Heartful First Year【藤真健司】
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『寂しいよぉ…』
私は全国チェーンのコーヒーショップの店内で、紙カップを握りしめて友達に切実な思いを伝えた。
今日からゴールデンウィーク。
大学生なら連休に喜んでバイトや遊びに勤しむところだけれど、私は彼氏に会えない事を友達に慰めて貰おうと呼び出したのだ。
「寂しいって、昨日会ってるでしょ?」
友達が呆れるのももっともだけれど、彼氏の藤真くんと今日から一週間以上も会えない。
バスケの遠征に行く彼を見送ったのが昨日のこと。
たった半日しか経っていないのに、こんな寂しい気持ちになっているのには訳がある。
『あのさ、昨日、ここのコーヒーを持った藤真くんが夢に出てきてさ…』
そう、昨日の夢が原因なのだ。
夢の中の私は酷く疲れていて、寒空の下、公園のベンチのようなところに座っていた。
そこに現れたのが、温かいコーヒーの入った紙カップを持った藤真くんで、
「お疲れ…咲…」
って、渡してくれたんだ。
名前を呼ばれたのも初めてで、ドキドキしながら受け取った。
しかも夢の中の藤真くんの洋服は、ちょうど寝る前にテレビで見ていた好きな俳優と同じ衣装でめちゃくちゃ似合ってたのだ。
カップに口をつけたところで目が覚めてしまって、結局私が藤真くんを健司くんって呼ぶことはもちろんありがとうを言うことさえ叶わなかった。
もう一回寝ようにも寝れなくて、声を聞きたくなっても合宿中の藤真くんに連絡を取るのは憚られたので、変わりに友達を呼び出したという訳だ。
「夢で会えたから余計に寂しくなったって訳ね…」
『そう…これから一週間も会えないのは無理…』
「無理って…また夢で会えることを祈るしかないんじゃない?」
『うぅ……』
私は唇を噛み締める。
「バイトとかしたら?」
『うーん…考えてはいるけど…』
「じゃ、この寂しさを乗り越えて、次会えた時に下の名前で呼べるよう練習しておいたら?」
『名前…』
「健司って呼んだら喜ぶんじゃない?」
『け…健司…!?さすがに呼び捨ては無理だよぉ…』
私は深呼吸して、コーヒーの紙カップのロゴに話しかけてみる。
『健司くん…』
その一言だけで顔から火が出そうなくらい熱くなった。
私はコーヒーをごくりと飲んで、ふぅ…と大きく息をついた。
「おっ!言えるじゃん!でもさ、このロゴ、バスケ部の長谷川くんに似てるよね…」
『そう、私もそれ思ってた!』
「このカップじゃなくて、健司の写真で練習しなくちゃ!」
『は、はい…!』
そんな会話から、高校の同級生の思い出話に花が咲く。
友達のお陰で寂しさが少し紛れて、新たに健司くんと呼ぶ特訓をすることを自分にかした。
次会うときに『おかえり、健司くん』って自然に言えるようになりますように…
そしたら、「ただいま、…咲」って言ってくれるかな?
そんなことを妄想するだけで恥ずかしくなってしまうけれど、そんな風にドキドキ出来る相手がいることに幸せに感じるのだった。
***
2022.1.30.
Inspired by illustrarion of 不整脈-sama
私は全国チェーンのコーヒーショップの店内で、紙カップを握りしめて友達に切実な思いを伝えた。
今日からゴールデンウィーク。
大学生なら連休に喜んでバイトや遊びに勤しむところだけれど、私は彼氏に会えない事を友達に慰めて貰おうと呼び出したのだ。
「寂しいって、昨日会ってるでしょ?」
友達が呆れるのももっともだけれど、彼氏の藤真くんと今日から一週間以上も会えない。
バスケの遠征に行く彼を見送ったのが昨日のこと。
たった半日しか経っていないのに、こんな寂しい気持ちになっているのには訳がある。
『あのさ、昨日、ここのコーヒーを持った藤真くんが夢に出てきてさ…』
そう、昨日の夢が原因なのだ。
夢の中の私は酷く疲れていて、寒空の下、公園のベンチのようなところに座っていた。
そこに現れたのが、温かいコーヒーの入った紙カップを持った藤真くんで、
「お疲れ…咲…」
って、渡してくれたんだ。
名前を呼ばれたのも初めてで、ドキドキしながら受け取った。
しかも夢の中の藤真くんの洋服は、ちょうど寝る前にテレビで見ていた好きな俳優と同じ衣装でめちゃくちゃ似合ってたのだ。
カップに口をつけたところで目が覚めてしまって、結局私が藤真くんを健司くんって呼ぶことはもちろんありがとうを言うことさえ叶わなかった。
もう一回寝ようにも寝れなくて、声を聞きたくなっても合宿中の藤真くんに連絡を取るのは憚られたので、変わりに友達を呼び出したという訳だ。
「夢で会えたから余計に寂しくなったって訳ね…」
『そう…これから一週間も会えないのは無理…』
「無理って…また夢で会えることを祈るしかないんじゃない?」
『うぅ……』
私は唇を噛み締める。
「バイトとかしたら?」
『うーん…考えてはいるけど…』
「じゃ、この寂しさを乗り越えて、次会えた時に下の名前で呼べるよう練習しておいたら?」
『名前…』
「健司って呼んだら喜ぶんじゃない?」
『け…健司…!?さすがに呼び捨ては無理だよぉ…』
私は深呼吸して、コーヒーの紙カップのロゴに話しかけてみる。
『健司くん…』
その一言だけで顔から火が出そうなくらい熱くなった。
私はコーヒーをごくりと飲んで、ふぅ…と大きく息をついた。
「おっ!言えるじゃん!でもさ、このロゴ、バスケ部の長谷川くんに似てるよね…」
『そう、私もそれ思ってた!』
「このカップじゃなくて、健司の写真で練習しなくちゃ!」
『は、はい…!』
そんな会話から、高校の同級生の思い出話に花が咲く。
友達のお陰で寂しさが少し紛れて、新たに健司くんと呼ぶ特訓をすることを自分にかした。
次会うときに『おかえり、健司くん』って自然に言えるようになりますように…
そしたら、「ただいま、…咲」って言ってくれるかな?
そんなことを妄想するだけで恥ずかしくなってしまうけれど、そんな風にドキドキ出来る相手がいることに幸せに感じるのだった。
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2022.1.30.
Inspired by illustrarion of 不整脈-sama