愛の言葉を紡ぎたくて…【神宗一郎】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「君を守る」
そんな言葉を君にかけていいだろうか?
「愛してる」
この気持ちを伝えられたらどんなにいいだろうか?
歳を重ねるにつれてどんどん臆病になる自分が嫌になる。
中学校の教師になって、10年がたった。
教師という仕事は想像以上に日々の授業や雑務に追われて忙しく、楽しむという気持ちを忘れかけていた。
あれほど熱望して顧問になったバスケ部も県内ではそこそこの成績を残すものの全中に出場するには一歩実力が及ばない。
夢や希望を持って教職に就いたことを忘れかけていた。
そんな俺に夢や希望、そして、恋する気持ち…それを思い出させてくれたのは、まどか先生だ。
まどか先生は、今年の新卒で採用されて俺のクラスの副担任として着任した。
愛くるしい笑顔と凛と通る声、何より教師という仕事への情熱がある先生で、初心に帰れるような気持ちになった。
学級運営や授業に精一杯打ち込む姿に、教師の後輩以上の気持ちを持つようになったのも必然で…
そんな気持ちを悟られないようにそっけない態度を取るようになってしまっていた。
『神先生、最近、なんかありました?』
「なんで?」
『いや、何だか最近元気がないというか…』
困ったようにまどか先生はもごもごと続けた。
『神先生のおかげで仕事にも慣れてきたんですが、何か失礼な事なこと言ってしまったんじゃないかと…』
「そんなことないよ。ただ、俺の問題だから」
『じゃ、今夜、ご飯どうですか?私なんかじゃ力不足かもしれませんが、相談に乗りますよ!私も、色々と相談に乗って欲しいですし…』
「じゃあ、部活が終わってから行こうか…」
俺は、内心ドキドキしながらまどか先生に伝えた。
『はい!』
綺麗に微笑んだまどか先生に一瞬見惚れてしまうが、もうすぐ授業が始まることを思い出して、準備に取り掛かった。
好きな人との予定が入っているというだけで、少し気分が上がる。
最近、あまり熱の入らなかったバスケ部の指導も、久しぶりに3Pシュートを打てば、
ーSwish!
と気持ちのいい音を立てて決まる。
部員たちが、「すっげー」なんて言ってくれるのも嬉しい。
まだ、いや、もっと頑張れるかもしれないな…
久しぶりに熱の入った部活指導を終えて、職員室へと戻れば、まどか先生と一瞬目が合う。
お互い軽く頷きあって、業務日報などの雑務を急いでかたずける。
まだ同僚達が残っているので、大っぴらには話せず、メモで駅での待ち合わせを書いた紙を渡す。
「お疲れ様でした」
弾む気持ちを悟られないよう、いつも通りの口調で声をかけて、荷物を持つ。
『お疲れ様です』
メモを指でなぞりながら、まどか先生は返してくれる。
俺は浮き足立つ気持ちを抑えて、ゆっくりと学校を出た。
駅で待ち合わせた俺たちは、金曜日の賑わう繁華街で落ち着いて話せる店を見つけて腰を据えた。
こじゃれた居酒屋は、半個室でカップルが多いようだ。
…俺たちもそんな風に見えているだろうか?
そんな邪な気持ちを抱えながら、俺はビール、まどか先生は甘いカクテルを頼んだ。
『ビール、苦手なんですよ…』
えへへと笑うまどか先生の表情は、学校と違ってまだあどけなさがのこっている。
届けられたグラスをかちりと合わせて乾杯して、グイっとビールを煽れば、疲れた体にアルコールが染みる。
『んーおいしい』
にこりと笑みを見せられれば、付き合っているんじゃないかと勘違いしてしまいそうになる。
つまみを適当に見繕って頼み、クラスのことや授業で困っていることなんかをまどか先生が饒舌に話すのを聞いた。
お互いに少し酔いが回ってきたところで、ふと会話が止まる。
おもむろにまどか先生は俺の手を取った。
『神先生の指先、冷たいですよね…色々抱えこんで、無理しないでくださいね…』
その言葉にどう返していいのか分からずにじっとまどか先生を見つめ返すしかできない。
じんわりとまどか先生の温かさが伝わってくるにつれて、俺の頬を熱いものが伝う。
『神先生…?』
「ごめん」
謝ったはいいけれど、つないだ手から伝わってくる温もりに涙が止まらない。
随分長いこと泣いていなかったな…
涙をぬぐうことが出来ないまま、
「ありがとう…伝えたいことがあるんだ」
『何ですか?』
少し困ったような顔のまどか先生の手をしっかりと握って、俺は伝えた。
「愛してる」
涙の跡が残るちょっと情けない顔かもしれないが、ずっと伝えたかった言葉を伝える。
目をぱちくりしたまどか先生は、すぐに俺の大好きな笑顔になった。
『神先生…私も好きです。最高の誕生日になりました』
「誕生日おめでとう。これからは、俺が君を守る」
俺はまどか先生の手をぎゅっと握りなおした。
***
2021.11.13
Thank you for madoka.a.-sama request!
