SWOLE【森重寛SS】
「森重、探してきてくれ!」
『また…ですか…』
毎回、先生からの頼みを断れない私もダメだけれど、私以外の適任がいないのだから仕方がない。
だいたい居場所は、体育館かバスケ部の部室なのだから、先生が行けばよいと思うけど、あの図体のデカい相手にさすがの体育教師も怯んでしまうらしい。
森重を扱えるのは、バスケ部の監督と…なぜか私だけと認識されている。
高校に入学して最初の自己紹介で、
『筋肉が好きです!』
なんて、バカげた自己紹介をして、
「おっ、森重、良かったな!」
なんて先生が茶化すから、私も調子に乗って、
『森重君の腕の筋肉とかめっちゃ良いと思います!』
って、クラス中の爆笑をかっさらったことに私は気をよくしていた。
しかし、当の本人は居眠りで全く聞いていなかったみたいで、悔しい思いをした。
その後の休み時間にみんなに注目されながら、机に収まりきらず、窓際の壁にもたれかかって居眠りしている森重の筋肉をつんつんしてみると、
「んあ?」
なんて、寝ぼけ眼で睨まれた。
『すごい筋肉!柔道部かなんか?』
勢いで話しかけてみれば、
「バスケ」
ぼそっと返してくれた。
『バスケ部なんだ!ダンクとか出来るの?』
「うい…」
無愛想だけど、返事をしてくれるから、意外といい奴なのかもしれないと私は森重にかまうようになった。
森重との出会いがこんなだから、睡眠、食事、バスケにしか興味がないと思われる森重のお世話係みたくなってしまい、先生も森重に用事があると私に声をかけてくる。
バスケ部の監督にも、私がマネージャーになってくれれば全国優勝出来ると何度も誘われているけれど、球技にはあんまり興味がない私は断っている。
今朝もきっとバスケ部の朝練を終えて、そのまま寝ちゃったんだろうと体育館を覗くと案の定、体育館のど真ん中で、眠りこけていた。
しかも、試合でも何でもないのにユニフォーム着ているし…どこか抜けてて、無頓着なところが憎めないんだよなぁ…と寝ていることをいいことに、ユニフォームから覗く筋肉を眺めた。
『かっこいいなぁ』
私は思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
小さな声のつもりだったけれど、私と森重以外にだれもいない体育館に意外と大きく響いて、恥ずかしくなってしまい、森重の腕をバシッと叩いた。
『起きて!授業、始まる』
「ん…」
森重はゆっくりと目を開いて私を見た。
「まだいいだろ…」
『もうチャイム鳴るって!』
目を閉じようとする森重の腕を引っ張って起こそうとしても、頑丈な身体はびくともしない。
『本当に良い筋肉してるんだから…』
私は文句のつもりで言ったのに、
「好きだろ?」
森重はそう言いながら、片腕で身体を支えて上半身を起こし、身体を私の方に向けた。
いつになく柔らかい表情で見つめられ、さっきの好きという言葉が頭の中で何度もリフレインして、顔がかっと熱くなる。
まさか自分がこんな風に森重にドキドキするなんて思ってもなかったし、そんな気持ちが芽生えたこと自体に混乱して何も言えなくなってしまう。
遠くで授業の開始を告げるチャイムが鳴る。
「サボる…あんたは?」
森重のニヤリとした表情に私は頷くしかなった。
***
2021.10.27.
Inspired by illustration from reicarter-sama!
Thank you very much!
『また…ですか…』
毎回、先生からの頼みを断れない私もダメだけれど、私以外の適任がいないのだから仕方がない。
だいたい居場所は、体育館かバスケ部の部室なのだから、先生が行けばよいと思うけど、あの図体のデカい相手にさすがの体育教師も怯んでしまうらしい。
森重を扱えるのは、バスケ部の監督と…なぜか私だけと認識されている。
高校に入学して最初の自己紹介で、
『筋肉が好きです!』
なんて、バカげた自己紹介をして、
「おっ、森重、良かったな!」
なんて先生が茶化すから、私も調子に乗って、
『森重君の腕の筋肉とかめっちゃ良いと思います!』
って、クラス中の爆笑をかっさらったことに私は気をよくしていた。
しかし、当の本人は居眠りで全く聞いていなかったみたいで、悔しい思いをした。
その後の休み時間にみんなに注目されながら、机に収まりきらず、窓際の壁にもたれかかって居眠りしている森重の筋肉をつんつんしてみると、
「んあ?」
なんて、寝ぼけ眼で睨まれた。
『すごい筋肉!柔道部かなんか?』
勢いで話しかけてみれば、
「バスケ」
ぼそっと返してくれた。
『バスケ部なんだ!ダンクとか出来るの?』
「うい…」
無愛想だけど、返事をしてくれるから、意外といい奴なのかもしれないと私は森重にかまうようになった。
森重との出会いがこんなだから、睡眠、食事、バスケにしか興味がないと思われる森重のお世話係みたくなってしまい、先生も森重に用事があると私に声をかけてくる。
バスケ部の監督にも、私がマネージャーになってくれれば全国優勝出来ると何度も誘われているけれど、球技にはあんまり興味がない私は断っている。
今朝もきっとバスケ部の朝練を終えて、そのまま寝ちゃったんだろうと体育館を覗くと案の定、体育館のど真ん中で、眠りこけていた。
しかも、試合でも何でもないのにユニフォーム着ているし…どこか抜けてて、無頓着なところが憎めないんだよなぁ…と寝ていることをいいことに、ユニフォームから覗く筋肉を眺めた。
『かっこいいなぁ』
私は思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
小さな声のつもりだったけれど、私と森重以外にだれもいない体育館に意外と大きく響いて、恥ずかしくなってしまい、森重の腕をバシッと叩いた。
『起きて!授業、始まる』
「ん…」
森重はゆっくりと目を開いて私を見た。
「まだいいだろ…」
『もうチャイム鳴るって!』
目を閉じようとする森重の腕を引っ張って起こそうとしても、頑丈な身体はびくともしない。
『本当に良い筋肉してるんだから…』
私は文句のつもりで言ったのに、
「好きだろ?」
森重はそう言いながら、片腕で身体を支えて上半身を起こし、身体を私の方に向けた。
いつになく柔らかい表情で見つめられ、さっきの好きという言葉が頭の中で何度もリフレインして、顔がかっと熱くなる。
まさか自分がこんな風に森重にドキドキするなんて思ってもなかったし、そんな気持ちが芽生えたこと自体に混乱して何も言えなくなってしまう。
遠くで授業の開始を告げるチャイムが鳴る。
「サボる…あんたは?」
森重のニヤリとした表情に私は頷くしかなった。
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2021.10.27.
Inspired by illustration from reicarter-sama!
Thank you very much!
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