バタフライキス【仙道彰SS】
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***Side.仙道彰
去年の花火は綺麗だった。
そんなことを考えたのは、大学に入学して初めての夏。
花火大会に誘われたけれど行く気になれず一人寂しく過ごしていた日のことだ。
一人暮らしのクーラーの効いた部屋で一人、思い出していたのは、たんと線香花火のこと。
高校三年生の夏、陵南の奴ら何人かで校庭に花火大会と称して集まった。
偶然、俺とたんの二人だけが線香花火を手に取ったため、打ち上げ花火に盛り上がる周りから離れて、二人きりでろうそくを囲んだ。
お互いに惹かれあっていたことは何となく分かってはいたけれど、仲の良い友達でいた方が…なんて、あの頃は遠慮してたんだ。
二人同時に線香花火をろうそくに近づけ、シュッと火がついたところで、二つの線香花火がピタッとくっついた。
そのまま線香花火の火玉が大きくなり、パシュっパシュっと二回くらい爆ぜたところでポトリと火玉が落ちた。
『あっ…』
と、たんが残念そうに声を出したところで、バチっと目があった。
まるで今見た線香花火のようにぴたっと気持ちがくっついたみたいに錯覚して、
「俺さ…たんのこと…」
『彰…?』
好きだと言いかけたその時、
「おーい、仙道!たんと二人で何やってんだよ!」
越野の声に俺たちは声の方に目を向け、これ以上言葉を交わすことが出来なかった。
その後も、何度か二人きりになるタイミングはあったものの、告白するタイミングは訪れることはなく、連絡先を交換しただけで卒業してしまった。
でも、俺はずっとたんのことを想っている。
俺は携帯を取り出して、たんの連絡先を呼び出した。
最近覚えた【月が綺麗ですね】のセリフを思い出しながら…
数回の呼び出し音の後に久しぶりの声が聞こえる。
『もしもし…』
少し戸惑いを含んだその声に心臓の音がどんどん早くなる。
「俺さ、たんのこと好きで忘れられねぇ…」
『彰…私も好きって言えなかったこと、ずっと後悔してた…』
少し照れ混じりの会話のムズムズとした気持ちを思い出して俺はははっと笑った。
お互い忙しくて毎日電話だけの日が続いていたが、やっと明日会える。
窓越しにもうすぐ満月となりそうな月を見つめた。
***Side.たん
彰と初めてのデート。
薄暗くなった海辺の階段に腰掛けて、夜空を見上げた。
『あっ!流れ星!』
「んー、よかったな!」
背の高い彰は、私より下に座るとちょうど同じくらいの背の高さになるからって、私より二段下に座った。
身長が30cm近く違う私たちは、歩いている時はお互いの顔を意識しあうことがなかったから、こうして視線が合う状況にドキドキしてしまう。
流れ星が見たいという私のわがままに付き合ってくれた彰がここに連れてきてくれた。
ちらっと横目で彰を見れば、ため息が出てしまうくらいの整った顔…長いまつげにはちょっと嫉妬にも似た気持ちが沸き上がる。
『まつげ、なっが…』
「…そう?」
『ちょっと、ずるいって思ってる!』
「ははっ…まいったな…」
困ったように笑う彰は…やっぱりカッコよすぎてずるい。
私は意を決して、今日一日、ずっと考えてたことを口にした。
今日の流れ星に願えば、この願い、叶うような気がして…
『その長いまつげと、バタフライ……キス…がしたい…』
恥ずかしくて、小さな声になってしまうけれど、彰にはちゃんと届いたようだ。
「…バタフライキス?」
私はコクリとうなずいた。
偶然、女性誌に載っていたのを見て、これなら彰くんとするの恥ずかしくないかなって思って…
『まつげとまつげを触れ合わせるんだって…』
「へぇ…じゃ、早速…」
彰が階段に手をついてぐっと身体をよせたと思ったら、急に彰の顔が迫ってきて、私は思わず目を閉じた。
鼻がぶつからないよう少し顔を傾けた彰がさらに近づくのを感じる。
お互いの顔がピタッと密着するくらいの距離感に、普通のキスより恥ずかしいんじゃ…と、私はさらに目をギュっと瞑る。
「…ねぇ…瞬き、してよ…」
彰の吐息を間近に感じてドキドキと心臓の音は早くなって、瞬きなんて出来そうにない。
彰のまつ毛がそっと私のまつ毛を触れたので、私も何とかパタパタパタと瞬きをする。
彰は私とは違うリズムでゆっくりと瞬きをした。
まつ毛同士が触れ合うのがくすぐったくて、私はすぐに顔を離してしまった。
「どう…?」
『どうって…くすぐったい…』
失敗だったかな…なんて俯いていると、いきなりあごを取られて彰と見つめあう形になった。
「じゃあ、こっちは?」
なんて冗談めかして笑いながら、彰は私の唇を奪った。
チュッと音を立てて離れた唇をペロッと舐めるような仕草をした彰の顔をまともに見れなくて、私は膝を抱えるようにして突っ伏した。
しばらくすると、彰は私の髪を少しすくいとるように触れて、
「なぁ…月が綺麗…」
そう呟いた。
私はガバッと顔を上げて、上を見上げると、真ん丸な月が輝いている。
何でもお見通しで、吸い込まれそうな瞳がいつもより妖艶に光って見えるのは、気のせいかな…?
