Candy【三井寿】
Side.如月友
三井寿君。
高校2年生に進級して、最初に隣の席になった男の子。
いかにもな不良だったけど、彼に飴ちゃんと共に声をかけることにした。
ちょっと悪い感じの男の子に憧れる気持ちと、単純に隣の席だから、顔を覚えてもらった方がいいかなって軽い気持ちで、声をかけてみた。
無視されて元々だ。
彼は、少し驚いた後、受け取った飴を見つめていた。
素直に受け取ってくれるんだと思っていると、彼の口角が少し上がった気がして、
『三井君って、笑えるじゃん。飴ちゃん一個で笑ってくれるなんてね』
と、つい言ってしまった。
三井君は、不機嫌そうな顔をしたので、ヤバいと思って友達のところへ逃げた。
私の三井君への第一印象は、意外にいい人だった。
不良が飴やチョコを素直に受け取ってくれるのが面白くて、私はタイミングを見計らっては、三井君にお菓子をあげた。
いつもぶきらっぽうだけど、絶対に断らない三井君の事、ただの同級生から友達みたいに感じるようになった。
そうやって、調子に乗ってたのがいけなかったみたいだ。
夏休み明け、お土産のクッキーを「さんきゅ」と言って、受け取ってくれた三井君との距離を詰めすぎた。
「おまえ、俺の事、怖くねーのかよ?」
って聞いてきた三井君がなんだかおかしくて、
『ははっ!近寄るなってこと?三井君って本当は悪い人じゃないと思うんだよね』
と、言ってしまったとたんに、彼は不機嫌になって、足早に教室に行ってしまった。
謝った時には、もう遅かった。
三井君の事、私が変なことを言って怒らせてしまった。
それ以降、中々、お菓子を渡すきっかけがつかめないまま、学園祭シーズンになった。
私は、みんなでワイワイするのが好きで、去年に引き続き、実行委員を引き受けた。
クラスの出し物は、担任の先生が得意なこともあり、事前に作れるモザイクアート。
各々写真を撮って、それを使って大きな絵を作る。
近頃、来たり来なかったりの三井君の写真だけがそろわなくて、
「友ちゃん、三井君と喋れるでしょ?お願い!」
と、三井君の写真を撮る大役を仰せつかった。
ドキドキしながら、頼んでみれば、案外、あっさり撮らせてくれた。
ほっとしたと同時に、三井君に学園祭を案内しろといわれ、驚いた。
飴ちゃんもまた欲しいなんて、三井君、案外高校生活楽しみたいんじゃないかな~なんて、また調子のいいことを考えてしまった。
ダメダメ、せっかくまた話せる関係になったんだから、変なこと言わないようにしなくちゃ。
三井君の写真は大好評で、不良にも関わらず隠れファンが多いらしい彼の写真は、学園祭が終わるころには盗られて、モザイクアートが無残なことになってしまった。
クラスメイトも、あの三井君の写真が欲しいと言われて、何枚も印刷して配ったらしい。
まぁかくいう私も、記念に一枚もらって手帳に挟んだ。
三井君は、学園祭で姿を見ることはなかったけれど、またお菓子を渡して一言二言喋る、同級生以上友達未満みたいな関係が始まった。
旅行のお土産やバレンタインデーも他の子と同じように三井君にも渡したけど、断られることはなかった。
友達だって言っていい関係だよね?
私はまたそんな調子のいいことを考えていた。
卒業式が終わって、もうすぐ終業式だという頃。
突然、三井君は学校に来なくなった。
噂では、喧嘩で大けがをしたということだった。
連絡先も知らないし、仲のいい友達というわけでもない私は、お見舞いに行くこともできず、早く良くなることを祈った。
3年生になって、また私は三井君と同じクラスになった。
それでも、三井君は学校に来なかった。
ぽつんと空いた机。
友達にお菓子をあげるときも、つい彼を探してしまう自分に気付いた。
そんな彼が、久しぶりに学校に来たという噂を聞いた。
しかも、バスケ部のいる体育館でまた喧嘩をしているという。
なんだか心配になって、授業が終わると、体育館へと向かった。
野次馬や先生達で、中の様子はよく分からないが、時折大きな音が響く。
先生達は、「帰れ!」と生徒達を追い出す。
私は、やっぱり三井君のことが心配で、帰り支度をする振りをしながら、窓の外に見える体育館を見ていた。
いい加減帰らなくてはと教室を出る前に外を見ると、ふらふらと体育館から出てくる三井君が見えた。
遠目にもかなりの怪我をしていることが分かる。
私は、荷物をもって、教室を飛び出した。
校門を出たくらいのところで、三井君に追いついた。
名前を呼べば、驚いた表情の三井君が振り向いた。
何か渡さなくちゃ!
