if...【桜木花道】
幼馴染のヒロイン
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小学校入学の時から、一緒によく遊んでいた真っ赤な髪の男の子。
顔はぼんやりしているけど、あの髪の色だけは今も鮮明に覚えてる。もちろん、名前も。
いつの頃からか、避けられるようになって、お母さんたちに一緒に遊ぶのを禁止され、中学は別のところに行かされた。
まだ好きという気持ちも分からない小学生の頃の事だけれど、大切な友達とさようならも言えずに離れ離れになったことがどこかで心残りだった。
そんな彼の事を知ったのは、東京の大学に入学が決まり、もうすぐ引っ越しをしようという頃だった。
マイナーなバスケットボールだけど、その年はプロリーグの統合やNBAプレイヤー候補誕生など話題が多く、スポーツニュースで目にすることが多かった。
その影響か高校バスケも取り上げられていたのだ。
何気なく実家でついていたテレビのニュース番組を見ていたら、真っ赤な頭が映って、それがすぐに彼だとわかった。
私は、一瞬で目を奪われて固まってしまった。
花道くんがテレビに映ってる…しかもバスケットボールでインターハイ優勝?
母親も、
「赤頭…あの悪ガキじゃない?バスケで全国大会優勝なんて、偉くなったもんね~そうそう、何て名前だったっけ?」
『………』
「はな?どうしたの?」
『花道くん…桜木花道だよ』
「そうそう、そんな名前だったわね」
最近忘れっぽいわ~なんて言いながら、お母さんはキッチンに行った。
テレビに映った彼の試合終了直後のハイタッチシーンが目に焼き付いて離れない。
我に返った私は、思わず花道くんのことを調べた。
彼は…桜木花道くんは、高校生のときにバスケットを始めて数ヶ月で、インターハイ出場。
その時に優勝候補チームを破ったが、試合中の怪我でリハビリに半年も費やした。
しかし、怪我明けもめきめき力をつけ、キャプテンとして高校三年生の時にはインターハイと国体を制し、高卒で実業団に入るということだった。
花道くん、すごい!かっこいいな~
また…会いたいな。
でも、私は…ごく普通の何のとりえもない女子大生になる。
彼のような、サクセスストーリーもなく、また会える望みは全くない。
真っ黒でサラサラな髪型を代えたら何か変わるかもと、卒業後に軽くブリーチして、栗色にし、軽くパーマもかけてふわっとさせた。
そういえば、赤い髪に染める前の彼はこんな髪色だったような…
大学生になった私は、大学生らしく勉強やアルバイトに精を出した。
友人に誘われて、合コンなどにも行ったが、出会いの方はさっぱりだった。
花道くんが気になって、他の男の子がかすんで見えてしまっている。
いい雰囲気になっても、最後で決め手に欠ける感じ…
花道くんが気になって、彼が載っているバスケット雑誌を買ったり、一度だけ勇気を出して試合を見に行ったりもした。
決して大柄な方ではないけれど、誰よりも高く飛ぶ花道くんにくぎ付けになった。
会っても花道くんは覚えていないだろうけれど、ファンとして彼の活躍が嬉しかった。
東京での一人暮らしも板につき、私は大学3年生となった。
就活を控え、そろそろ将来を具体的に決めていかなくてはいけない時期。
いつものようにバイトに行こうとして家を出たら、彼がそこにいて、心臓が飛び出るくらい驚いた。
思わず、『花道くん』と呼んでしまったせいで、怪訝な顔をされてしまった。
偶然、隣の部屋に引っ越してきた彼は、やっぱり私を覚えていないようだった。
