バタフライキス【仙道彰SS】
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7月7日。
薄暗くなった海辺の階段に腰掛けて、夜空を見上げた。
『星、見えるね!』
「んー、よかったな!」
背の高い彰くんは、私より下に座るとちょうど同じくらいの背の高さになるからって、私より二段下に座った。
身長が30cm近く違う私たちは、歩いている時はお互いの顔を意識しあうことがなかったから、こうして視線が合う状況にドキドキしてしまう。
七夕だから、星が見たいという私のわがままに付き合ってくれた彰くんがここに連れてきてくれた。
ちらっと横目で彰くんを見れば、ため息が出てしまうくらいの整った顔…長いまつげにはちょっと嫉妬にも似た気持ちが沸き上がる。
『まつげ、なっが…』
「…そう?」
『ちょっと、ずるいって思ってる!』
「ははっ…まいったな…」
困ったように笑う彰くんは…やっぱりカッコよすぎてずるい。
私は意を決して、今日一日、ずっと考えてたことを口にした。
今日は七夕だし、その願い、叶うような気がして…
『その長いまつげと、バタフライ……キス…がしたい…』
恥ずかしくて、小さな声になってしまうけれど、彰くんにはちゃんと届いたようだ。
「…バタフライキス?」
私はコクリとうなずいた。
偶然、女性誌に載っていたのを見て、これなら彰くんとするの恥ずかしくないかなって思って…
『まつげとまつげを触れ合わせるんだって…』
「へぇ…じゃ、早速…」
彰くんが階段に手をついてぐっと身体をよせたと思ったら、急に彰くんの顔が迫ってきて、私は思わず目を閉じた。
鼻がぶつからないよう少し顔を傾けた彰くんがさらに近づくのを感じる。
お互いの顔がピタッと密着するくらいの距離感に、普通のキスより恥ずかしいんじゃ…と、私はさらに目をギュっと瞑る。
「…ねぇ…瞬き、してよ…」
彰くんの吐息を間近に感じてドキドキと心臓の音は早くなって、瞬きなんて出来そうにない。
彰くんのまつ毛がそっと私のまつ毛を触れたので、私も何とかパタパタパタと瞬きをする。
彰くんは私とは違うリズムでゆっくりと瞬きをした。
まつ毛同士が触れ合うのがくすぐったくて、私はすぐに顔を離してしまった。
「どう…?」
『どうって…くすぐったい…』
失敗だったかな…なんて俯いていると、いきなりあごを取られて彰くんと見つめあう形になった。
「じゃあ、こっちは?」
なんて冗談めかして笑いながら、彰くんは私の唇を奪った。
チュッと音を立てて離れた唇をペロッと舐めるような仕草をした彰くんの顔をまともに見れなくて、私は膝を抱えるようにして突っ伏した。
しばらくすると、彰くんは私の髪を少しすくいとるように触れて、
「なぁ…月が綺麗…」
そう呟いた。
私はガバッと顔を上げて、上を見上げると、雲の隙間から明るい月が顔を出していた。
何でもお見通しで、吸い込まれそうな瞳がいつもより妖艶に光って見えるのは、今日が七夕だから…?
『ねぇ、意味分かって言ってる?』
「さぁ…どうだろうな…」
月を見上げたまま呟く彰くんは…やっぱりずるい。
***
2021.7.7. 七夕
薄暗くなった海辺の階段に腰掛けて、夜空を見上げた。
『星、見えるね!』
「んー、よかったな!」
背の高い彰くんは、私より下に座るとちょうど同じくらいの背の高さになるからって、私より二段下に座った。
身長が30cm近く違う私たちは、歩いている時はお互いの顔を意識しあうことがなかったから、こうして視線が合う状況にドキドキしてしまう。
七夕だから、星が見たいという私のわがままに付き合ってくれた彰くんがここに連れてきてくれた。
ちらっと横目で彰くんを見れば、ため息が出てしまうくらいの整った顔…長いまつげにはちょっと嫉妬にも似た気持ちが沸き上がる。
『まつげ、なっが…』
「…そう?」
『ちょっと、ずるいって思ってる!』
「ははっ…まいったな…」
困ったように笑う彰くんは…やっぱりカッコよすぎてずるい。
私は意を決して、今日一日、ずっと考えてたことを口にした。
今日は七夕だし、その願い、叶うような気がして…
『その長いまつげと、バタフライ……キス…がしたい…』
恥ずかしくて、小さな声になってしまうけれど、彰くんにはちゃんと届いたようだ。
「…バタフライキス?」
私はコクリとうなずいた。
偶然、女性誌に載っていたのを見て、これなら彰くんとするの恥ずかしくないかなって思って…
『まつげとまつげを触れ合わせるんだって…』
「へぇ…じゃ、早速…」
彰くんが階段に手をついてぐっと身体をよせたと思ったら、急に彰くんの顔が迫ってきて、私は思わず目を閉じた。
鼻がぶつからないよう少し顔を傾けた彰くんがさらに近づくのを感じる。
お互いの顔がピタッと密着するくらいの距離感に、普通のキスより恥ずかしいんじゃ…と、私はさらに目をギュっと瞑る。
「…ねぇ…瞬き、してよ…」
彰くんの吐息を間近に感じてドキドキと心臓の音は早くなって、瞬きなんて出来そうにない。
彰くんのまつ毛がそっと私のまつ毛を触れたので、私も何とかパタパタパタと瞬きをする。
彰くんは私とは違うリズムでゆっくりと瞬きをした。
まつ毛同士が触れ合うのがくすぐったくて、私はすぐに顔を離してしまった。
「どう…?」
『どうって…くすぐったい…』
失敗だったかな…なんて俯いていると、いきなりあごを取られて彰くんと見つめあう形になった。
「じゃあ、こっちは?」
なんて冗談めかして笑いながら、彰くんは私の唇を奪った。
チュッと音を立てて離れた唇をペロッと舐めるような仕草をした彰くんの顔をまともに見れなくて、私は膝を抱えるようにして突っ伏した。
しばらくすると、彰くんは私の髪を少しすくいとるように触れて、
「なぁ…月が綺麗…」
そう呟いた。
私はガバッと顔を上げて、上を見上げると、雲の隙間から明るい月が顔を出していた。
何でもお見通しで、吸い込まれそうな瞳がいつもより妖艶に光って見えるのは、今日が七夕だから…?
『ねぇ、意味分かって言ってる?』
「さぁ…どうだろうな…」
月を見上げたまま呟く彰くんは…やっぱりずるい。
***
2021.7.7. 七夕
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