Emulsification【森重寛】
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そして、月曜日。
昨日は、一日アルバイトに忙しく、彼のことを考えることも少なくて済んだ。
大学の門をくぐると、このキャンパスのどこかに彼がいるんだと考えるだけでドキドキが止まらない。
もしかしたら、どこかで会えるかもしれない…と彼のキャップは鞄に入っている。
しかし、広いキャンパスで学部もどこか分からない彼と偶然会うことなんて、そんな都合のいいことが起きるはずもなく、午前の講義が終わった。
昼休み、いつものメンバーで学食で昼食をとっていると、
「ねぇ、麻帆。何か今日元気なくない?なんかあった?」
『えっ…?そうかな…』
「うん。誰か探してるの?」
『実はさ…』
私は、飲み会の後のことを友人に話した。
さすがにキスの事は言えなくて、ただ、泊めたとだけ伝える。
「えぇ!それで、その彼に麻帆は恋したってこと?」
「この大学のバスケ部の誰かに!?」
『ちょ…声、大きいよ…私、恋しちゃったのかな?名前も知らないのに…』
「だって、また会いたいんでしょ?」
「気になって、いつもの元気がなくなるくらいなんでしょ?」
「ついに麻帆にも王子様が現れたか~」
『でも…名前も知らないし。一晩限りだから、忘れろって言われたし…』
「ねぇ…本当に何もされなかった?」
『な…何で?』
「私もなんかあったと思う。さすがに最後までしたってことはなさそうだけど、キスとか…」
『キス!!?』
「まさか、図星?」
私は、顔を真っ赤にして頷いた。
「そりゃ、ファーストキスの相手なら、忘れられないよね…」
「そうだ!バスケ部なら、学校のHPとかで名前乗ってるんじゃない?」
「名案!調べてみよ~」
友人はスマホを出して調べ始める。
『ちょ…待ってよ。心の準備が…』
私は、心臓が飛び出そうなほど、ドキドキしていた。
「あった!ユニフォームもらってるメンバーの写真と名前載ってるよ」
私は、覚悟を決めて、友人のスマホを覗き込んだ。
スクロールするまでもなくすぐに彼は見つかった。
『いた…この人…』
私が指さした人をタップし、拡大して、皆で覗き込む。
無愛想な表情、この髪型…間違いなく彼だ。
「森重寛…麻帆、本当にこの人なの?」
私は、彼の名前を知ることが出来た嬉しさと、さらに高鳴った胸のドキドキで声が出ず、頷くことで精一杯だ。
「麻帆、知らないかもしれないけど…めっちゃ有名人だよ。怪物・森重寛って…」
スポーツ観戦好きな友人が言った。
「怪物?」
「そう。この大学のバスケ部の間違いなくエースだよ。麻帆、またスゴイ人に恋しちゃったね…」
『どうしよう…』
「とりあえず、講義終わったら、バスケ部の練習見に行こ!そっから考えよ!」
『えっ?…行ってもいいのかな?』
「こっそり見に行くだけなら、大丈夫でしょ?」
そうして、私は彼…じゃなくて森重寛を見に行くことになった。
バスケ部の体育館は、思ったより見学者の数が多い。
それだけバスケ部の人気があるということなのだろう。
友人達とあまり目立たないところで、練習を見ることにした。
ちょうど試合形式の練習が始まるところで、一際大きい森重寛はすぐに分かった。
「めっちゃデカいね…」
友人たちも彼の存在にすぐに気が付き口々に感想を述べる。
試合が始まり、私は彼のプレーに目を奪われた。
誰よりも大きいだけでなく早くて強い。
素人目にも彼が、ものすごい選手であることが分かった。
森重寛がダンクを決め、友人たちが思わず、キャーっと声をあげた時、ちらっとこちらを見た彼と目が合った気がした。
点差をつけて、ミニゲームは森重寛がいるチームが勝利した。
その後は、休憩らしく、選手たちはそれぞれにドリンクを飲んだりし始める。
私たちも、そろそろ帰ろうかと相談していると、森重寛がこちらに向かって来るのが見えた。
「おい。おまえ…」
まさか彼が私に声をかけるとは思っておらず、思わずびくっと身体が跳ねる。
友人たちも驚いているが、気を使って、
「外で待ってるよ~」
と去っていってしまった。
『ちょ…待って…』
彼が目の前にいるのに、友人を追いかけるわけにもいかず、私は森重寛と向かい合う形になった。
「何でいる?忘れろって言っただろ」
『ごめんなさい。忘れられなくて…それに、これ…』
私は、震える声をふり絞り、鞄から彼の忘れ物のキャップを取り出した。
「お…すまん…」
そう言って、受け取り、彼は去ろうとしたので、私は慌てて声をかける。
『あの…森重寛…さん…』
「何だ?」
彼は、威圧的な雰囲気で聞いてくる。
私は、意を決して、伝えた。
『私、川野麻帆って言います。あの…お友達になってくれませんか?』
「いや、断る」
私は、絶望的な気持ちになって、項垂れた。
少しずつ距離を縮めて、あわよくば付き合えたら…そう思っていたのに。
帽子を出し終えた鞄をぎゅっと握って、涙をこらえる。
「俺の女になるなら、いいぜ」
『はい!?』
今、俺の女って言った?
