ダブルデート【藤真健司・花形透】
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一目惚れなんて、マンガか小説の中での話だと思ってた。
「きーみがーすきー♪」
テレビから流れてくるこの曲を聞いて思い浮かべるのは、ちよさんの顔。
全校集会で、たまたま壇上に上がっていたちよさんを見て、心を鷲掴みにされた。
凛とした佇まいと心地よい声が頭から脳裏に焼き付いて離れそうにない。
彼女は、特別噂になるような美人でもないし、俺自身、3年になるまで全く知らなかったのだから、どうしてこんなに惹かれてしまったか分からない。
自然と彼女のことが気になって探すようになれば、クラスもフルネームもすぐに分かった。
そして、偶然は更に重なった。
彼女は、俺の幼馴染と友達だったのだ。
幼馴染の如月とは、親同士がめちゃくちゃ仲がいい。
しょっちゅうどちらかの家に集まって、飲み会を行っている。
当然、子どもの俺は連れていかれて、飯を食わせたら二人で遊べばいいとばかりに放置されていた。
親同士はいつかは俺たちが結婚して欲しいと明け透けに話していたが、互いにに恋愛感情を抱いたことは一切なく、気の置けない友人どまりだ。
ゲームやマンガの趣味が合う俺たちは、いつもは口うるさい親たちが飲み会の時は何も言わないことをいいことに、ゲームし放題、お菓子やジュース食べ飲み放題を満喫していた。
中学、高校も同じ所に入ったけれど、自然と学校での接点は少なくなっていき、飲み会にも着いていくことは無くなっていった。
だからと言って、仲が悪くなったわけでも、気まずい仲になって訳でもなく、ただただお互いの興味が別々のところに向いていただけだ。
だから、久しぶりに如月の家に行き、部屋に飾ってあった写真を見て
「うお!!??」
とデカい声が出るほどに驚いた。
ちよさんと如月のツーショット写真が飾られていたのだ。
「どうしたの?」
「いや、何でもねぇ」
ただ、さすがに一目惚れした相手だと如月に知られるのは恥ずかしくて、ちょっと取り繕ってはみたけれど、長い付き合いの相手にはバレバレだったようだ。
そりゃ、いつもはマンガを手に取って寝そべって読んでいるのに、壁に飾られた写真やちよさんに関する情報はないかとさりげなさを装って探してしまっているんだから仕方がない。
「健司、なんか変だけど」
「ん?別に……」
「ふ~ん……」
しらを切ろうとすることに神経を向けるより、ちよさんとの写真が気になって仕方ない。
「もしかして、これ?」
如月は飾ってあった写真を手に取る。
こうなったら、開き直るより仕方がない。
「……この子、友だちなのか?」
「まあね。可愛いでしょ?」
「紹介してくれね?」
「ヤダ」
如月は無情にも写真を隠すようにしてそっぽを向いた。
「頼む!」
「大切な大切なお友達を健司にそうそう簡単に紹介する訳にはいかない」
「じゃ、俺は俺の大切な大切な友人、花形透を紹介する!」
「いや、それは興味ない」
「あいつ、めちゃくちゃいい男だから!バスケ部の監督でもある俺が保証するから安心してくれ」
中々首を縦に振ってくれない如月にすがるような思いで頼みこむ。
「健司の友達のことは置いておいて、ちよのこと、どこで知ったか教えて」
好奇心満々といった表情で如月は俺のことを見てくる。
正直に話すしか、ちよさんとお近づきになる方法はなさそうだ。
「実は……」
先日の全校集会で登壇した時に気になった話をさらっとしてみる。
『ふーん、一目惚れってやつね』
「そういうつもりはねぇんだけどな……」
『ま、仕方がないか。幼馴染のよしみで、聞いてみてあげる。健司のこと一ミリも興味なさそうだったら諦めてね。さすがに健司は翔陽の有名人でもあるし、知らないってことは無いと思うんだけど…』
「バスケ部の話とかしたことねぇかな?」
