ子も来るって言うし、お正月は実家帰るね』と、実家に帰省中だ。
じゃあ、昔からのダチと…なんて顔を思い浮かべてみるけれど、社会人になってそれぞれに家庭が出来たヤツもいれば、昔みたいに何もなくても気軽に集まれるわけでもない。
一人っきりの気ままな正月って奴は、やっぱりちょっと味気ない。
「明けましておめでとう」を、起きてすぐに言う相手くらいは欲しいもんだ。
昨日も一人で過ごす大晦日はやっぱりつまらなくて、年越しの賑やかなテレビ番組を見るとも無しに眺めながら、年越しそばの代わりにカップ麺をすすった。
日付が変わると同時に送られてきた【明けましておめでとう】のメッセージと名前と甥っ子のツーショット写真も何か面白くなくて、【明けましておめでとう】と一言だけ返信して、すぐに寝てしまったのだ。
携帯を見れば、【今年もよろしくね。私がいなくて寂しい?】なんてメッセージが来ているけれど、返信する気になれなくて、ベッドに放り投げて、立ち上がった。
普段はタバコを吸うことに嫌な顔をする彼女がいないことをいいことに、テーブルに出しっぱなしのタバコの箱とライターを持って、上着を羽織ってベランダに出た。
雲一つない澄み切った青空は、まさに正月って感じだ。
パチンコに行く気分でもねぇんだよな……
タバコを一本吸い終えて、ふと名前が甥っ子にあげようと準備していたシャボン玉が玄関に忘れられていたことを思い出す。
たまには、ガキの頃に戻って、シャボン玉でもやるか。
玄関から持ってきた昔懐かしいピンクのボトルに緑のフタのシャボン玉をポンと開けて、昔から変わらない吹き口を液につける。
ふーっと一息吹き出せば、虹色のシャボン玉が連なってフワフワと空に浮かんだ。
案外悪くないもんだけれど、正月早々何やってんだか…と、一人に自嘲気味に笑ってみる。
せっかくだし、次はもっと大きいやつを……
凧揚げには物足りないであろう穏やかな風に乗ってシャボン玉が流れていく様を見ていると、遠くに名前によく似たシルエットの女の人が見える。
いや、本物の名前だ。
向こうも俺に気付いたみたいで、
『洋平!!』
と両手に荷物を抱えたまま駆け足で近づいてきて、二階のベランダにいる俺に向かって大きな声を出す。
『あ、シャボン玉?もう一回やって!』
「おう!」
俺は、丁寧に膨らまして、大きなシャボンを作って、空に放つ。
まるで俺の気持ちを表しているみたいにシャボン玉は一目散に名前の元へと飛んでいく。
名前の顔のところでプワッと割れたシャボン玉に、名前の表情がわずかに曇った。
『タバコ……』
「あっ……悪い…」
シャボン玉に吹き込まれた息は、先ほどまで吸っていたタバコの香りが残っていたらしい。
っつうことは、このジャケットにも匂いがついちまったかな。
名前がずかずかとアパートの階段に向かうのを見て、俺はシャボン玉はそのままベランダの室外機の上に置いて、ジャケットを脱ぎながら玄関へと向かう。
脱げば、少しは匂いがましになるだろう。
すぐにピンポーンとチャイム鳴らされたので、鍵を開けた。
「おかえり」
『ただいま。せっかく早く帰ってきたのに…』
「ごめんな…」
タバコくさいから、抱き寄せたいのを我慢していると、荷物を置いた名前の方から抱き着いてきた。
『明けましておめでとう』
「あぁ…明けまして、おめでとう。臭くねぇ?」
『ちょっと臭いけど、洋平に会えて嬉しいから我慢する』
「ありがと」
名前の頭に手を置いて抱き寄せる。
『今年の目標、禁煙は?』
「え、まぁ…考えとく…」
『あ、はぐらかされた!タバコの匂いも洋平のだから多少は我慢できるけど、苦手なものは苦手だからなぁ…』
身体を離すと、名前は荷物をもって、ぶつぶつ言いながらキッチンへと向う。
実家のおふくろさんが色々と持たせてくれたのだろう品物を冷蔵庫に片づけ始めた。
「タバコ辞めんのは、ガキ出来た時かもなぁ~」
これでも名前と暮らし始める前よりはかなり本数減ったんだけどな…という言葉は飲み込んで、ポロっと考えていたことを口にする。
『そ、それって…!?』
冷蔵庫と向き合っていた名前が、勢いよくこちらを振り向いた。
「ん…?」
『えっと、プロポーズ!?』
そうか、そうとられても仕方ねぇよな…
言ってしまった手前、否定するのも変な話だが、なんて言うのが正解なんだ?