こぼれ話→愛の言葉を紡ぎたくて…【神宗一郎】
そんな言葉を君にかけていいだろうか?
「愛してる」
この気持ちを伝えられたらどんなにいいだろうか?
歳を重ねるにつれてどんどん臆病になる自分が嫌になる。
中学校の教師になって、10年がたった。
教師という仕事は想像以上に日々の授業や雑務に追われて忙しく、楽しむという気持ちを忘れかけていた。
あれほど熱望して顧問になったバスケ部も県内ではそこそこの成績を残すものの全中に出場するには一歩実力が及ばない。
夢や希望を持って教職に就いたことを忘れかけていた。
そんな俺に夢や希望、そして、恋する気持ち…それを思い出させてくれたのは、まどか先生だ。
まどか先生は、今年の新卒で採用されて俺のクラスの副担任として着任した。
愛くるしい笑顔と凛と通る声、何より教師という仕事への情熱がある先生で、初心に帰れるような気持ちになった。
学級運営や授業に精一杯打ち込む姿に、教師の後輩以上の気持ちを持つようになったのも必然で…
そんな気持ちを悟られないようにそっけない態度を取るようになってしまっていた。
『神先生、最近、なんかありました?』
「なんで?」
『いや、何だか最近元気がないというか…』
困ったようにまどか先生はもごもごと続けた。
『神先生のおかげで仕事にも慣れてきたんですが、何か失礼な事なこと言ってしまったんじゃないかと…』
「そんなことないよ。ただ、俺の問題だから」
『じゃ、今夜、ご飯どうですか?私なんかじゃ力不足かもしれませんが、相談に乗りますよ!私も、色々と相談に乗って欲しいですし…』
「じゃあ、部活が終わってから行こうか…」
俺は、内心ドキドキしながらまどか先生に伝えた。
『はい!』
綺麗に微笑んだまどか先生に一瞬見惚れてしまうが、もうすぐ授業が始まることを思い出して、準備に取り掛かった。
好きな人との予定が入っているというだけで、少し気分が上がる。
最近、あまり熱の入らなかったバスケ部の指導も、久しぶりに3Pシュートを打てば、
ーSwish!
と気持ちのいい音を立てて決まる。
部員たちが、「すっげー」なんて言ってくれるのも嬉しい。
まだ、いや、もっと頑張れるかもしれないな…
久しぶりに熱の入った部活指導を終えて、職員室へと戻れば、まどか先生と一瞬目が合う。
お互い軽く頷きあって、業務日報などの雑務を急いでかたずける。
まだ同僚達が残っているので、大っぴらには話せず、メモで駅での待ち合わせを書いた紙を渡す。
「お疲れ様でした」
弾む気持ちを悟られないよう、いつも通りの口調で声をかけて、荷物を持つ。
『お疲れ様です』
メモを指でなぞりながら、まどか先生は返してくれる。
俺は浮き足立つ気持ちを抑えて、ゆっくりと学校を出た。
駅で待ち合わせた俺たちは、金曜日の賑わう繁華街で落ち着いて話せる店を見つけて腰を据えた。
こじゃれた居酒屋は、半個室でカップルが多いようだ。
…俺たちもそんな風に見えているだろうか?
そんな邪な気持ちを抱えながら、俺はビール、まどか先生は甘いカクテルを頼んだ。
『ビール、苦手なんですよ…』
えへへと笑うまどか先生の表情は、学校と違ってまだあどけなさがのこっている。
届けられたグラスをかちりと合わせて乾杯して、グイっとビールを煽れば、疲れた体にアルコールが染みる。
『んーおいしい』
にこりと笑みを見せられれば、付き合っているんじゃないかと勘違いしてしまいそうになる。
つまみを適当に見繕って頼み、クラスのことや授業で困っていることなんかをまどか先生が饒舌に話すのを聞いた。
お互いに少し酔いが回ってきたところで、ふと会話が止まる。
おもむろにまどか先生は俺の手を取った。
『神先生の指先、冷たいですよね…色々抱えこんで、無理しないでくださいね…』
その言葉にどう返していいのか分からずにじっとまどか先生を見つめ返すしかできない。
じんわりとまどか先生の温かさが伝わってくるにつれて、俺の頬を熱いものが伝う。
『神先生…?』
「ごめん」
謝ったはいいけれど、つないだ手から伝わってくる温もりに涙が止まらない。
随分長いこと泣いていなかったな…
涙をぬぐうことが出来ないまま、
「ありがとう…伝えたいことがあるんだ」
『何ですか?』
少し困ったような顔のまどか先生の手をしっかりと握って、俺は伝えた。
「愛してる」
涙の跡が残るちょっと情けない顔かもしれないが、ずっと伝えたかった言葉を伝える。
目をぱちくりしたまどか先生は、すぐに俺の大好きな笑顔になった。
『神先生…私も好きです。最高の誕生日になりました』
「誕生日おめでとう。これからは、俺が君を守る」
俺はまどか先生の手をぎゅっと握りなおした。
***
2021.11.13
Thank you for madoka.a.-sama request!
こぼれ話→愛の言葉を紡ぎたくて…【神宗一郎】
1/1ページ