分かっていたこととはいえ、悲しかった…
生活の時間帯も違うだろうし、会ってもいちファンとして、接しよう。
そう決めたのに、二回目の逢瀬はすぐだった。
彼と再会した次の日の夕方、大学の課題を自宅でこなして、少し遅めの時間に夕食の買い出しに出ようとすると、ちょうど花道くんも家から出てきたところだった。
『こんにちは』
少し緊張したが、普通に挨拶出来たはずだ。
「ちゅーっす!ちょうどよかった!お隣さん、教えてほしいことがあるっす。メシが安くてうまいとこ、どっかないっすか?」
人懐っこい笑顔と大きな声で言われて、私はまた幼いころの彼を思い出した。
声が大きくて、こそこそ話が丸聞こえで、よく先生に注意されていたこと。
大きく口を開けてにかっと笑うこと。
思い出に浸っていると、
「俺の顔、何かついてるっすか?」
キョトンとした花道くんと目が合った。
『あっ、ごめんなさい。ご飯食べるとこですよね。う~ん…この辺り、ファミレスやファーストフード、居酒屋ばっかりで…そうだ!アルバイトしている定食屋さんがあるので案内しましょうか?』
思わず、自分のバイト先を教えることにした。
「いいんすか!?これから、バイトっすか?」
『今日はシフトに入っていなくて…』
「じゃあ、一緒にメシ食いましょう!オレ、おごります!」
あっという間に一緒にご飯を食べることが決まって、アルバイト先の定食屋に行った。
私のバイト先は、女性客も意識してこじゃれた雰囲気の店内だが、メニューは昔ながらの定食屋で、男性でも女性でも一人でふらっと入りやすいと思う。
店長に
「彼氏!?」
と驚かれたが、ただの隣人で、バスケット選手だというと、また驚いていた。
そして、彼の食欲に、さらに驚くこととなった。
ご飯大盛りの定食2つにラーメンまで…
引っ越し祝いということで、店長がビールをサービスしてくれたが、一杯だけで、飲むよりひたすら食べていた。
私は、花道くんとまた会えてうれしい気持ち以上に、2年間、ファンとして応援してきた桜木花道選手が目の前にいて、しかも二人きりで食事していることが信じられなくて、ご飯の味があまり分からなかった。
あまりの食べっぷりに気をよくした店長は、写真を撮り、店に飾るサインをもらっていた。
色紙には【天才!桜木花道】と書かれていて笑ってしまった。
その自信にあふれる彼が、まぶしかった。
「そういえば、お隣さん、名前、なんて言うんすか?」
『名前、ですか…』
言うか言うまいか悩む。
名前を伝えたら、思い出してくれるかもしれない。
淡い期待がありつつも、私のことは全く覚えていなかったら…
小学校の時、同じだったと伝えてもいいだろうか…?
全く覚えていないことを知ったら、私は立ち直れなくなりそう…
そんな思いが頭を駆け巡り、険しい顔になっていたのだろう。
「すいませんっ。名前聞いて失礼でしたね…」
慌てて取り繕う花道くんを見て、申し訳ない気持ちになり、意を決して伝えることにした。
『名前を知られたくない訳じゃなくて………
……
佐倉 はなです』
花道くんは、
「聞いたことあるような…」
と記憶をたどっている。
私は、心臓が口から飛び出そうなくらいバクバクしている。
そして、思い当たったのか驚いたように目を見開いた。
…多分、気付いたんだと思う。
彼の中の幼いころの私は、どんなイメージなのだろうか…
同級生で久しぶりと笑ってくれるだろうか?
髪の毛をほめあったこと、覚えてくれているだろうか?
お互い自然と離れ離れになってしまったこと、どう思っているのだろうか?
