Emulsification【森重寛】
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私は、ごくごく平凡な大学生。
大学に通って、サークルやアルバイトをして、一般的な20歳の女の子達と同じ様な生活をしている。
一人暮らしでちょっと寂しいと思うこともあるけれど、仲のいい友人もいて、それなりに充実した毎日だ。
今日は、安くてちょっとこじゃれた居酒屋で女子会だ。
『いい人、いないかなぁ…』
「麻帆、それ、何回目?何人か紹介してるし、理学部なんだから、男いっぱいいるじゃん。いい加減妥協して、付き合ってみたら?」
『う~ん…そうなんだけど、決め手に欠けるんだよね…』
「そんなこと言ってると、いつまでたっても処女のままだよ!」
『わかってるって…結構気にしてるんだからさ…』
「まあまあ。恋愛に奥手なのが、麻帆の可愛いとこでもあるんだけどね」
「そうそう。その気になれば、いつでも彼氏できると思うよ!」
『そうかなぁ…』
「いつも彼氏彼氏言ってるけどさ、実際付き合うとなると、まぁめんどくさいこともあるから、恋に恋してる麻帆が正直羨ましいよ…」
『彼氏持ちだから、そんなこと言えるんだよ…私もそんな台詞、言ってみたい』
「まぁまぁ、何飲む?」
『ビール!』
明日はバイトも休みだから朝まで飲むぞ!とお酒が進む。
友人の楽しそうな恋人同士の話を聞きながら、自分の恋愛に想いを馳せてみるが、いまいちピンとこないのが正直なところ。
自分が男の子を手をつないで歩いているところすら想像できない。
みんな付き合うきっかけは様々で、幼馴染だったり、合コンだったり、同じクラス・バイトだったり…出会いって色々あるけれど、私はどうなんだろ?
水と油が乳化するみたいに、男と女が出会って恋に落ちるには運命的な何かが必要なんだと思うけれど、今のところ私にはそんな経験はない。
白馬の王子様に憧れているわけでもないし、運命的な出会いなんてあるのかな…
「ごめんっ!彼氏がバイト終わったって言うから帰る!」
「私も…彼の家行こうかな…」
そんなこんなで、終電も間近に迫った時間にお開きとなった。
『朝まで飲むつもりだったのに…』
私は、なんだか肩透かしを食らったような気持ちで店を出た。
急に雲行きが怪しくなって、雨がぽつぽつと降り始める。
「駅まで持つかな?」
皆で急ぎ足で駅へと向かった。
友人たちと別れて、学校近くの一人暮らしの学生マンションへと帰路を急いだ。
地下鉄から降りて、改札を出ると土砂降りの雨で、おまけに雷まで鳴っている。
私、雷苦手なんだよな…
駅から家までは数分で着くので、コンビニなんかで雨宿りしながら帰れば少しくらい濡れても平気だろうと、意を決して土砂降りの中に飛び出した。
ドーン!
という雷の轟音が響くと同時に私は何かにぶつかった。
「ぎゃぁ!」
私は、思わずぶつかった何かにしがみついた。
大くて温かく、電柱にしては太いし、ぬいぐるみにしても大きすぎる。
壁にぶつかったのだとしたら、こんなに温かいはずはないし…
まさかの可能性を疑い、それを確認しようと私は、何かの布切れをつかんだまま、一歩後ずさり、下から順に確認するように眺めた。
私の考えは当たっていたようで、二本の靴を履いた足。
私がつかんでいるTシャツ。
…そして、見上げた先には顔…
キャップを目深まで被っていて表情はわからないが、私がぶつかったのは、大柄な男の人だったのだ。
『ご…ごめんなさ…』
ゴロゴロ…ドォーン!
