もっとも美しい人へ【藤真健司】
『藤真健司、あなたに最もよく似合う、この果実を与えましょう』
一人暮らしの私の部屋に遊びに来ていつもの場所に座った健司に、にひひと笑いながら、私は大きくてつやつやした真っ赤な林檎をうやうやしく差し出した。
「はぁ…?」
健司は、いぶかし気な顔をしながらも、林檎を受け取って、何のためらいもなく豪快にシャリっと噛り付く。
「リンゴうめぇな!で、何でだ?」
『林檎の言葉は、最も美しい人へだからね!』
「なんで俺?」
『鏡で自分のお顔を見てごらん?白雪姫じゃないけど、世界で一番美しいのはだあれ?って聞かれたら、私は藤真健司って答えますけど』
「くっだらねぇ…」
そうつぶやきながら、健司はむしゃむしゃと林檎に噛り付いている。
『ちなみに、林檎の実の花言葉は、後悔と誘惑』
「なんだそれ…」
『更に言うと、林檎の木の花言葉は名誉。ますます藤真健司っぽくない?』
「んー、よく分かんねぇけど……」
すでに半分ほど食べてしまった林檎を見つめながら、健司は何やら考えているようだ。
そして、いい考えが浮かんだとばかりにわずかに口角を上げた。
こういう時の健司は良からぬことを考えていることもあって、ちょっと身構てしまう。
案の定、ひょいっと手が伸びてきて、きゅっと鼻をつままれた。
『ちょっと…』
鼻声でふごふごと抗議しようとするけれど、すぐにその手は外され、健司の顔が近づいてきた。
「誘惑、なんだろ?」
にっと笑うその綺麗な顔に見惚れる間もなく、唇がふさがれた。
――選ばれた恋。
林檎にはそんな花言葉もあることは、さすがにうぬぼれすぎてるかもって言えなかった。
でも…この美しい顔を持つ男と付き合っているという優越感に浸りたい時もある。
唇が離れると、健司が手に持っている林檎を口元に差し出される。
それを私が一口かじると、健司も一口かじって、残りはテーブルの上に無造作に置かれた。
私がそっと目を閉じると、健司から爽やかな林檎の香りのするキスを注がれる。そして、そのまま健司に身体をゆだねた。
***
2022.4.8.
一人暮らしの私の部屋に遊びに来ていつもの場所に座った健司に、にひひと笑いながら、私は大きくてつやつやした真っ赤な林檎をうやうやしく差し出した。
「はぁ…?」
健司は、いぶかし気な顔をしながらも、林檎を受け取って、何のためらいもなく豪快にシャリっと噛り付く。
「リンゴうめぇな!で、何でだ?」
『林檎の言葉は、最も美しい人へだからね!』
「なんで俺?」
『鏡で自分のお顔を見てごらん?白雪姫じゃないけど、世界で一番美しいのはだあれ?って聞かれたら、私は藤真健司って答えますけど』
「くっだらねぇ…」
そうつぶやきながら、健司はむしゃむしゃと林檎に噛り付いている。
『ちなみに、林檎の実の花言葉は、後悔と誘惑』
「なんだそれ…」
『更に言うと、林檎の木の花言葉は名誉。ますます藤真健司っぽくない?』
「んー、よく分かんねぇけど……」
すでに半分ほど食べてしまった林檎を見つめながら、健司は何やら考えているようだ。
そして、いい考えが浮かんだとばかりにわずかに口角を上げた。
こういう時の健司は良からぬことを考えていることもあって、ちょっと身構てしまう。
案の定、ひょいっと手が伸びてきて、きゅっと鼻をつままれた。
『ちょっと…』
鼻声でふごふごと抗議しようとするけれど、すぐにその手は外され、健司の顔が近づいてきた。
「誘惑、なんだろ?」
にっと笑うその綺麗な顔に見惚れる間もなく、唇がふさがれた。
――選ばれた恋。
林檎にはそんな花言葉もあることは、さすがにうぬぼれすぎてるかもって言えなかった。
でも…この美しい顔を持つ男と付き合っているという優越感に浸りたい時もある。
唇が離れると、健司が手に持っている林檎を口元に差し出される。
それを私が一口かじると、健司も一口かじって、残りはテーブルの上に無造作に置かれた。
私がそっと目を閉じると、健司から爽やかな林檎の香りのするキスを注がれる。そして、そのまま健司に身体をゆだねた。
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2022.4.8.
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