『全くない。そもそもちよがスポーツの話するの聞いたことないし』
「望みが薄いかもしれないけど、頼む!もし、大丈夫そうなら、明後日、部活休みだから何とかお茶だけでも…」
『健司のおごり?』
「そりゃ、もちろん!花形もつれてくから」
『花形君って全然知らないけど、ま、いっか』
「神様仏様如月様だな!マジでありがとう」
もう、如月には足を向けて寝れねぇな…なんて思いながら、酔っぱらった両親を適当にあしらいながら、自宅に帰った。
***
次の日。
部活に向かう前に如月がやってきて、
「明日、オッケーだって」
「マジ!?ありがとな!!」
如月は、ガッツポーズする俺の様子をじっくり眺めながら、
「うーん…健司がモテる理由が、分かるような分からないような……」
もごもごと呟いている。
確かに今まで、幾度となくラブレターをもらったり、好きだと言われたこともある。
その度に、気付かないふりをしたり、今はバスケが一番大切だと断ってきた。
正直、申し訳ないという気持ちより煩わしいと感じることが多かった。
実際、何度か花形に愚痴ったこともある。
俺のことが好きなら、邪魔しないようにすることはできないのかと。
けれど、いざ、自分が恋愛する側になってみて、今なら告白するという行為がどれだけ勇気のいることなのか分かる気がする。
そしてちよさんと出会ったことは、幼馴染の如月の友だちだということを知って尚更、運命だとさえ思うようになった。
俺はちよさんに出会うために他の子には興味を示すことはなかったんだと思っている。
ま、それより、明日だ明日!
いつも以上に気合を入れて走り込みをして、バスケ部の練習を終えた。
帰宅していつも通り飯を食って、入浴して、少し宿題をして……いつもより少しだけ早くベッドに入る。
そわそわして中々眠れそうにないなんて思うこと、今までなかったのにな。
目を閉じれば、ちよさんの顔。
上手く話せるだろうか?
どんな話題なら、嫌われない…?
気になることは沢山あるけれど、答えが出ないうちに眠りに落ちていた。
***
そして迎えた次の日の放課後。
如月と共に、花形とちよさんが補習を受けている教室に、終わる時間を見計らって乗り込んだ。
緊張と手汗で、今、バスケをしたら、確実にハンドリングが上手くいかないだろう。
「花形、終わったか?」
まずは話しかけやすい方を選んで声をかける。
「ああ。で、何があるんだ?」
「きょ、今日はだな…俺と花形と如月とその友達のちよさんと親睦を深めようかと…」
「ちよさんとは委員会が一緒だから、もう知り合いだが」
「何!?」
まさか、すでにちよさんと知り合いだったなら、なぜこの男はもっと早くに紹介してくれなかったのだろう。
如月は、早く行こうとせかしてくれるのは有難いが、花形に対して、ちょっと怒りのような感情がわいてくる。
「……花形とちよさんとが知り合いなのは腹立つな…」
「なんでだ?」
「腹立つもんは腹立つんだよ!さ、いこーぜ!」
花形は、頭にはてながたくさん浮かんだような顔をしているが、ここは気持ちを切り替えて、はやくちよさんとお近づきになるより仕方がない。
如月と相談した結果、翔陽生がよく行くファミレスに行くことになっている。
俺と花形、如月とちよさんが隣同士に座り、簡単な自己紹介をして、ドリンクバーとポテトなんかを各々頼む。
「そもそも、なんでこういう形で集まることになったんだ?」
花形は詮索してくるが、余計なお世話だ。
もう少し、俺とちよさんが仲良くなれるよう協力して欲しい。
『あ、私もそれ、思ってた』
うっ……ちよさんにも聞かれたら、言わざるを得ない。
「それは…健司、説明してよ。私は健司に頼まれたから、ちよを呼んだだけだし」
あぁぁ……どいつもこいつもうるさい。
とにかく、俺はめちゃくちゃ緊張しているのだから、もっと優しくしてはくれないだろうか?
