Kräftskiva【藤真健司】
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待ち合わせの駅には、時間ギリギリに到着した。
土曜日なだけあって、混みあっている改札前でも、藤真健司の姿は、嫌になるくらいすぐに見つかった。
何度も踵を返そうとしたが、約束をドタキャンする勇気もない私は、ゆっくりと藤真健司のいる方へと歩みを進めた。
「やっと来た!待ちくたびれたぜ!」
さわやかに駆け寄ってくる彼に後ずさりしそうになるのを何とかこらえて、
『お待たせしてすいません…』
なるべく顔を見なくてすむように、ぺこりと頭を下げた。
「よっしゃ!行こうぜ!」
いきなり手をつながれ、グイグイと引っ張られるような形でI/K/E/Aの方まで向かった。
心臓が口から飛び出そうなほどバクバクとなる中、藤真健司にされるがまま入り口をくぐった。
大好きな北欧テイストの店内に入って、繋いだ手をほどかれ少しほっとしていると、
「どうした?もしかして、体調悪いのかよ?」
顔を覗き込まれて、せっかく落ち着きかけた心臓が、またうるさくなり始める。
『だ…ダイジョブです!それより、ザリガニ、楽しみですね!私、初めてで…』
「俺も!いっぱい食おうぜ!」
藤真健司の顔を見つめる勇気もないので、入口辺りの雑貨を見るフリをしながら、ザリガニ食べ放題の場所へと向かった。
陽気な雰囲気の中、席に通されれば、幾分か緊張も解け純粋に食事を楽しもうという気持ちになってくる。
店員さんから説明を聞き、前菜のプレートが出される。
「ビール、飲まねぇ?」
『いや、お昼なのでやめときます。ドリンクバーもありますし』
「よっしゃ!俺も食うことに専念する」
へんてこりんなエプロンを嬉々と身に着けた藤真健司を見て、
『ふふっ…』
思わず笑みがこぼれた。
「皐月さん、やっと笑ったな」
安心したように微笑む藤真健司に、また緊張感が戻ってくる。
『すっすいません…男性と二人なんて、久しぶりすぎてどうしていいか分からなくて…』
さすがにあなたに緊張していますとは言えない私は、曖昧に言葉を濁した。
「マジか!じゃ、ザリガニ取りに行こうぜ!」
まるで子どものようにはしゃいてザリガニをこれでもかとお皿に乗るだけ盛った藤真健司をちらちらと眺めながら、目の前のザリガニを食べて行く。
カニと同様、殻を割ったり剥いたりで、喋る必要のないザリガニ食べ放題で本当に良かったと思いながら、ザリガニを食べ進める。
徐々に剥くのも上達して楽しくなってくる。
味も思った以上に美味しくて、香草をきかせた味付けにパクパクと食べられる。
「もう、腹いっぱい!」
満足そうな顔で、口を拭った藤真健司は、私のお皿を見て、
「結構、食うんだな!」
嬉しそうに目を細めた。
『…っ……結構、食いしん坊なので…』
あまりにも眩しい笑顔にしどろもどろに返事をする。
「『ごちそうさまでした』」
テーブルに置かれた伝票に同時に手を伸ばしたため、互いの手がふれあい、私はビクッと手を引っ込めた。
『ごめんなさいっ!』
「手が触れたくらい気にすんなって!…皐月さんって男慣れしてねぇんだな!」
伝票をクシャっと掴んで、荷物を持つと、レジへ向かう後を慌てて追いかける。
割り勘で払おうとすると、
「予約もしてくれたし、俺に奢らせろって…試合勝って、ボーナスも出そうだしな!」
『いや…そう言うわけには…』
「じゃ、ここは払うから、この後、酒飲みに付き合ってくれねぇ?」
『はい!?』
やっと藤真健司から解放されると思っていた私は変な返事をしてしまう。
会計を終えて、彼の後に続いて店を出た私に、
「いい年した男女が健全にご飯食べて、ハイさようならっておかしいだろ?」
『はぁ…』
「皐月さんさ…本当に俺の気持ち、気付いてねぇの?」
『気持ちって…?』
藤真健司の言っていることの意味が分からず困惑していると、急に距離を縮めて、顔が近づいてくる。
藤真健司の吐息が耳にかかる。
「俺。皐月さんのこと、好きなんだけど…」
好き…
その一言に私は、腰が砕けてへなへなと座り込んだ。
今…好きって言った…よね?