緊張で、握りしめた手がじっとりと汗ばんでいく。
「はな…もしかして、小学校の時のあのはななのか!?」
いきなりの大きな声にビクンと椅子から飛び上がりそうになる。
いきなり名前を呼ばれて、ドキドキして顔が赤くなった。
そして、最後に覚えていてくれた嬉しさがこみあげてきて、涙が込み上げてきた。
涙をこらえ、やっとの思いで、こくんとうなずいた。
彼は、顔を真っ赤にして、
「はな…懐かしい声だと思ったんだ。昔は真っ黒でサラサラな髪だっただろ?オレ、お前をずっと避けちまったことあって、ごめんな…」
『私の方こそ、逃げるように中学も別のとこ行っちゃったし。でももう一度、会いたいと思ってた。だから、花道くんがバスケで有名になってテレビで見たとき、すぐにわかったんだ。試合も見に行ったことあるんだよ』
顔はぼんやりしているけど、あの髪の色だけは今も鮮明に覚えてる。もちろん、名前も。
いつの頃からか、避けられるようになって、お母さんたちに一緒に遊ぶのを禁止され、中学は別のところに行かされた。
まだ好きという気持ちも分からない小学生の頃の事だけれど、大切な友達とさようならも言えずに離れ離れになったことがどこかで心残りだった。
そんな彼の事を知ったのは、東京の大学に入学が決まり、もうすぐ引っ越しをしようという頃だった。
マイナーなバスケットボールだけど、その年はプロリーグの統合やNBAプレイヤー候補誕生など話題が多く、スポーツニュースで目にすることが多かった。
その影響か高校バスケも取り上げられていたのだ。
何気なく実家でついていたテレビのニュース番組を見ていたら、真っ赤な頭が映って、それがすぐに彼だとわかった。
私は、一瞬で目を奪われて固まってしまった。
花道くんがテレビに映ってる…しかもバスケットボールでインターハイ優勝?
母親も、
「赤頭…あの悪ガキじゃない?バスケで全国大会優勝なんて、偉くなったもんね~そうそう、何て名前だったっけ?」
『………』
「はな?どうしたの?」
『花道くん…桜木花道だよ』
「そうそう、そんな名前だったわね」
最近忘れっぽいわ~なんて言いながら、お母さんはキッチンに行った。
テレビに映った彼の試合終了直後のハイタッチシーンが目に焼き付いて離れない。
我に返った私は、思わず花道くんのことを調べた。
彼は…桜木花道くんは、高校生のときにバスケットを始めて数ヶ月で、インターハイ出場。
その時に優勝候補チームを破ったが、試合中の怪我でリハビリに半年も費やした。
しかし、怪我明けもめきめき力をつけ、キャプテンとして高校三年生の時にはインターハイと国体を制し、高卒で実業団に入るということだった。
花道くん、すごい!かっこいいな~
また…会いたいな。
でも、私は…ごく普通の何のとりえもない女子大生になる。
彼のような、サクセスストーリーもなく、また会える望みは全くない。
真っ黒でサラサラな髪型を代えたら何か変わるかもと、卒業後に軽くブリーチして、栗色にし、軽くパーマもかけてふわっとさせた。
そういえば、赤い髪に染める前の彼はこんな髪色だったような…
大学生になった私は、大学生らしく勉強やアルバイトに精を出した。
友人に誘われて、合コンなどにも行ったが、出会いの方はさっぱりだった。
花道くんが気になって、他の男の子がかすんで見えてしまっている。
いい雰囲気になっても、最後で決め手に欠ける感じ…
花道くんが気になって、彼が載っているバスケット雑誌を買ったり、一度だけ勇気を出して試合を見に行ったりもした。
決して大柄な方ではないけれど、誰よりも高く飛ぶ花道くんにくぎ付けになった。
会っても花道くんは覚えていないだろうけれど、ファンとして彼の活躍が嬉しかった。
東京での一人暮らしも板につき、私は大学3年生となった。
就活を控え、そろそろ将来を具体的に決めていかなくてはいけない時期。
いつものようにバイトに行こうとして家を出たら、彼がそこにいて、心臓が飛び出るくらい驚いた。
思わず、『花道くん』と呼んでしまったせいで、怪訝な顔をされてしまった。
偶然、隣の部屋に引っ越してきた彼は、やっぱり私を覚えていないようだった。
分かっていたこととはいえ、悲しかった…
生活の時間帯も違うだろうし、会ってもいちファンとして、接しよう。