「分かってるよ!それは、ずばり…俺がちよさんと友達になりたいからだ!」
『えっと、私と、ですか?』
「そう!だから、友達になって欲しい!」
「健司、友達でいいの?」
如月はにやにやしながら俺の方を見てくるけれど、一世一代の大勝負とばかりに放った友達になってくださいの答えを聞くまでは、安心できない。
なにしろ、断られる可能性だってあるのだ。
ちよさんは、俺たち三人に見つめられて、困っているようだ。
こんなにプレッシャーを与えたら、考えさせてくださいとか何とか言って、うやむやにされてしまわないだろうか…?
沈黙に俺は悪い方に悪い方に考えが及んでしまい、ここから逃げ出したくなる。
『あの…私の方こそ、よろしくお願いします!実は、藤真…くんのこと、気になっていたと言いますか…えっと……いつもカッコいいなって思ってたから…』
…………
頭の中が真っ白になる。
今、ちよさんは、俺のことをカッコいいと言ったのは、本当なのだろうか?
俺の頬を誰かつねって、夢じゃないと証明して欲しい。
如月は、嬉しそうな顔をして、
「とりあえず、お友達になれた記念に隣同士の席、座ったら?」
と、いそいそと席を立つ。
「そうだな。ほら、藤真、如月さんが席変わってくれるぞ?」
ちょっと呆れたような表情にも感じられるが、花形も俺とちよさんが友達になるのを認めてくれるということで良いだろうか?
緊張で喉がカラカラになりながら、ぎこちなく立ち上がって、花形に促されるままにちよさんの隣の席に座った。
ちよさんの飲み物を取ろうとする手に俺の左手にあたってしまい、その瞬間に目が合う。
『ゴメン…』
「俺の方こそ…」
本当はじっと見つめていたいのだけれど、こんな近距離でそんなこと出来るわけもなく、ついわざとらしく目をそらしてしまう。
さっき触れた左手が妙に熱くて気になって、ぎゅっと握りしめる。
君が好き。
まだそれを伝えられるのは、ずっと先になりそうだけど、君は待っていてくれるだろうか?
「きーみがーすきー♪」
テレビから流れてくるこの曲を聞いて思い浮かべるのは、ちよさんの顔。
全校集会で、たまたま壇上に上がっていたちよさんを見て、心を鷲掴みにされた。
凛とした佇まいと心地よい声が頭から脳裏に焼き付いて離れそうにない。
彼女は、特別噂になるような美人でもないし、俺自身、3年になるまで全く知らなかったのだから、どうしてこんなに惹かれてしまったか分からない。
自然と彼女のことが気になって探すようになれば、クラスもフルネームもすぐに分かった。
そして、偶然は更に重なった。
彼女は、俺の幼馴染と友達だったのだ。
幼馴染の如月とは、親同士がめちゃくちゃ仲がいい。
しょっちゅうどちらかの家に集まって、飲み会を行っている。
当然、子どもの俺は連れていかれて、飯を食わせたら二人で遊べばいいとばかりに放置されていた。
親同士はいつかは俺たちが結婚して欲しいと明け透けに話していたが、互いにに恋愛感情を抱いたことは一切なく、気の置けない友人どまりだ。
ゲームやマンガの趣味が合う俺たちは、いつもは口うるさい親たちが飲み会の時は何も言わないことをいいことに、ゲームし放題、お菓子やジュース食べ飲み放題を満喫していた。
中学、高校も同じ所に入ったけれど、自然と学校での接点は少なくなっていき、飲み会にも着いていくことは無くなっていった。
だからと言って、仲が悪くなったわけでも、気まずい仲になって訳でもなく、ただただお互いの興味が別々のところに向いていただけだ。
だから、久しぶりに如月の家に行き、部屋に飾ってあった写真を見て
「うお!!??」
とデカい声が出るほどに驚いた。
ちよさんと如月のツーショット写真が飾られていたのだ。
「どうしたの?」
「いや、何でもねぇ」