『ねぇ、意味分かって言ってる?』
「さぁ…どうだろうな…」
月を見上げたまま呟く彰は…やっぱりずるい。
***
2021.10.10.仙道の日。
去年の花火は綺麗だった。
そんなことを考えたのは、大学に入学して初めての夏。
花火大会に誘われたけれど行く気になれず一人寂しく過ごしていた日のことだ。
一人暮らしのクーラーの効いた部屋で一人、思い出していたのは、たんと線香花火のこと。
高校三年生の夏、陵南の奴ら何人かで校庭に花火大会と称して集まった。
偶然、俺とたんの二人だけが線香花火を手に取ったため、打ち上げ花火に盛り上がる周りから離れて、二人きりでろうそくを囲んだ。
お互いに惹かれあっていたことは何となく分かってはいたけれど、仲の良い友達でいた方が…なんて、あの頃は遠慮してたんだ。
二人同時に線香花火をろうそくに近づけ、シュッと火がついたところで、二つの線香花火がピタッとくっついた。
そのまま線香花火の火玉が大きくなり、パシュっパシュっと二回くらい爆ぜたところでポトリと火玉が落ちた。
『あっ…』
と、たんが残念そうに声を出したところで、バチっと目があった。
まるで今見た線香花火のようにぴたっと気持ちがくっついたみたいに錯覚して、
「俺さ…たんのこと…」
『彰…?』
好きだと言いかけたその時、
「おーい、仙道!たんと二人で何やってんだよ!」
越野の声に俺たちは声の方に目を向け、これ以上言葉を交わすことが出来なかった。
その後も、何度か二人きりになるタイミングはあったものの、告白するタイミングは訪れることはなく、連絡先を交換しただけで卒業してしまった。
でも、俺はずっとたんのことを想っている。
俺は携帯を取り出して、たんの連絡先を呼び出した。
最近覚えた【月が綺麗ですね】のセリフを思い出しながら…
数回の呼び出し音の後に久しぶりの声が聞こえる。
『もしもし…』
少し戸惑いを含んだその声に心臓の音がどんどん早くなる。
「俺さ、たんのこと好きで忘れられねぇ…」
『彰…私も好きって言えなかったこと、ずっと後悔してた…』
少し照れ混じりの会話のムズムズとした気持ちを思い出して俺はははっと笑った。
お互い忙しくて毎日電話だけの日が続いていたが、やっと明日会える。
窓越しにもうすぐ満月となりそうな月を見つめた。
***Side.たん
彰と初めてのデート。
薄暗くなった海辺の階段に腰掛けて、夜空を見上げた。
『あっ!流れ星!』
「んー、よかったな!」
背の高い彰は、私より下に座るとちょうど同じくらいの背の高さになるからって、私より二段下に座った。
身長が30cm近く違う私たちは、歩いている時はお互いの顔を意識しあうことがなかったから、こうして視線が合う状況にドキドキしてしまう。
流れ星が見たいという私のわがままに付き合ってくれた彰がここに連れてきてくれた。
ちらっと横目で彰を見れば、ため息が出てしまうくらいの整った顔…長いまつげにはちょっと嫉妬にも似た気持ちが沸き上がる。
『まつげ、なっが…』
「…そう?」
『ちょっと、ずるいって思ってる!』
「ははっ…まいったな…」
困ったように笑う彰は…やっぱりカッコよすぎてずるい。
私は意を決して、今日一日、ずっと考えてたことを口にした。
今日の流れ星に願えば、この願い、叶うような気がして…
『その長いまつげと、バタフライ……キス…がしたい…』
恥ずかしくて、小さな声になってしまうけれど、彰にはちゃんと届いたようだ。
「…バタフライキス?」
私はコクリとうなずいた。
偶然、女性誌に載っていたのを見て、これなら彰くんとするの恥ずかしくないかなって思って…
『まつげとまつげを触れ合わせるんだって…』
「へぇ…じゃ、早速…」
彰が階段に手をついてぐっと身体をよせたと思ったら、急に彰の顔が迫ってきて、私は思わず目を閉じた。
鼻がぶつからないよう少し顔を傾けた彰がさらに近づくのを感じる。
お互いの顔がピタッと密着するくらいの距離感に、普通のキスより恥ずかしいんじゃ…と、私はさらに目をギュっと瞑る。
「…ねぇ…瞬き、してよ…」
彰の吐息を間近に感じてドキドキと心臓の音は早くなって、瞬きなんて出来そうにない。
彰のまつ毛がそっと私のまつ毛を触れたので、私も何とかパタパタパタと瞬きをする。
彰は私とは違うリズムでゆっくりと瞬きをした。
まつ毛同士が触れ合うのがくすぐったくて、私はすぐに顔を離してしまった。
「どう…?」
『どうって…くすぐったい…』
失敗だったかな…なんて俯いていると、いきなりあごを取られて彰と見つめあう形になった。
「じゃあ、こっちは?」
なんて冗談めかして笑いながら、彰は私の唇を奪った。
チュッと音を立てて離れた唇をペロッと舐めるような仕草をした彰の顔をまともに見れなくて、私は膝を抱えるようにして突っ伏した。
しばらくすると、彰は私の髪を少しすくいとるように触れて、
「なぁ…月が綺麗…」
そう呟いた。
私はガバッと顔を上げて、上を見上げると、真ん丸な月が輝いている。
何でもお見通しで、吸い込まれそうな瞳がいつもより妖艶に光って見えるのは、気のせいかな…?
『ねぇ、意味分かって言ってる?』
「さぁ…どうだろうな…」
月を見上げたまま呟く彰は…やっぱりずるい。
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2021.10.10.仙道の日。
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