飴、絆創膏…
違う…
タオルを差し出した。
「如月、好きだ!」
タオルを受け取ると同時に、三井君はそうはっきりと言った。
『えっ?ひゃい!?』
いきなり言われた言葉に、私は変な声を出してしまう。
そんな三井君も、顔を真っ赤にして、慌てた様子で、
「いや…その…こんな時に、俺、なんてこと言ってんだ。今のは、忘れてくれ!…いや、忘れなくてもいいんだけどよ…こんな恰好で悪ぃ。じゃ、また!」
と言って、去っていった。
心配だから着いていきたかったけど、彼はそんなこと望んでないと思い、
『三井君、学校で待ってるね!』
そう、声をかけた。
胸のドキドキが止まらない。
三井君が私を好き?
私は、三井君の後ろ姿が見えなくなるまでそこに立ち尽くしていた。
次の日。
少し緊張して学校へ向かったが、三井君の姿はなかった。
あれだけの怪我をしたのだから、さすがに病院に行ってるかな。
バスケ部襲撃事件は、何人かが謹慎処分になったけれど、その中に三井君は入っていなかった。
何があったんだろ…
明日からはゴールデンウィーク。
三井君と会えるのは、一週間後。
あんなことを言われた後で、どんな顔して会えばいいのか分からない私は、少しほっとしていた。
私は、三井君のことを友達だと思うこともダメだと思っていた。
なのに、彼に好きと言われて、素直に嬉しいという気持ちが沸き起こる。
私も…好き…なのかな。
私は、高い身長がコンプレックスで、男の子を好きになっても私なんか…って思ってきた。
でけぇ女ってからかわれたり、生意気だって言われたこともある。
三井君は、どう思ってるのかな。
彼は背が高いから、私が並んで歩いてもいいかな。
もんもんとした気持ちのまま、ゴールデンウィークが明けた。
三井寿君。
高校2年生に進級して、最初に隣の席になった男の子。
いかにもな不良だったけど、彼に飴ちゃんと共に声をかけることにした。
ちょっと悪い感じの男の子に憧れる気持ちと、単純に隣の席だから、顔を覚えてもらった方がいいかなって軽い気持ちで、声をかけてみた。
無視されて元々だ。
彼は、少し驚いた後、受け取った飴を見つめていた。
素直に受け取ってくれるんだと思っていると、彼の口角が少し上がった気がして、
『三井君って、笑えるじゃん。飴ちゃん一個で笑ってくれるなんてね』
と、つい言ってしまった。
三井君は、不機嫌そうな顔をしたので、ヤバいと思って友達のところへ逃げた。
私の三井君への第一印象は、意外にいい人だった。
不良が飴やチョコを素直に受け取ってくれるのが面白くて、私はタイミングを見計らっては、三井君にお菓子をあげた。
いつもぶきらっぽうだけど、絶対に断らない三井君の事、ただの同級生から友達みたいに感じるようになった。
そうやって、調子に乗ってたのがいけなかったみたいだ。
夏休み明け、お土産のクッキーを「さんきゅ」と言って、受け取ってくれた三井君との距離を詰めすぎた。
「おまえ、俺の事、怖くねーのかよ?」
って聞いてきた三井君がなんだかおかしくて、
『ははっ!近寄るなってこと?三井君って本当は悪い人じゃないと思うんだよね』
と、言ってしまったとたんに、彼は不機嫌になって、足早に教室に行ってしまった。
謝った時には、もう遅かった。
三井君の事、私が変なことを言って怒らせてしまった。
それ以降、中々、お菓子を渡すきっかけがつかめないまま、学園祭シーズンになった。
私は、みんなでワイワイするのが好きで、去年に引き続き、実行委員を引き受けた。
クラスの出し物は、担任の先生が得意なこともあり、事前に作れるモザイクアート。
各々写真を撮って、それを使って大きな絵を作る。
近頃、来たり来なかったりの三井君の写真だけがそろわなくて、
「友ちゃん、三井君と喋れるでしょ?お願い!」
と、三井君の写真を撮る大役を仰せつかった。
ドキドキしながら、頼んでみれば、案外、あっさり撮らせてくれた。
ほっとしたと同時に、三井君に学園祭を案内しろといわれ、驚いた。
飴ちゃんもまた欲しいなんて、三井君、案外高校生活楽しみたいんじゃないかな~なんて、また調子のいいことを考えてしまった。
ダメダメ、せっかくまた話せる関係になったんだから、変なこと言わないようにしなくちゃ。
三井君の写真は大好評で、不良にも関わらず隠れファンが多いらしい彼の写真は、学園祭が終わるころには盗られて、モザイクアートが無残なことになってしまった。
クラスメイトも、あの三井君の写真が欲しいと言われて、何枚も印刷して配ったらしい。
まぁかくいう私も、記念に一枚もらって手帳に挟んだ。
三井君は、学園祭で姿を見ることはなかったけれど、またお菓子を渡して一言二言喋る、同級生以上友達未満みたいな関係が始まった。
旅行のお土産やバレンタインデーも他の子と同じように三井君にも渡したけど、断られることはなかった。
友達だって言っていい関係だよね?