ただ、さすがに一目惚れした相手だと如月に知られるのは恥ずかしくて、ちょっと取り繕ってはみたけれど、長い付き合いの相手にはバレバレだったようだ。
そりゃ、いつもはマンガを手に取って寝そべって読んでいるのに、壁に飾られた写真やちよさんに関する情報はないかとさりげなさを装って探してしまっているんだから仕方がない。
「健司、なんか変だけど」
「ん?別に……」
「ふ~ん……」
しらを切ろうとすることに神経を向けるより、ちよさんとの写真が気になって仕方ない。
「もしかして、これ?」
如月は飾ってあった写真を手に取る。
こうなったら、開き直るより仕方がない。
「……この子、友だちなのか?」
「まあね。可愛いでしょ?」
「紹介してくれね?」
「ヤダ」
如月は無情にも写真を隠すようにしてそっぽを向いた。
「頼む!」
「大切な大切なお友達を健司にそうそう簡単に紹介する訳にはいかない」
「じゃ、俺は俺の大切な大切な友人、花形透を紹介する!」
「いや、それは興味ない」
「あいつ、めちゃくちゃいい男だから!バスケ部の監督でもある俺が保証するから安心してくれ」
中々首を縦に振ってくれない如月にすがるような思いで頼みこむ。
「健司の友達のことは置いておいて、ちよのこと、どこで知ったか教えて」
好奇心満々といった表情で如月は俺のことを見てくる。
正直に話すしか、ちよさんとお近づきになる方法はなさそうだ。
「実は……」
先日の全校集会で登壇した時に気になった話をさらっとしてみる。
『ふーん、一目惚れってやつね』
「そういうつもりはねぇんだけどな……」
『ま、仕方がないか。幼馴染のよしみで、聞いてみてあげる。健司のこと一ミリも興味なさそうだったら諦めてね。さすがに健司は翔陽の有名人でもあるし、知らないってことは無いと思うんだけど…』
「バスケ部の話とかしたことねぇかな?」
『全くない。そもそもちよがスポーツの話するの聞いたことないし』
「望みが薄いかもしれないけど、頼む!もし、大丈夫そうなら、明後日、部活休みだから何とかお茶だけでも…」
『健司のおごり?』
「そりゃ、もちろん!花形もつれてくから」
『花形君って全然知らないけど、ま、いっか』
「神様仏様如月様だな!マジでありがとう」
もう、如月には足を向けて寝れねぇな…なんて思いながら、酔っぱらった両親を適当にあしらいながら、自宅に帰った。
***
次の日。
部活に向かう前に如月がやってきて、
「明日、オッケーだって」
「マジ!?ありがとな!!」
如月は、ガッツポーズする俺の様子をじっくり眺めながら、
「うーん…健司がモテる理由が、分かるような分からないような……」
もごもごと呟いている。
確かに今まで、幾度となくラブレターをもらったり、好きだと言われたこともある。
その度に、気付かないふりをしたり、今はバスケが一番大切だと断ってきた。
正直、申し訳ないという気持ちより煩わしいと感じることが多かった。
実際、何度か花形に愚痴ったこともある。
俺のことが好きなら、邪魔しないようにすることはできないのかと。
けれど、いざ、自分が恋愛する側になってみて、今なら告白するという行為がどれだけ勇気のいることなのか分かる気がする。
そしてちよさんと出会ったことは、幼馴染の如月の友だちだということを知って尚更、運命だとさえ思うようになった。
俺はちよさんに出会うために他の子には興味を示すことはなかったんだと思っている。
ま、それより、明日だ明日!
いつも以上に気合を入れて走り込みをして、バスケ部の練習を終えた。
帰宅していつも通り飯を食って、入浴して、少し宿題をして……いつもより少しだけ早くベッドに入る。
そわそわして中々眠れそうにないなんて思うこと、今までなかったのにな。
目を閉じれば、ちよさんの顔。
上手く話せるだろうか?
どんな話題なら、嫌われない…?