『ふふふ…実は、今日、プロポーズされるの二回目なんだ~』
「は?」
『携帯に写真送った甥っ子が、私にめちゃくちゃ懐いてくれてて、「よーへーじゃなくてオレのおひめさまになって」って帰る時に言われちゃった』
「それは、やべーな…」
『やべーでしょ?』
「今年の目標、決めた!名前の甥っ子よりロマンチックなプロポーズだな」
『私に宣言するの、変じゃない?』
名前はくすぐったそうに笑って、俺に背を向け片付けを再開する。
「いーや、覚悟しとけよ」
『うん、楽しみに…してるね』
少し震えた名前の声は、泣いているのか笑っているのか…
俺に表情を見せてはくれないけれど、どっちでも幸せの感情を噛みしめてくれてるんだと思うことにする。
一年の大きな目標が出来てなんだか空を見たくなって、ベランダに出た。
雲一つない大空を見上げて、冷たい空気を吸い込んで大きく息をついた。
【俺と結婚してください。】
この一言をどんな風に伝えたら……
幸せな悩みに、もう一度深呼吸をした。
***
2022.12.16.
映画を見てから、初の夢小説は水戸くんとなりました!
クリスマス前ですが、年末に向けてあまり創作出来なさそうなので、一気にお正月です。
同棲しているお正月の一コマ。タバコ出てきますので苦手な方注意。
「くわぁっ…」
ベッドから降りてあくびをして、時計を見ると、まだ10時。
今日は正月だというのに、微妙な時間に目が覚めてしまった。
もう少しゆっくり寝ていてもいいかもしれないが、そんな気分でもない。
早々に実家には「正月は帰らねぇ」と宣言してしまった俺と違って、同棲中の名前は、『ごめん。お姉ちゃんと甥っ子も来るって言うし、お正月は実家帰るね』と、実家に帰省中だ。
じゃあ、昔からのダチと…なんて顔を思い浮かべてみるけれど、社会人になってそれぞれに家庭が出来たヤツもいれば、昔みたいに何もなくても気軽に集まれるわけでもない。
一人っきりの気ままな正月って奴は、やっぱりちょっと味気ない。
「明けましておめでとう」を、起きてすぐに言う相手くらいは欲しいもんだ。
昨日も一人で過ごす大晦日はやっぱりつまらなくて、年越しの賑やかなテレビ番組を見るとも無しに眺めながら、年越しそばの代わりにカップ麺をすすった。
日付が変わると同時に送られてきた【明けましておめでとう】のメッセージと名前と甥っ子のツーショット写真も何か面白くなくて、【明けましておめでとう】と一言だけ返信して、すぐに寝てしまったのだ。
携帯を見れば、【今年もよろしくね。私がいなくて寂しい?】なんてメッセージが来ているけれど、返信する気になれなくて、ベッドに放り投げて、立ち上がった。
普段はタバコを吸うことに嫌な顔をする彼女がいないことをいいことに、テーブルに出しっぱなしのタバコの箱とライターを持って、上着を羽織ってベランダに出た。
雲一つない澄み切った青空は、まさに正月って感じだ。
パチンコに行く気分でもねぇんだよな……
タバコを一本吸い終えて、ふと名前が甥っ子にあげようと準備していたシャボン玉が玄関に忘れられていたことを思い出す。
たまには、ガキの頃に戻って、シャボン玉でもやるか。
玄関から持ってきた昔懐かしいピンクのボトルに緑のフタのシャボン玉をポンと開けて、昔から変わらない吹き口を液につける。
ふーっと一息吹き出せば、虹色のシャボン玉が連なってフワフワと空に浮かんだ。
案外悪くないもんだけれど、正月早々何やってんだか…と、一人に自嘲気味に笑ってみる。
せっかくだし、次はもっと大きいやつを……
