Unusual Notes【野辺将広】
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4時間目、退屈な古典の授業。
隣の席の野辺君の視線を妙に感じる。
いつもと違って、上手く言えないんだけど…あんまり好意的じゃない感じのやつ。
1、2時間目はそんなに気にならなかったし、前の時間は体育で別々だったから分からないし…
4時間目だし、もしかしてお腹空いてる?
いや、いつもは「お腹空いたな」ってこっそり笑って教えてくれるから、違うだろうか…
あ、もしかして、汗臭い!?
いや、さっき制汗剤したから、そんなはず無いんだけど。
胸元をパタパタしてみるけれど、制汗剤の匂いだけで、汗臭さは自分では分からない。
しいて言うなら、制汗剤がいつもと違うことくらいだ。
私の好きな柑橘系じゃないメンズ用。
ちょっと男くさいというかなんというか違和感のある匂いであることは確かだ。
ちょうど昨日無くなって、買い置きのスプレーボトルをよく確認しないで、弟のと間違えて持ってきてしまったのだ。
しかもシューっとプッシュしてからいつもと違う匂いで気付いたのだから、仕方がない。
でも、そんなにいぶかしげに何度も見ること?
目があったら気まずそうに逸らすし。
うーん、ちょっと変だ。
あ、お弁当忘れちゃったことを思い出してソワソワしてる…?
うーん、よくわかんない。
もやもやしてるのは苦手だから、ノートの切れ端に
【なんかあった?】
って書いて、野辺君に見せてみた。
野辺君は、はっとしたように目を大きく開けて、少し悩んでから、
【なんでもない】
そう一言だけ書いて返してきた。
仲良くなってきて、クラスメイトから友達になれたと思っていたのに、こんな風にそっけなくされるとちょっとへこむ。
なんか悪いことしたのかな…
暗い気持ちのまま、古典の先生の方をぼーっと見つめた。
***
隣の席のまちゃはいいやつだ。
俺が授業中に居眠りしてると、寝かしておいてくれつつも、指されそうになると起こしてくれるし、バスケの試合で公休の日のノートをわざわざ取っておいてくれたりする。
気軽に話せる数少ない…いや唯一の女友達だ。
いつも体育の授業の終わりに彼女から香るオレンジみたいな香り。
香水じゃなくて制汗剤だっけか?結構好きなんだよな。
こんなこと言ったら、変態扱いされるから本人はもちろん、バスケ部のやつらにも言う訳が無い。
だけど、今日はいつもと違う匂いがする。
しかも前に沢北が、「たまには使った方がいいっすよ」って貸してくれたやつと似ている気がする。
メンズ用と書いてあったような……
ということは、まちゃはメンズ用の制汗剤を使ったということか…?
クラスの男から借りたりしたのだろうか…?
まさか、沢北のを借りたなんてことは無いだろうか……?
考えれば考えるほど、気になって仕方がない。
けれど、今は授業中。
横目でちらっと見たら、目が合ってしまい、不自然に目をそらすことになってしまった。
挙動不審だと思われたに違いない。
そしてそわそわと落ち着かないまま授業を聞いていると、まちゃは【なんかあった?】メモを渡してきた。
完全に怪しまれている。
体育後にしっかり拭いたはずなのに、背中は冷や汗でびしょびしょだ。
すぐに返さなくてはと悩んでみても、良い返信が思い浮かぶわけもなく、書いた返信は【なんでもない】…なんか全然ダメだ。
それ以上、相手からはアクションもなく、気まずいまま授業は進んでいった。
チャイムが鳴って、授業が終わる。
うーん、実に気まずい。
いつもだったら、腹減った~とかちょっとした会話をするんだけれど、今日は何を話そうか…?
『野辺君?』
「んが?」
『んが?』
くすくすと笑われて、ちょっと空気が緩む。
このまま聞いてしまった方が、気が楽だ。
万一、彼氏のだと言われたら、身を引こう…
「あのよ……」
『ん?』
「匂いなんだけど…」
『え!?汗臭い!?』
まちゃは慌てて胸元をパタパタしている。
やっぱり香ってくるのはいつもと違う制汗剤の匂い。
「いや、違くて……」
『ん?もしかして…これ?』
まちゃは、カバンから黒いボトルを取り出した。
『実はさ、今日弟のやつをもってきちゃったんだよね』
「おとうと…?」
『そう、色も違うのに弟の買い置きの制汗剤をカバンに入れてたの』
「な、なんだよ…」
俺は、脱力して机に突っ伏した。
『え?なんで?』
「沢北に借りたのかと…」
『なんでバスケ部の沢北君が出てくるの?』
「た、確かにそうか……」
『もしかして、この匂いが気になって授業に集中出来なかった?ゴメンね』
「いや、そんなことは…」
俺の方があほすぎる。
ほっとして、急にお腹がぐぅーっと大きな音を立てる。
『ははっ、お腹空いたね!お弁当忘れたんだっけ?ちょっとだけ分けてあげよっか?』
「お、おう」
お弁当のおにぎりを一つ恵んでもらって、さっきまでのソワソワが嘘のように俺って幸せ者?なんて気持ちまで湧き上がってくる。
この時初めて、まちゃのことが好きなのかもって思ったのだが、ここから恋人になるまでには、まだまだ長い道のりがあることをこの時の俺はまだ知らないのだ。
***
2026.4.24.