ごめんなさいの声は、再び雷鳴に書き消された。
ずぶぬれになっていても、この大嫌いな音に耐え切れず、
『ぎゃー!』
っと、再びその男の人にしがみついてしまった。
「おい」
そう低い声が聞こえる。
『ひゃあい!』
びくっとした私は、変な声をあげて、返事をした。
「びしょ濡れになった…」
そう言って、再び駅の改札まで連れてこられた。
『本当にごめんなさい。雷…未だに苦手で…』
「いや…」
再びピカッと光る雷に私は、身体を縮こまらせた。
「お…終電…」
そう呟いた彼の声で改札の方を見ると、この駅の最終電車が終わり、電光掲示板の明かりが消えるのが見えた。
終電から降りてきた人達が私たちの横を通りすぎ、夕立のような豪雨に呆然としている。
ある人はタクシーの列に並び、ある人は駅ナカのコンビニで傘を購入している。
そして、私たちは…
『ごめんなさい。もしかして…終電、逃しちゃいました?』
「…別に」
気まずい気持ちを抱える私とは逆に、大柄の彼はくわっと大きなあくびをして、あまり濡れていない柱のしたに腰を下ろして目をつむった。
『あの…もしかして…ここで寝るつもりじゃ…』
「んあ?悪いか?」
『いや…濡れてるし、風邪引きますよ?』
「仕方ねぇ…」
そう言って、バッグからジャージを取り出してTシャツの上から羽織って、また目をつむった。
ジャージには見覚えのある大学名と”BASKETBALL”の文字。
あ…この人、同じ大学なんだ。
うちの大学、かなりバスケ強いんじゃなかったっけ?
そんなことを思い出しながら、目の前で寝ようとしている大男を見下ろした。
私のせいで風邪でもひかれたら困るし、この体格だから、きっとバスケ部のレギュラーメンバーかもしれない。
また、雷が光り、雷鳴が響いた。
私は、一刻も早く家に帰りたいのと、この人をほっとけないのとで、
『あの…風邪でも引かれたら困るので、家、来ませんか?すぐそこなので…』
そう声をかけた。
大男は、薄目を開けて、気怠そうに応えた。
「家?あんたの?」
『はい…シャワーとお客さん用の布団もあるので、ここよりは快適かと…』
「女の一人暮らしだろ?」
遠慮しているのだろうか?
まぁ、見ず知らずの人の家に行くのも気が引けるよな…
『でも…私、あなたと同じ大学で…バスケ部なんですよね?強豪バスケ部のエースかもしれない人が、風邪でも引いたら、困ります!』
少し語気を強めて、伝えた。
「いいのか?男…に……」
また、ドシャーン!と大きな雷の音が響く。
最後の言葉は、雷鳴に書き消され、良く聞こえなかったが、
『遠慮なさらず、どうぞ!雷怖いので、早く行きましょう!』
そう急かした。
大学に通って、サークルやアルバイトをして、一般的な20歳の女の子達と同じ様な生活をしている。
一人暮らしでちょっと寂しいと思うこともあるけれど、仲のいい友人もいて、それなりに充実した毎日だ。
今日は、安くてちょっとこじゃれた居酒屋で女子会だ。
『いい人、いないかなぁ…』
「麻帆、それ、何回目?何人か紹介してるし、理学部なんだから、男いっぱいいるじゃん。いい加減妥協して、付き合ってみたら?」
『う~ん…そうなんだけど、決め手に欠けるんだよね…』
「そんなこと言ってると、いつまでたっても処女のままだよ!」
『わかってるって…結構気にしてるんだからさ…』
「まあまあ。恋愛に奥手なのが、麻帆の可愛いとこでもあるんだけどね」
「そうそう。その気になれば、いつでも彼氏できると思うよ!」
『そうかなぁ…』
「いつも彼氏彼氏言ってるけどさ、実際付き合うとなると、まぁめんどくさいこともあるから、恋に恋してる麻帆が正直羨ましいよ…」
『彼氏持ちだから、そんなこと言えるんだよ…私もそんな台詞、言ってみたい』
「まぁまぁ、何飲む?」
『ビール!』
明日はバイトも休みだから朝まで飲むぞ!とお酒が進む。
友人の楽しそうな恋人同士の話を聞きながら、自分の恋愛に想いを馳せてみるが、いまいちピンとこないのが正直なところ。
自分が男の子を手をつないで歩いているところすら想像できない。
みんな付き合うきっかけは様々で、幼馴染だったり、合コンだったり、同じクラス・バイトだったり…出会いって色々あるけれど、私はどうなんだろ?