凧揚げには物足りないであろう穏やかな風に乗ってシャボン玉が流れていく様を見ていると、遠くに名前によく似たシルエットの女の人が見える。
いや、本物の名前だ。
向こうも俺に気付いたみたいで、
『洋平!!』
と両手に荷物を抱えたまま駆け足で近づいてきて、二階のベランダにいる俺に向かって大きな声を出す。
『あ、シャボン玉?もう一回やって!』
「おう!」
俺は、丁寧に膨らまして、大きなシャボンを作って、空に放つ。
まるで俺の気持ちを表しているみたいにシャボン玉は一目散に名前の元へと飛んでいく。
名前の顔のところでプワッと割れたシャボン玉に、名前の表情がわずかに曇った。
『タバコ……』
「あっ……悪い…」
シャボン玉に吹き込まれた息は、先ほどまで吸っていたタバコの香りが残っていたらしい。
っつうことは、このジャケットにも匂いがついちまったかな。
名前がずかずかとアパートの階段に向かうのを見て、俺はシャボン玉はそのままベランダの室外機の上に置いて、ジャケットを脱ぎながら玄関へと向かう。
脱げば、少しは匂いがましになるだろう。
すぐにピンポーンとチャイム鳴らされたので、鍵を開けた。
「おかえり」
『ただいま。せっかく早く帰ってきたのに…』
「ごめんな…」
タバコくさいから、抱き寄せたいのを我慢していると、荷物を置いた名前の方から抱き着いてきた。
『明けましておめでとう』
「あぁ…明けまして、おめでとう。臭くねぇ?」
『ちょっと臭いけど、洋平に会えて嬉しいから我慢する』
「ありがと」
名前の頭に手を置いて抱き寄せる。
『今年の目標、禁煙は?』
「え、まぁ…考えとく…」
『あ、はぐらかされた!タバコの匂いも洋平のだから多少は我慢できるけど、苦手なものは苦手だからなぁ…』
身体を離すと、名前は荷物をもって、ぶつぶつ言いながらキッチンへと向う。
実家のおふくろさんが色々と持たせてくれたのだろう品物を冷蔵庫に片づけ始めた。
「タバコ辞めんのは、ガキ出来た時かもなぁ~」
これでも名前と暮らし始める前よりはかなり本数減ったんだけどな…という言葉は飲み込んで、ポロっと考えていたことを口にする。
『そ、それって…!?』
冷蔵庫と向き合っていた名前が、勢いよくこちらを振り向いた。
「ん…?」
『えっと、プロポーズ!?』
そうか、そうとられても仕方ねぇよな…
言ってしまった手前、否定するのも変な話だが、なんて言うのが正解なんだ?
『ふふふ…実は、今日、プロポーズされるの二回目なんだ~』
「は?」
『携帯に写真送った甥っ子が、私にめちゃくちゃ懐いてくれてて、「よーへーじゃなくてオレのおひめさまになって」って帰る時に言われちゃった』
「それは、やべーな…」
『やべーでしょ?』
「今年の目標、決めた!名前の甥っ子よりロマンチックなプロポーズだな」
『私に宣言するの、変じゃない?』
名前はくすぐったそうに笑って、俺に背を向け片付けを再開する。
「いーや、覚悟しとけよ」
『うん、楽しみに…してるね』
少し震えた名前の声は、泣いているのか笑っているのか…
俺に表情を見せてはくれないけれど、どっちでも幸せの感情を噛みしめてくれてるんだと思うことにする。
一年の大きな目標が出来てなんだか空を見たくなって、ベランダに出た。
雲一つない大空を見上げて、冷たい空気を吸い込んで大きく息をついた。
【俺と結婚してください。】
この一言をどんな風に伝えたら……
幸せな悩みに、もう一度深呼吸をした。
***
2022.12.16.
映画を見てから、初の夢小説は水戸くんとなりました!
クリスマス前ですが、年末に向けてあまり創作出来なさそうなので、一気にお正月です。