Thank you for the request!!
こぼれ話→Unusual Notes【野辺将広】
隣の席の野辺君の視線を妙に感じる。
いつもと違って、上手く言えないんだけど…あんまり好意的じゃない感じのやつ。
1、2時間目はそんなに気にならなかったし、前の時間は体育で別々だったから分からないし…
4時間目だし、もしかしてお腹空いてる?
いや、いつもは「お腹空いたな」ってこっそり笑って教えてくれるから、違うだろうか…
あ、もしかして、汗臭い!?
いや、さっき制汗剤したから、そんなはず無いんだけど。
胸元をパタパタしてみるけれど、制汗剤の匂いだけで、汗臭さは自分では分からない。
しいて言うなら、制汗剤がいつもと違うことくらいだ。
私の好きな柑橘系じゃないメンズ用。
ちょっと男くさいというかなんというか違和感のある匂いであることは確かだ。
ちょうど昨日無くなって、買い置きのスプレーボトルをよく確認しないで、弟のと間違えて持ってきてしまったのだ。
しかもシューっとプッシュしてからいつもと違う匂いで気付いたのだから、仕方がない。
でも、そんなにいぶかしげに何度も見ること?
目があったら気まずそうに逸らすし。
うーん、ちょっと変だ。
あ、お弁当忘れちゃったことを思い出してソワソワしてる…?
うーん、よくわかんない。
もやもやしてるのは苦手だから、ノートの切れ端に
【なんかあった?】
って書いて、野辺君に見せてみた。
野辺君は、はっとしたように目を大きく開けて、少し悩んでから、
【なんでもない】
そう一言だけ書いて返してきた。
仲良くなってきて、クラスメイトから友達になれたと思っていたのに、こんな風にそっけなくされるとちょっとへこむ。
なんか悪いことしたのかな…
暗い気持ちのまま、古典の先生の方をぼーっと見つめた。
***
隣の席のまちゃはいいやつだ。
俺が授業中に居眠りしてると、寝かしておいてくれつつも、指されそうになると起こしてくれるし、バスケの試合で公休の日のノートをわざわざ取っておいてくれたりする。
気軽に話せる数少ない…いや唯一の女友達だ。
いつも体育の授業の終わりに彼女から香るオレンジみたいな香り。
香水じゃなくて制汗剤だっけか?結構好きなんだよな。
こんなこと言ったら、変態扱いされるから本人はもちろん、バスケ部のやつらにも言う訳が無い。
だけど、今日はいつもと違う匂いがする。
しかも前に沢北が、「たまには使った方がいいっすよ」って貸してくれたやつと似ている気がする。
メンズ用と書いてあったような……
ということは、まちゃはメンズ用の制汗剤を使ったということか…?
クラスの男から借りたりしたのだろうか…?
まさか、沢北のを借りたなんてことは無いだろうか……?
考えれば考えるほど、気になって仕方がない。
けれど、今は授業中。
横目でちらっと見たら、目が合ってしまい、不自然に目をそらすことになってしまった。
挙動不審だと思われたに違いない。
そしてそわそわと落ち着かないまま授業を聞いていると、まちゃは【なんかあった?】メモを渡してきた。
完全に怪しまれている。
体育後にしっかり拭いたはずなのに、背中は冷や汗でびしょびしょだ。
すぐに返さなくてはと悩んでみても、良い返信が思い浮かぶわけもなく、書いた返信は【なんでもない】…なんか全然ダメだ。
それ以上、相手からはアクションもなく、気まずいまま授業は進んでいった。
チャイムが鳴って、授業が終わる。
うーん、実に気まずい。
いつもだったら、腹減った~とかちょっとした会話をするんだけれど、今日は何を話そうか…?
『野辺君?』
「んが?」
『んが?』
くすくすと笑われて、ちょっと空気が緩む。
このまま聞いてしまった方が、気が楽だ。
万一、彼氏のだと言われたら、身を引こう…
「あのよ……」
『ん?』
「匂いなんだけど…」
『え!?汗臭い!?』
まちゃは慌てて胸元をパタパタしている。
やっぱり香ってくるのはいつもと違う制汗剤の匂い。
「いや、違くて……」
『ん?もしかして…これ?』
まちゃは、カバンから黒いボトルを取り出した。
『実はさ、今日弟のやつをもってきちゃったんだよね』
「おとうと…?」
『そう、色も違うのに弟の買い置きの制汗剤をカバンに入れてたの』
「な、なんだよ…」
俺は、脱力して机に突っ伏した。
『え?なんで?』
「沢北に借りたのかと…」
『なんでバスケ部の沢北君が出てくるの?』
「た、確かにそうか……」
『もしかして、この匂いが気になって授業に集中出来なかった?ゴメンね』
「いや、そんなことは…」
俺の方があほすぎる。
ほっとして、急にお腹がぐぅーっと大きな音を立てる。
『ははっ、お腹空いたね!お弁当忘れたんだっけ?ちょっとだけ分けてあげよっか?』
「お、おう」
お弁当のおにぎりを一つ恵んでもらって、さっきまでのソワソワが嘘のように俺って幸せ者?なんて気持ちまで湧き上がってくる。
この時初めて、まちゃのことが好きなのかもって思ったのだが、ここから恋人になるまでには、まだまだ長い道のりがあることをこの時の俺はまだ知らないのだ。
***
2026.4.24.
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