私はまたそんな調子のいいことを考えていた。
卒業式が終わって、もうすぐ終業式だという頃。
突然、三井君は学校に来なくなった。
噂では、喧嘩で大けがをしたということだった。
連絡先も知らないし、仲のいい友達というわけでもない私は、お見舞いに行くこともできず、早く良くなることを祈った。
3年生になって、また私は三井君と同じクラスになった。
それでも、三井君は学校に来なかった。
ぽつんと空いた机。
友達にお菓子をあげるときも、つい彼を探してしまう自分に気付いた。
そんな彼が、久しぶりに学校に来たという噂を聞いた。
しかも、バスケ部のいる体育館でまた喧嘩をしているという。
なんだか心配になって、授業が終わると、体育館へと向かった。
野次馬や先生達で、中の様子はよく分からないが、時折大きな音が響く。
先生達は、「帰れ!」と生徒達を追い出す。
私は、やっぱり三井君のことが心配で、帰り支度をする振りをしながら、窓の外に見える体育館を見ていた。
いい加減帰らなくてはと教室を出る前に外を見ると、ふらふらと体育館から出てくる三井君が見えた。
遠目にもかなりの怪我をしていることが分かる。
私は、荷物をもって、教室を飛び出した。
校門を出たくらいのところで、三井君に追いついた。
名前を呼べば、驚いた表情の三井君が振り向いた。
何か渡さなくちゃ!
飴、絆創膏…
違う…
タオルを差し出した。
「如月、好きだ!」
タオルを受け取ると同時に、三井君はそうはっきりと言った。
『えっ?ひゃい!?』
いきなり言われた言葉に、私は変な声を出してしまう。
そんな三井君も、顔を真っ赤にして、慌てた様子で、
「いや…その…こんな時に、俺、なんてこと言ってんだ。今のは、忘れてくれ!…いや、忘れなくてもいいんだけどよ…こんな恰好で悪ぃ。じゃ、また!」
と言って、去っていった。
心配だから着いていきたかったけど、彼はそんなこと望んでないと思い、
『三井君、学校で待ってるね!』
そう、声をかけた。
胸のドキドキが止まらない。
三井君が私を好き?
私は、三井君の後ろ姿が見えなくなるまでそこに立ち尽くしていた。
次の日。
少し緊張して学校へ向かったが、三井君の姿はなかった。
あれだけの怪我をしたのだから、さすがに病院に行ってるかな。
バスケ部襲撃事件は、何人かが謹慎処分になったけれど、その中に三井君は入っていなかった。
何があったんだろ…
明日からはゴールデンウィーク。
三井君と会えるのは、一週間後。
あんなことを言われた後で、どんな顔して会えばいいのか分からない私は、少しほっとしていた。
私は、三井君のことを友達だと思うこともダメだと思っていた。
なのに、彼に好きと言われて、素直に嬉しいという気持ちが沸き起こる。
私も…好き…なのかな。
私は、高い身長がコンプレックスで、男の子を好きになっても私なんか…って思ってきた。
でけぇ女ってからかわれたり、生意気だって言われたこともある。
三井君は、どう思ってるのかな。
彼は背が高いから、私が並んで歩いてもいいかな。
もんもんとした気持ちのまま、ゴールデンウィークが明けた。