赤く染めて【桜木花道】
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はなと再会して、あっという間にもうすぐプロリーグの開幕という時期になった。
オフシーズンとはいえ、練習は毎日のようにあるし、合宿や雑誌の取材なんかもあって、意外と忙しい。
それでも、実業団の時と違ってバスケのことだけを考えていればいいのは、頭の悪いオレにとってはありがたい。
実業団の時は、仕事を覚えるということがどうも苦手で、コピー取りすらうまくできず、先輩たちにあきれられたっけ…
明日は、練習試合。
ユニフォームは、赤地に黒。
オレの大好きな赤色が映えるこのユニフォームを初めて着る。
しかも、監督からスタメンを言い渡された。
試合の前は、いつだって緊張感にピリッとする。
しかも、はなが試合を見に来てくれるとなれば、かっこ悪いところは見せられない。
はなへの気持ちは、もう疑いようもない。
好きだ。
会えば会うほどもっと一緒に居たいと思うし、もっと近くで触れ合いたいと思う。
しかし、また巡り合え、この穏やかな関係を崩したくなくて、気持ちを伝えられないままだった。
でも、気持ちをしっかり伝えなければ、また二の舞だと思うと、明日、試合に勝って、告白しようと決意していた。
試合は、1ゴール差で負けてしまった。
体格が違うガイジン相手に力で競り負ける部分があって、悔しい。
ジャンプ力、瞬発力は勝っていたと思うが、負けは負けだ。
何度試合を経験しても、負けた瞬間には何とも言えない虚しさ、悔しさがこみ上げる。
それでも、この負けを糧にして次の試合に向けて練習を繰り返すしかない。
ただ…今日は、はなのためにも自分のためにも勝ちたかった。
客席を見上げると、潤んだ目のはなと目が合った。
練習試合で、観客もまばらのため、
「勝てなくて…すまん!」
総客席のはなに声をかけた。
はなは、涙を拭いて、笑顔で、
『かっこよかったよ!ご飯作って待ってるね!』
チームメイトに、
「彼女か?」
なんて冷やかされたが、まだ負けたことを引きずっていたオレは、
「ちげーっす」
そう言うだけだった。
ミーティングを終え、飲みの誘いを断り、少し緊張しながら、隣の部屋のインターフォンを押した。
バタバタと音が聞こえる。
『いらっしゃい』
ドアを開けた瞬間にご飯のいいにおいがする。
「おじゃましやす!旨そうな匂いだな!」
思わず、笑みがこぼれた。
初めて上がるはなの部屋に少し落ち着かないが、食卓について、手を合わせる前に謝った。
「勝てなくて、すまん!」
『ううん。花道くん、本当にかっこよかった!』
「負けちまったから、情けねーよ。その…後で、髪、染めさせてくれねーか?」
『ありがと。冷めないうちに食べて』
そう言って、二人で手を合わせた。
お世辞抜きにはなのご飯は旨かった。
「はな、料理の天才だな!」
『ふふ、花道くん褒めすぎだって』
腹は満たされたが、まだもやもやと品気持ちが晴れない。
「はな、これ」
そう言って、毛染め液を出す。
『うん、やっぱり染めてもらう!でも、毛先半分だけお願い。もうすぐ就活で、髪の毛切って黒染めするつもりだから』
「シュウカツ?」
『就職ために、いろんな会社を見て回るんだよ。花道くんはバスケットマンだから、関係ないけどね』
「だいがくせーも大変だな」
『プロバスケットボールマンほど大変じゃないよ』
そう言って、はなはにこっと笑った。
オレは、はなのこの笑顔が大好きだと改めて思った。
はなの家の洗面所で、毛先を染め始めた。
自分の毛とは違うはなの毛に少々緊張しながら、慎重に染めていく。
時間をおいて、髪を洗い流す。
洗面台に真っ赤な色が流れていく。
はなは髪を拭き、ドライヤーで乾かし終えると、鏡を見ながら、オレに声をかけた。
『ありがと。すごくいい色になった。…そのまま、聞いて』
鏡越しにはなと目が合う。
『私、花道くんと再会して、毎日のようにご飯を一緒に食べて、すごく毎日が充実してるの。でも…私、すごく欲張りみたい』
「ぬ?」
オレは、はなの言おうとしている意味が全く分からなかった。
『会えば会うほど、花道くんのこと独り占めしたくなって…ずっと私のためだけに笑っててほしいって思っちゃうんだ。これからシーズンが始まると、きっといろんな女の子が花道くんのことカッコいいって好きになると思うと、心が苦しくて…』
「それは…」
『桜木花道くん、私はあなたのことが好きです』
オレは、鏡の中に映る自分のまぬけな顔をただ見つめていた。
『花道くん、変なこと言ってごめん。花道くんのバスケの邪魔になるようなことだけはしたくなくて…これからも、いちファンとして応援させて!』
早口でまくしたてるように言ったはなは、瞳をタオルで隠す様に覆った。
オレは思わず後ろからはなを抱きしめた。
『…花道くん?』
「本当は、今日勝って、オレから告白したかった」
オレは、はなに告白されて嬉しいのと、先越されて悔しいのと、泣かせるようなことになってしまった気まずさといろんな気持ちがごっちゃになって、そんな顔を見られたくなくて、はなの肩に顔をうずめるようにして、
「なさけねー」
そうつぶやいた。
はなは、驚いたようにタオルから顔を上げた。
『もしかして…』
オレも顔を上げて、はなと向き合った。
「オレもはなのことが、好きだ!ずっとオレのことだけ応援しててくれねーか?」
『もちろん!』
オレと同じ髪の色に染まったはなの笑顔がまぶしかった。
***
こぼれ話→赤く染めて【桜木花道】