頭が混乱して、顔が真っ赤になる。
「意味わかんねぇ?」
『えっと…その…俺の女というのは…つ…付き合うとかそういう意味でしょうか?』
しどろもどろになって、私は聞いた。
「くくっ。おもしれえ女」
彼は笑って、そう言った。
森重寛が…笑った。
私は、その笑顔に思わず見惚れてしまう。
私、彼の事、好きなんだとやっと確信が持てた。
彼ともっと一緒にいて、笑顔やいろんな表情をもっと見たい。
「んで、付き合ってくれんのか?」
『はっはい!!もちろんです!!』
私は、前のめりになって答えた。
「じゃ、練習終わるまでそこで待ってろ」
『はい!』
そうして、森重寛は練習に戻っていった。
私は今起こった夢のような展開に、へなへなとその場に座り込んだ。
彼と私。水と油みたいに混ざり合うことのない二人が交じり合うきっかけは、雷。
運命的な出会いをした彼と付き合うことになるなんて思わなかった。
彼と私が混ざって、これからどんな毎日になるんだろう。
期待に膨らむ気持ちで、練習に励む彼を見つめた。
***
2020.1.25.
こぼれ話→Emulsification【森重寛】
昨日は、一日アルバイトに忙しく、彼のことを考えることも少なくて済んだ。
大学の門をくぐると、このキャンパスのどこかに彼がいるんだと考えるだけでドキドキが止まらない。
もしかしたら、どこかで会えるかもしれない…と彼のキャップは鞄に入っている。
しかし、広いキャンパスで学部もどこか分からない彼と偶然会うことなんて、そんな都合のいいことが起きるはずもなく、午前の講義が終わった。
昼休み、いつものメンバーで学食で昼食をとっていると、
「ねぇ、麻帆。何か今日元気なくない?なんかあった?」
『えっ…?そうかな…』
「うん。誰か探してるの?」
『実はさ…』
私は、飲み会の後のことを友人に話した。
さすがにキスの事は言えなくて、ただ、泊めたとだけ伝える。
「えぇ!それで、その彼に麻帆は恋したってこと?」
「この大学のバスケ部の誰かに!?」
『ちょ…声、大きいよ…私、恋しちゃったのかな?名前も知らないのに…』
「だって、また会いたいんでしょ?」
「気になって、いつもの元気がなくなるくらいなんでしょ?」
「ついに麻帆にも王子様が現れたか~」
『でも…名前も知らないし。一晩限りだから、忘れろって言われたし…』
「ねぇ…本当に何もされなかった?」
『な…何で?』
「私もなんかあったと思う。さすがに最後までしたってことはなさそうだけど、キスとか…」
『キス!!?』
「まさか、図星?」
私は、顔を真っ赤にして頷いた。
「そりゃ、ファーストキスの相手なら、忘れられないよね…」
「そうだ!バスケ部なら、学校のHPとかで名前乗ってるんじゃない?」
「名案!調べてみよ~」
友人はスマホを出して調べ始める。
『ちょ…待ってよ。心の準備が…』
私は、心臓が飛び出そうなほど、ドキドキしていた。
「あった!ユニフォームもらってるメンバーの写真と名前載ってるよ」
私は、覚悟を決めて、友人のスマホを覗き込んだ。
スクロールするまでもなくすぐに彼は見つかった。
『いた…この人…』
私が指さした人をタップし、拡大して、皆で覗き込む。
無愛想な表情、この髪型…間違いなく彼だ。
「森重寛…麻帆、本当にこの人なの?」
私は、彼の名前を知ることが出来た嬉しさと、さらに高鳴った胸のドキドキで声が出ず、頷くことで精一杯だ。
「麻帆、知らないかもしれないけど…めっちゃ有名人だよ。怪物・森重寛って…」
スポーツ観戦好きな友人が言った。
「怪物?」