気になることは沢山あるけれど、答えが出ないうちに眠りに落ちていた。
***
そして迎えた次の日の放課後。
如月と共に、花形とちよさんが補習を受けている教室に、終わる時間を見計らって乗り込んだ。
緊張と手汗で、今、バスケをしたら、確実にハンドリングが上手くいかないだろう。
「花形、終わったか?」
まずは話しかけやすい方を選んで声をかける。
「ああ。で、何があるんだ?」
「きょ、今日はだな…俺と花形と如月とその友達のちよさんと親睦を深めようかと…」
「ちよさんとは委員会が一緒だから、もう知り合いだが」
「何!?」
まさか、すでにちよさんと知り合いだったなら、なぜこの男はもっと早くに紹介してくれなかったのだろう。
如月は、早く行こうとせかしてくれるのは有難いが、花形に対して、ちょっと怒りのような感情がわいてくる。
「……花形とちよさんとが知り合いなのは腹立つな…」
「なんでだ?」
「腹立つもんは腹立つんだよ!さ、いこーぜ!」
花形は、頭にはてながたくさん浮かんだような顔をしているが、ここは気持ちを切り替えて、はやくちよさんとお近づきになるより仕方がない。
如月と相談した結果、翔陽生がよく行くファミレスに行くことになっている。
俺と花形、如月とちよさんが隣同士に座り、簡単な自己紹介をして、ドリンクバーとポテトなんかを各々頼む。
「そもそも、なんでこういう形で集まることになったんだ?」
花形は詮索してくるが、余計なお世話だ。
もう少し、俺とちよさんが仲良くなれるよう協力して欲しい。
『あ、私もそれ、思ってた』
うっ……ちよさんにも聞かれたら、言わざるを得ない。
「それは…健司、説明してよ。私は健司に頼まれたから、ちよを呼んだだけだし」
あぁぁ……どいつもこいつもうるさい。
とにかく、俺はめちゃくちゃ緊張しているのだから、もっと優しくしてはくれないだろうか?
「分かってるよ!それは、ずばり…俺がちよさんと友達になりたいからだ!」
『えっと、私と、ですか?』
「そう!だから、友達になって欲しい!」
「健司、友達でいいの?」
如月はにやにやしながら俺の方を見てくるけれど、一世一代の大勝負とばかりに放った友達になってくださいの答えを聞くまでは、安心できない。
なにしろ、断られる可能性だってあるのだ。
ちよさんは、俺たち三人に見つめられて、困っているようだ。
こんなにプレッシャーを与えたら、考えさせてくださいとか何とか言って、うやむやにされてしまわないだろうか…?
沈黙に俺は悪い方に悪い方に考えが及んでしまい、ここから逃げ出したくなる。
『あの…私の方こそ、よろしくお願いします!実は、藤真…くんのこと、気になっていたと言いますか…えっと……いつもカッコいいなって思ってたから…』
…………
頭の中が真っ白になる。
今、ちよさんは、俺のことをカッコいいと言ったのは、本当なのだろうか?
俺の頬を誰かつねって、夢じゃないと証明して欲しい。
如月は、嬉しそうな顔をして、
「とりあえず、お友達になれた記念に隣同士の席、座ったら?」
と、いそいそと席を立つ。
「そうだな。ほら、藤真、如月さんが席変わってくれるぞ?」
ちょっと呆れたような表情にも感じられるが、花形も俺とちよさんが友達になるのを認めてくれるということで良いだろうか?
緊張で喉がカラカラになりながら、ぎこちなく立ち上がって、花形に促されるままにちよさんの隣の席に座った。
ちよさんの飲み物を取ろうとする手に俺の左手にあたってしまい、その瞬間に目が合う。
『ゴメン…』
「俺の方こそ…」
本当はじっと見つめていたいのだけれど、こんな近距離でそんなこと出来るわけもなく、ついわざとらしく目をそらしてしまう。
さっき触れた左手が妙に熱くて気になって、ぎゅっと握りしめる。
君が好き。
まだそれを伝えられるのは、ずっと先になりそうだけど、君は待っていてくれるだろうか?