ふれあった手から【赤木剛憲】

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今日は、湘北高校最後の文化祭だ。

正直、受験勉強をしていたいと思うが…

気合を入れて準備するクラスメイト達を見て、そんなことを言う勇気はなかった。


『赤木くん!もっと目立つように揚げて!…OK!じゃ、よろしくね!』

俺は、
【3-6 焼きそば ポップコーン 最後尾はこちら】
の立札を木下さんから渡されて、なるべく目立つように掲げさせられた。

俺のクラスは、焼きそばとポップコーンを売る屋台だが、料理や装飾なんかはからきしの俺は、客引きの看板持ちと当日の買い出し担当となった。

クラスメイトの木暮は、ポップコーンを詰めたりとこちらも裏方だ。

昼が近くなり、食べ物屋は混雑してくる中、デカい俺が役に立つのはこのくらいだろう。

列はどんどん伸びて、その度に木下さんはてきぱきと列を整理して俺にも細かく立つ場所を指示してくれる。

木下、材料が足りなくなりそう!どうする?」

『了解!急いで買い出し行ってもらう!…ということで、赤木くん、よろしく!』

「…ああ」

『木暮くん!看板持つの交代して!列の整理もね!』

「いいよ!赤木、交代な!」

「頼む」

木暮と看板持ちを交代して、木下さんに着いていくと、ささっとメモを書き、お金の入った袋とピンクのエコバックを渡された。

『私の自転車貸すから、業務用のスーパーで、これ、買ってきて!』

「…近くのスーパーじゃ、ダメなのか?」

『1kgの焼きそば麺は、そこしかないの!安いしね…さ、早く!私の自転車、こっち!』

小走りで自転車置き場に駆けていく木下さんの後ろを着いていくと、貸してくれるというのは…古ぼけたママチャリだった。

…俺が乗っても、大丈夫だろうか?

『さ、よろしく!』

「これ…」

『大丈夫だって!急いで行ってきて!』

俺は、その自転車を校門の外まで押していき、恐る恐るサドルにまたがり、漕ぎだした。

サドルは低いし、窮屈だが、漕げないことはない。

ブレーキがキーっと音を立てるのが、その自転車の古さを物語っているが仕方ない…

急いでと言われた通り、大通りに面した業務用のスーパーまで、自転車を壊さないよう注意しながらも早く漕いでいく。

目当てのスーパーに着き、メモに詳細に書かれた焼きそば麺やもやし、肉などを買うと結構な量だったが、その安い会計には驚いた。

プロテインや牛乳も安そうで、物色したい思いもあったが、今は急いで戻らなければいけない。

預かったエコバックは開くとデカいハート柄で、ぎょっとしてしまうが、これしかないのだから仕方ない。

大量に買った食材をエコバックに詰めて、ママチャリのかごに乗せ、来た道を戻っていく。

重い荷物を積むと軋んだ音をたてたママチャリに、壊れはしないかとヒヤヒヤしながら学校へと急いだ。

校門の前では、木下さんが待っており、俺の姿を見つけると、駆け寄ってきた。

『赤木くん!早く早く!!』

自転車から、荷物を持ち上げようとするのを思わず静止して、

「いや、重いから俺が…」

『えっ?あ…赤木くん…』

「わ…悪い…これは俺が持ってくから、自転車…頼む…」

俺は意図せずして手が触れあったことに動揺して赤面してしまう。

木下さんも、慌てて、

『そ…そうだよね!じゃ、食材置いたら、木暮くんと交代して!』

「あ…ああ…」

ピンクのエコバックを持って、クラスのテントまで戻る途中に、

「よお!赤木、そのエコバック似合ってんな!」

三井に話しかけられた。

「ちょっと…三井くん!」

隣の彼女が咎めるのもお構いなしに、

「ゴリラにピンク…くくっ…」

「ふんっ!たわけが…」

俺は、三井にかまうことなくクラスのテントへと急いだ。

俺がテントに戻ってすぐ、

『赤木くん!ありがとう!』

走って戻ってきた木下さんに声をかけられたので、お釣りを渡した。

その後もてきぱきとクラスメイトに指示を飛ばす姿に感心していると、

「赤木、交代してくれよな!」

木暮が後ろから声をかけてきたので、飛び上がるほど驚いた。

「こ…木暮か…」

「どうした?顔、赤くないか?」

「…むう…そんなことは…」

「そうか?それにしても、木下さん、しっかりしてるよな~」

木下さんのことを考えていた俺は、木下さんと聞いてドキドキしてしまう。

「……そうだな…」

「赤木にはああいう女の子、似合いそうだな!」

木暮は、メガネを押し上げながらいたずらっぽく俺を見た。

「…はっ…そんなわけ……ばかもんが!」

焦った俺は、思わず大きな声になってしまい、

『ちょっと!赤木くん!お客さんまだ多いんだから、ちゃんと看板持ちやって!』

木下さんから檄が飛ぶ。

「すっ…すまん!」

「ははっ!赤木、冗談だって…」

「ふんっ!行くぞ!」

俺は、立て看板を木暮から奪って、客引き兼列の整理に戻った。

その後も木下さんが気になって仕方がない俺は、ちらちらと目で追ってしまう。

その日はずっと、木暮が言った木下さんが俺に似合うというセリフが頭から離れなかった。


***
2021.5.10. Happy Birthday to Akagi-san!!
こぼれ話→ふれあった手から【赤木剛憲】
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