頭のなかが真っ白でどうしていいか分からない。
「お…おい!立てるか?」
そんな私に追い打ちをかけるように、藤真健司は膝をつくと、私をお姫様抱っこで抱え、近くのベンチへと連れていかれる。
何とか意識だけは保った状態で、私はされるがままにベンチに座らされた。
「大丈夫か?」
『…すっ…すいません…』
「悪い…急に言われて迷惑だったよな…」
申し訳なさそうに私から手を離す。
『違うっ…んです…えっと…あの…』
「何?」
顔を覗き込まれて、緊張で意識が遠のきそうになる。
でも、自分の気持ち伝えなくちゃ…
『私も……藤真さんのこと…す…き…』
そう言ったところで、私の緊張の糸が切れた。
「おい!大丈夫か?」
遠くで藤真さんの声が聞こえるが、藤真健司と両思いで、自分の気持ちを伝えられたということに安心して、私は意識を飛ばした。
***
2021.4.28
こぼれ話→Kräftskiva【藤真健司】
土曜日なだけあって、混みあっている改札前でも、藤真健司の姿は、嫌になるくらいすぐに見つかった。
何度も踵を返そうとしたが、約束をドタキャンする勇気もない私は、ゆっくりと藤真健司のいる方へと歩みを進めた。
「やっと来た!待ちくたびれたぜ!」
さわやかに駆け寄ってくる彼に後ずさりしそうになるのを何とかこらえて、
『お待たせしてすいません…』
なるべく顔を見なくてすむように、ぺこりと頭を下げた。
「よっしゃ!行こうぜ!」
いきなり手をつながれ、グイグイと引っ張られるような形でI/K/E/Aの方まで向かった。
心臓が口から飛び出そうなほどバクバクとなる中、藤真健司にされるがまま入り口をくぐった。
大好きな北欧テイストの店内に入って、繋いだ手をほどかれ少しほっとしていると、
「どうした?もしかして、体調悪いのかよ?」
顔を覗き込まれて、せっかく落ち着きかけた心臓が、またうるさくなり始める。
『だ…ダイジョブです!それより、ザリガニ、楽しみですね!私、初めてで…』
「俺も!いっぱい食おうぜ!」
藤真健司の顔を見つめる勇気もないので、入口辺りの雑貨を見るフリをしながら、ザリガニ食べ放題の場所へと向かった。
陽気な雰囲気の中、席に通されれば、幾分か緊張も解け純粋に食事を楽しもうという気持ちになってくる。
店員さんから説明を聞き、前菜のプレートが出される。
「ビール、飲まねぇ?」
『いや、お昼なのでやめときます。ドリンクバーもありますし』
「よっしゃ!俺も食うことに専念する」
へんてこりんなエプロンを嬉々と身に着けた藤真健司を見て、
『ふふっ…』
思わず笑みがこぼれた。
「皐月さん、やっと笑ったな」
安心したように微笑む藤真健司に、また緊張感が戻ってくる。
『すっすいません…男性と二人なんて、久しぶりすぎてどうしていいか分からなくて…』
さすがにあなたに緊張していますとは言えない私は、曖昧に言葉を濁した。
「マジか!じゃ、ザリガニ取りに行こうぜ!」
まるで子どものようにはしゃいてザリガニをこれでもかとお皿に乗るだけ盛った藤真健司をちらちらと眺めながら、目の前のザリガニを食べて行く。
カニと同様、殻を割ったり剥いたりで、喋る必要のないザリガニ食べ放題で本当に良かったと思いながら、ザリガニを食べ進める。
徐々に剥くのも上達して楽しくなってくる。
味も思った以上に美味しくて、香草をきかせた味付けにパクパクと食べられる。
「もう、腹いっぱい!」
満足そうな顔で、口を拭った藤真健司は、私のお皿を見て、
「結構、食うんだな!」
嬉しそうに目を細めた。
『…っ……結構、食いしん坊なので…』
あまりにも眩しい笑顔にしどろもどろに返事をする。
「『ごちそうさまでした』」
テーブルに置かれた伝票に同時に手を伸ばしたため、互いの手がふれあい、私はビクッと手を引っ込めた。
『ごめんなさいっ!』
「手が触れたくらい気にすんなって!…皐月さんって男慣れしてねぇんだな!」
伝票をクシャっと掴んで、荷物を持つと、レジへ向かう後を慌てて追いかける。
割り勘で払おうとすると、
「予約もしてくれたし、俺に奢らせろって…試合勝って、ボーナスも出そうだしな!」
『いや…そう言うわけには…』
「じゃ、ここは払うから、この後、酒飲みに付き合ってくれねぇ?」
『はい!?』
やっと藤真健司から解放されると思っていた私は変な返事をしてしまう。
会計を終えて、彼の後に続いて店を出た私に、
「いい年した男女が健全にご飯食べて、ハイさようならっておかしいだろ?」
『はぁ…』
「皐月さんさ…本当に俺の気持ち、気付いてねぇの?」
『気持ちって…?』
藤真健司の言っていることの意味が分からず困惑していると、急に距離を縮めて、顔が近づいてくる。
藤真健司の吐息が耳にかかる。
「俺。皐月さんのこと、好きなんだけど…」
好き…
その一言に私は、腰が砕けてへなへなと座り込んだ。
今…好きって言った…よね?
頭のなかが真っ白でどうしていいか分からない。
「お…おい!立てるか?」
そんな私に追い打ちをかけるように、藤真健司は膝をつくと、私をお姫様抱っこで抱え、近くのベンチへと連れていかれる。
何とか意識だけは保った状態で、私はされるがままにベンチに座らされた。
「大丈夫か?」
『…すっ…すいません…』
「悪い…急に言われて迷惑だったよな…」
申し訳なさそうに私から手を離す。
『違うっ…んです…えっと…あの…』
「何?」
顔を覗き込まれて、緊張で意識が遠のきそうになる。
でも、自分の気持ち伝えなくちゃ…
『私も……藤真さんのこと…す…き…』
そう言ったところで、私の緊張の糸が切れた。
「おい!大丈夫か?」
遠くで藤真さんの声が聞こえるが、藤真健司と両思いで、自分の気持ちを伝えられたということに安心して、私は意識を飛ばした。
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2021.4.28
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