「そう。この大学のバスケ部の間違いなくエースだよ。麻帆、またスゴイ人に恋しちゃったね…」
『どうしよう…』
「とりあえず、講義終わったら、バスケ部の練習見に行こ!そっから考えよ!」
『えっ?…行ってもいいのかな?』
「こっそり見に行くだけなら、大丈夫でしょ?」
そうして、私は彼…じゃなくて森重寛を見に行くことになった。
バスケ部の体育館は、思ったより見学者の数が多い。
それだけバスケ部の人気があるということなのだろう。
友人達とあまり目立たないところで、練習を見ることにした。
ちょうど試合形式の練習が始まるところで、一際大きい森重寛はすぐに分かった。
「めっちゃデカいね…」
友人たちも彼の存在にすぐに気が付き口々に感想を述べる。
試合が始まり、私は彼のプレーに目を奪われた。
誰よりも大きいだけでなく早くて強い。
素人目にも彼が、ものすごい選手であることが分かった。
森重寛がダンクを決め、友人たちが思わず、キャーっと声をあげた時、ちらっとこちらを見た彼と目が合った気がした。
点差をつけて、ミニゲームは森重寛がいるチームが勝利した。
その後は、休憩らしく、選手たちはそれぞれにドリンクを飲んだりし始める。
私たちも、そろそろ帰ろうかと相談していると、森重寛がこちらに向かって来るのが見えた。
「おい。おまえ…」
まさか彼が私に声をかけるとは思っておらず、思わずびくっと身体が跳ねる。
友人たちも驚いているが、気を使って、
「外で待ってるよ~」
と去っていってしまった。
『ちょ…待って…』
彼が目の前にいるのに、友人を追いかけるわけにもいかず、私は森重寛と向かい合う形になった。
「何でいる?忘れろって言っただろ」
『ごめんなさい。忘れられなくて…それに、これ…』
私は、震える声をふり絞り、鞄から彼の忘れ物のキャップを取り出した。
「お…すまん…」
そう言って、受け取り、彼は去ろうとしたので、私は慌てて声をかける。
『あの…森重寛…さん…』
「何だ?」
彼は、威圧的な雰囲気で聞いてくる。
私は、意を決して、伝えた。
『私、川野麻帆って言います。あの…お友達になってくれませんか?』
「いや、断る」
私は、絶望的な気持ちになって、項垂れた。
少しずつ距離を縮めて、あわよくば付き合えたら…そう思っていたのに。
帽子を出し終えた鞄をぎゅっと握って、涙をこらえる。
「俺の女になるなら、いいぜ」
『はい!?』
今、俺の女って言った?
頭が混乱して、顔が真っ赤になる。
「意味わかんねぇ?」
『えっと…その…俺の女というのは…つ…付き合うとかそういう意味でしょうか?』
しどろもどろになって、私は聞いた。
「くくっ。おもしれえ女」
彼は笑って、そう言った。
森重寛が…笑った。
私は、その笑顔に思わず見惚れてしまう。
私、彼の事、好きなんだとやっと確信が持てた。
彼ともっと一緒にいて、笑顔やいろんな表情をもっと見たい。
「んで、付き合ってくれんのか?」
『はっはい!!もちろんです!!』
私は、前のめりになって答えた。
「じゃ、練習終わるまでそこで待ってろ」
『はい!』
そうして、森重寛は練習に戻っていった。
私は今起こった夢のような展開に、へなへなとその場に座り込んだ。
彼と私。水と油みたいに混ざり合うことのない二人が交じり合うきっかけは、雷。
運命的な出会いをした彼と付き合うことになるなんて思わなかった。
彼と私が混ざって、これからどんな毎日になるんだろう。
期待に膨らむ気持ちで、練習に励む彼を見つめた。
***
2020.1.25.
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