オフシーズンとはいえ、練習は毎日のようにあるし、合宿や雑誌の取材なんかもあって、意外と忙しい。
それでも、実業団の時と違ってバスケのことだけを考えていればいいのは、頭の悪いオレにとってはありがたい。
実業団の時は、仕事を覚えるということがどうも苦手で、コピー取りすらうまくできず、先輩たちにあきれられたっけ…
明日は、練習試合。
ユニフォームは、赤地に黒。
オレの大好きな赤色が映えるこのユニフォームを初めて着る。
しかも、監督からスタメンを言い渡された。
試合の前は、いつだって緊張感にピリッとする。
しかも、はなが試合を見に来てくれるとなれば、かっこ悪いところは見せられない。
はなへの気持ちは、もう疑いようもない。
好きだ。
会えば会うほどもっと一緒に居たいと思うし、もっと近くで触れ合いたいと思う。
しかし、また巡り合え、この穏やかな関係を崩したくなくて、気持ちを伝えられないままだった。
でも、気持ちをしっかり伝えなければ、また二の舞だと思うと、明日、試合に勝って、告白しようと決意していた。
試合は、1ゴール差で負けてしまった。
体格が違うガイジン相手に力で競り負ける部分があって、悔しい。
ジャンプ力、瞬発力は勝っていたと思うが、負けは負けだ。
何度試合を経験しても、負けた瞬間には何とも言えない虚しさ、悔しさがこみ上げる。
それでも、この負けを糧にして次の試合に向けて練習を繰り返すしかない。
ただ…今日は、はなのためにも自分のためにも勝ちたかった。
客席を見上げると、潤んだ目のはなと目が合った。
練習試合で、観客もまばらのため、
「勝てなくて…すまん!」
総客席のはなに声をかけた。
はなは、涙を拭いて、笑顔で、
『かっこよかったよ!ご飯作って待ってるね!』
チームメイトに、
「彼女か?」
なんて冷やかされたが、まだ負けたことを引きずっていたオレは、
「ちげーっす」
そう言うだけだった。
ミーティングを終え、飲みの誘いを断り、少し緊張しながら、隣の部屋のインターフォンを押した。
バタバタと音が聞こえる。
『いらっしゃい』
ドアを開けた瞬間にご飯のいいにおいがする。
「おじゃましやす!旨そうな匂いだな!」
思わず、笑みがこぼれた。
初めて上がるはなの部屋に少し落ち着かないが、食卓について、手を合わせる前に謝った。
「勝てなくて、すまん!」
『ううん。花道くん、本当にかっこよかった!』
「負けちまったから、情けねーよ。その…後で、髪、染めさせてくれねーか?」
『ありがと。冷めないうちに食べて』
そう言って、二人で手を合わせた。
お世辞抜きにはなのご飯は旨かった。
「はな、料理の天才だな!」
『ふふ、花道くん褒めすぎだって』
腹は満たされたが、まだもやもやと品気持ちが晴れない。
「はな、これ」
そう言って、毛染め液を出す。
『うん、やっぱり染めてもらう!でも、毛先半分だけお願い。もうすぐ就活で、髪の毛切って黒染めするつもりだから』
「シュウカツ?」
『就職ために、いろんな会社を見て回るんだよ。花道くんはバスケットマンだから、関係ないけどね』
「だいがくせーも大変だな」
『プロバスケットボールマンほど大変じゃないよ』
そう言って、はなはにこっと笑った。
オレは、はなのこの笑顔が大好きだと改めて思った。
はなの家の洗面所で、毛先を染め始めた。
自分の毛とは違うはなの毛に少々緊張しながら、慎重に染めていく。
時間をおいて、髪を洗い流す。
洗面台に真っ赤な色が流れていく。
はなは髪を拭き、ドライヤーで乾かし終えると、鏡を見ながら、オレに声をかけた。
『ありがと。すごくいい色になった。…そのまま、聞いて』
鏡越しにはなと目が合う。
『私、花道くんと再会して、毎日のようにご飯を一緒に食べて、すごく毎日が充実してるの。でも…私、すごく欲張りみたい』
「ぬ?」
オレは、はなの言おうとしている意味が全く分からなかった。
『会えば会うほど、花道くんのこと独り占めしたくなって…ずっと私のためだけに笑っててほしいって思っちゃうんだ。これからシーズンが始まると、きっといろんな女の子が花道くんのことカッコいいって好きになると思うと、心が苦しくて…』
「それは…」
『桜木花道くん、私はあなたのことが好きです』
オレは、鏡の中に映る自分のまぬけな顔をただ見つめていた。
『花道くん、変なこと言ってごめん。花道くんのバスケの邪魔になるようなことだけはしたくなくて…これからも、いちファンとして応援させて!』
早口でまくしたてるように言ったはなは、瞳をタオルで隠す様に覆った。
オレは思わず後ろからはなを抱きしめた。
『…花道くん?』
「本当は、今日勝って、オレから告白したかった」
オレは、はなに告白されて嬉しいのと、先越されて悔しいのと、泣かせるようなことになってしまった気まずさといろんな気持ちがごっちゃになって、そんな顔を見られたくなくて、はなの肩に顔をうずめるようにして、
「なさけねー」
そうつぶやいた。
はなは、驚いたようにタオルから顔を上げた。
『もしかして…』
オレも顔を上げて、はなと向き合った。
「オレもはなのことが、好きだ!ずっとオレのことだけ応援しててくれねーか?」
『もちろん!』
オレと同じ髪の色に染まったはなの笑顔がまぶしかった。
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こぼれ話→赤く染めて【桜木花道】
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