そう決めたのに、二回目の逢瀬はすぐだった。
彼と再会した次の日の夕方、大学の課題を自宅でこなして、少し遅めの時間に夕食の買い出しに出ようとすると、ちょうど花道くんも家から出てきたところだった。
『こんにちは』
少し緊張したが、普通に挨拶出来たはずだ。
「ちゅーっす!ちょうどよかった!お隣さん、教えてほしいことがあるっす。メシが安くてうまいとこ、どっかないっすか?」
人懐っこい笑顔と大きな声で言われて、私はまた幼いころの彼を思い出した。
声が大きくて、こそこそ話が丸聞こえで、よく先生に注意されていたこと。
大きく口を開けてにかっと笑うこと。
思い出に浸っていると、
「俺の顔、何かついてるっすか?」
キョトンとした花道くんと目が合った。
『あっ、ごめんなさい。ご飯食べるとこですよね。う~ん…この辺り、ファミレスやファーストフード、居酒屋ばっかりで…そうだ!アルバイトしている定食屋さんがあるので案内しましょうか?』
思わず、自分のバイト先を教えることにした。
「いいんすか!?これから、バイトっすか?」
『今日はシフトに入っていなくて…』
「じゃあ、一緒にメシ食いましょう!オレ、おごります!」
あっという間に一緒にご飯を食べることが決まって、アルバイト先の定食屋に行った。
私のバイト先は、女性客も意識してこじゃれた雰囲気の店内だが、メニューは昔ながらの定食屋で、男性でも女性でも一人でふらっと入りやすいと思う。
店長に
「彼氏!?」
と驚かれたが、ただの隣人で、バスケット選手だというと、また驚いていた。
そして、彼の食欲に、さらに驚くこととなった。
ご飯大盛りの定食2つにラーメンまで…
引っ越し祝いということで、店長がビールをサービスしてくれたが、一杯だけで、飲むよりひたすら食べていた。
私は、花道くんとまた会えてうれしい気持ち以上に、2年間、ファンとして応援してきた桜木花道選手が目の前にいて、しかも二人きりで食事していることが信じられなくて、ご飯の味があまり分からなかった。
あまりの食べっぷりに気をよくした店長は、写真を撮り、店に飾るサインをもらっていた。
色紙には【天才!桜木花道】と書かれていて笑ってしまった。
その自信にあふれる彼が、まぶしかった。
「そういえば、お隣さん、名前、なんて言うんすか?」
『名前、ですか…』
言うか言うまいか悩む。
名前を伝えたら、思い出してくれるかもしれない。
淡い期待がありつつも、私のことは全く覚えていなかったら…
小学校の時、同じだったと伝えてもいいだろうか…?
全く覚えていないことを知ったら、私は立ち直れなくなりそう…
そんな思いが頭を駆け巡り、険しい顔になっていたのだろう。
「すいませんっ。名前聞いて失礼でしたね…」
慌てて取り繕う花道くんを見て、申し訳ない気持ちになり、意を決して伝えることにした。
『名前を知られたくない訳じゃなくて………
……
佐倉 はなです』
花道くんは、
「聞いたことあるような…」
と記憶をたどっている。
私は、心臓が口から飛び出そうなくらいバクバクしている。
そして、思い当たったのか驚いたように目を見開いた。
…多分、気付いたんだと思う。
彼の中の幼いころの私は、どんなイメージなのだろうか…
同級生で久しぶりと笑ってくれるだろうか?
髪の毛をほめあったこと、覚えてくれているだろうか?
お互い自然と離れ離れになってしまったこと、どう思っているのだろうか?
緊張で、握りしめた手がじっとりと汗ばんでいく。
「はな…もしかして、小学校の時のあのはななのか!?」
いきなりの大きな声にビクンと椅子から飛び上がりそうになる。
いきなり名前を呼ばれて、ドキドキして顔が赤くなった。
そして、最後に覚えていてくれた嬉しさがこみあげてきて、涙が込み上げてきた。
涙をこらえ、やっとの思いで、こくんとうなずいた。
彼は、顔を真っ赤にして、
「はな…懐かしい声だと思ったんだ。昔は真っ黒でサラサラな髪だっただろ?オレ、お前をずっと避けちまったことあって、ごめんな…」
『私の方こそ、逃げるように中学も別のとこ行っちゃったし。でももう一度、会いたいと思ってた。だから、花道くんがバスケで有名になってテレビで見たとき、すぐにわかったんだ。試合も見に行ったことあるんだよ』