水と油が乳化するみたいに、男と女が出会って恋に落ちるには運命的な何かが必要なんだと思うけれど、今のところ私にはそんな経験はない。
白馬の王子様に憧れているわけでもないし、運命的な出会いなんてあるのかな…
「ごめんっ!彼氏がバイト終わったって言うから帰る!」
「私も…彼の家行こうかな…」
そんなこんなで、終電も間近に迫った時間にお開きとなった。
『朝まで飲むつもりだったのに…』
私は、なんだか肩透かしを食らったような気持ちで店を出た。
急に雲行きが怪しくなって、雨がぽつぽつと降り始める。
「駅まで持つかな?」
皆で急ぎ足で駅へと向かった。
友人たちと別れて、学校近くの一人暮らしの学生マンションへと帰路を急いだ。
地下鉄から降りて、改札を出ると土砂降りの雨で、おまけに雷まで鳴っている。
私、雷苦手なんだよな…
駅から家までは数分で着くので、コンビニなんかで雨宿りしながら帰れば少しくらい濡れても平気だろうと、意を決して土砂降りの中に飛び出した。
ドーン!
という雷の轟音が響くと同時に私は何かにぶつかった。
「ぎゃぁ!」
私は、思わずぶつかった何かにしがみついた。
大くて温かく、電柱にしては太いし、ぬいぐるみにしても大きすぎる。
壁にぶつかったのだとしたら、こんなに温かいはずはないし…
まさかの可能性を疑い、それを確認しようと私は、何かの布切れをつかんだまま、一歩後ずさり、下から順に確認するように眺めた。
私の考えは当たっていたようで、二本の靴を履いた足。
私がつかんでいるTシャツ。
…そして、見上げた先には顔…
キャップを目深まで被っていて表情はわからないが、私がぶつかったのは、大柄な男の人だったのだ。
『ご…ごめんなさ…』
ゴロゴロ…ドォーン!
ごめんなさいの声は、再び雷鳴に書き消された。
ずぶぬれになっていても、この大嫌いな音に耐え切れず、
『ぎゃー!』
っと、再びその男の人にしがみついてしまった。
「おい」
そう低い声が聞こえる。
『ひゃあい!』
びくっとした私は、変な声をあげて、返事をした。
「びしょ濡れになった…」
そう言って、再び駅の改札まで連れてこられた。
『本当にごめんなさい。雷…未だに苦手で…』
「いや…」
再びピカッと光る雷に私は、身体を縮こまらせた。
「お…終電…」
そう呟いた彼の声で改札の方を見ると、この駅の最終電車が終わり、電光掲示板の明かりが消えるのが見えた。
終電から降りてきた人達が私たちの横を通りすぎ、夕立のような豪雨に呆然としている。
ある人はタクシーの列に並び、ある人は駅ナカのコンビニで傘を購入している。
そして、私たちは…
『ごめんなさい。もしかして…終電、逃しちゃいました?』
「…別に」
気まずい気持ちを抱える私とは逆に、大柄の彼はくわっと大きなあくびをして、あまり濡れていない柱のしたに腰を下ろして目をつむった。
『あの…もしかして…ここで寝るつもりじゃ…』
「んあ?悪いか?」
『いや…濡れてるし、風邪引きますよ?』
「仕方ねぇ…」
そう言って、バッグからジャージを取り出してTシャツの上から羽織って、また目をつむった。
ジャージには見覚えのある大学名と”BASKETBALL”の文字。
あ…この人、同じ大学なんだ。
うちの大学、かなりバスケ強いんじゃなかったっけ?
そんなことを思い出しながら、目の前で寝ようとしている大男を見下ろした。
私のせいで風邪でもひかれたら困るし、この体格だから、きっとバスケ部のレギュラーメンバーかもしれない。
また、雷が光り、雷鳴が響いた。
私は、一刻も早く家に帰りたいのと、この人をほっとけないのとで、
『あの…風邪でも引かれたら困るので、家、来ませんか?すぐそこなので…』
そう声をかけた。
大男は、薄目を開けて、気怠そうに応えた。
「家?あんたの?」
『はい…シャワーとお客さん用の布団もあるので、ここよりは快適かと…』
「女の一人暮らしだろ?」
遠慮しているのだろうか?
まぁ、見ず知らずの人の家に行くのも気が引けるよな…
『でも…私、あなたと同じ大学で…バスケ部なんですよね?強豪バスケ部のエースかもしれない人が、風邪でも引いたら、困ります!』
少し語気を強めて、伝えた。
「いいのか?男…に……」
また、ドシャーン!と大きな雷の音が響く。
最後の言葉は、雷鳴に書き消され、良く聞こえなかったが、
『遠慮なさらず、どうぞ!雷怖いので、早く行きましょう!』
そう急かした。
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