Toenail【南・松本】
【松本稔】
※結婚しています。
『稔ー!助けてぇー!』
冗談めかした声色で、稔の助けを呼ぶ。
でも、実際はとっても困っているのだ。
妊娠して、どんどんお腹が大きくなってきて、歩いたり屈んだり一つ一つの動作が大変になっているけれど、とうとう今日は、足の爪が切れなくなった。
「どうした?」
ベッドの上で体操座りをしそこなったような体制でいる私を見つけて、不思議そうな顔でドアからこちらを覗いている。
『足の爪に…届かない』
爪切りを稔の方に差し出す形で、訴えた。
「ま、マジか……」
『うん、お腹がつっかえて上手く爪切り出来ない…』
稔は、私の方へやってきて、私から爪切りを受け取った。
「俺が……やるのか」
『うん、稔しか頼れる人いないし…』
妙に緊張した面持ちになっている稔に私まで緊張してしまいそうだ。
『自分の爪切るみたいにちゃちゃっとやってくれれば良いからさ』
「そ、そうか」
私はベッドに腰掛け、稔は私の足元に跪くような体勢となった。
『この恰好、なんだか申し訳ないや、ゴメン』
「それは構わないが…人の爪切るの初めてで…痛かったら言ってくれ」
ずいぶん控えめな位置で、パチンと爪が切れる音がした。
『もっと深く切って大丈夫だよ』
「これ以上は…血が出たら無理だから、スマン」
そうだった…稔は極端に血が苦手なのだ。
だから、出産の立ち合いも、なるべく血が見えないよう配慮してもらうつもりなのだ。
『赤ちゃんの爪切りも、稔に任せたいんだから、頑張って!パパ!』
「うっ…そういわれると……」
まさに悪戦苦闘という言葉がぴったりの様子で、自分が切ったら数分で終わる爪切りがたっぷり15分以上もかかった。
稔はうっすらと汗をかいている。
『ありがとう!出産終わるまでお願いすることになるかと思うんだけど…大丈夫?』
「仕方ないよな、俺しかいないし…」
ちょっと頼りない新米パパ見習いは、ぐっと拳をにぎった。
自分が使うためのベビー用と私用の爪切りを数種類購入したりと、稔の奮闘はまだまだ続くのだった。
***
2025.4.28.
※結婚しています。
『稔ー!助けてぇー!』
冗談めかした声色で、稔の助けを呼ぶ。
でも、実際はとっても困っているのだ。
妊娠して、どんどんお腹が大きくなってきて、歩いたり屈んだり一つ一つの動作が大変になっているけれど、とうとう今日は、足の爪が切れなくなった。
「どうした?」
ベッドの上で体操座りをしそこなったような体制でいる私を見つけて、不思議そうな顔でドアからこちらを覗いている。
『足の爪に…届かない』
爪切りを稔の方に差し出す形で、訴えた。
「ま、マジか……」
『うん、お腹がつっかえて上手く爪切り出来ない…』
稔は、私の方へやってきて、私から爪切りを受け取った。
「俺が……やるのか」
『うん、稔しか頼れる人いないし…』
妙に緊張した面持ちになっている稔に私まで緊張してしまいそうだ。
『自分の爪切るみたいにちゃちゃっとやってくれれば良いからさ』
「そ、そうか」
私はベッドに腰掛け、稔は私の足元に跪くような体勢となった。
『この恰好、なんだか申し訳ないや、ゴメン』
「それは構わないが…人の爪切るの初めてで…痛かったら言ってくれ」
ずいぶん控えめな位置で、パチンと爪が切れる音がした。
『もっと深く切って大丈夫だよ』
「これ以上は…血が出たら無理だから、スマン」
そうだった…稔は極端に血が苦手なのだ。
だから、出産の立ち合いも、なるべく血が見えないよう配慮してもらうつもりなのだ。
『赤ちゃんの爪切りも、稔に任せたいんだから、頑張って!パパ!』
「うっ…そういわれると……」
まさに悪戦苦闘という言葉がぴったりの様子で、自分が切ったら数分で終わる爪切りがたっぷり15分以上もかかった。
稔はうっすらと汗をかいている。
『ありがとう!出産終わるまでお願いすることになるかと思うんだけど…大丈夫?』
「仕方ないよな、俺しかいないし…」
ちょっと頼りない新米パパ見習いは、ぐっと拳をにぎった。
自分が使うためのベビー用と私用の爪切りを数種類購入したりと、稔の奮闘はまだまだ続くのだった。
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2025.4.28.
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