キャラとお見合いする話
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休日のホテルのラウンジ。
私はよそ行きの格好をして、初対面の男性と向かい合って座っている。
仲介してくれるのは、このお見合いを取り持ってくれる仲人の女性。
堅苦しくない方が良いだろうと気を使ってくれて、両親の同席無し、会食も無しではあるけれど、私はかなり緊張している。
30歳に突入してすぐ、実家暮らしで出ていく気配のない娘の行く末を心配した両親は今日のお見合い話を持ってきた。
写真を見てすぐ二つ返事でお見合いすることを決めたのは、写真の男性が大変魅力的であるからに違いないのだが、いざ目の前にしてみると容姿のスペックの高さにめまいがしそうだ。
手が震えて粗相してしまいそうで、コーヒーカップを持ち上げることすら躊躇し、出来ること言えば笑顔を絶やさないことくらいだ。
「ここから先は、若い二人にお任せして…」
ひとしきりお互いのプロフィールを説明した仲人さんは、テレビドラマでだってちゃんと聞いたことないセリフを残し、伝票を持って席を立った。
残された初対面二人。
どんな内容の会話が適切なのだろうか…?
そもそも結婚を前提にしているわけだから何とか次につながるような会話を……と内心焦っているけれど、言葉が出てこない。
そもそも、何故、こんな女性に困っていなさそうな男性がお見合いをしようなんて思ったのだろう?さすがに初対面でこのような失礼な質問をぶつけるわけにはいかず、目線を合わせる勇気も出ず、洒落たテーブルの上のコーヒーカップに目を落として曖昧に微笑むのが精いっぱいだ。
「まいったな……」
長身で、ツンツン頭が特徴的な仙道彰さんは後頭部に手をあててヘらりと笑った。
その笑顔にいくらか力が抜ける。
見事なまでのイケメンで、目尻のシワがわずかに年齢を感じさせるが30代とは思えないくらいに若々しいし、その笑った表情はどこか少年っぽさも残す。
こんな風に笑いかけられたら、どんな女性でも恋に落ちてしまうだろう。
『まいりましたね…』
調子を合わせてみるけれど、どうしてこんなにも素敵な男性が、お見合いをする必要があるのだろうか?という疑問ばかりが膨らんでいく。
やっぱり私なんかはこんなに素敵な人には不釣り合いだ。
このまま、盛り上がることもなく終われば、向こうからお断りされるだろう。
そう、そもそも、こんな素敵なお見合い話なんて最初から無いも同然なのだ。
少しばかり、惜しい気持ちもあるけれど、こんなイケメン、お見合いで知り合って付き合うことになりましたなんて友だちに紹介する未来はありえない。
そんな風に自己完結してしまえば、スッキリだ。
後はコーヒーを飲み終えて、席を立ってさよならすればもう二度と会うことはないだろう。
コーヒーカップを持ち上げて、ぬるくなったコーヒーに口をつける。
香りもすっかり飛んでしまっているけれど、コーヒーのカフェインは、私の頭の中をさらにクリアにしてくれる。
もう2-3言交わして、ありがとうございましたでおしまいだ。
両親には、ホテルのケーキと上手くいかなかったという報告をするだけだ。
一方、仙道さんはのんびりとコーヒーをすすると、
「えーっと…結婚するか決めればいいんだよな?」
想像だにしていないセリフを放った。
『えっ?いや、そんなに焦る必要はないかと……』
「親もうるさいし、ミョウジさんのこと良いな…って思ってるんだけど、俺」
私に良いところなんてありませんよ?と言いたいところをこらえて、
『私なんかに仙道さんはもったいないんじゃあ……』
と、言葉を濁す。
「趣味が料理ってところも悪くねぇんだよなぁ」
改めて私のお見合い写真とプロフィールに目を落とした仙道さんは、嬉しそうだ。
けれど、まるでレストランのメニューで料理を決めるかのように結婚を決めてしまおうとしている気がしてならない。
まさか、この人、結婚詐欺師なんじゃあ……と疑いたくもなってしまう程の展開だ。
『私、お見合いって初めてなので分からないのですが、こういうのは一旦持ち帰ってご両親とも相談して、改めてデートの日取りを決めたりして進めていくものだと思っていたのですが……』
「そういうもんなの?じゃ、これからデートしようか?」
やっぱり急展開すぎる。
一回、家で冷静になって考える時間が欲しい。
『私は……今日は、自己紹介して終わりかと思ってました』
「俺は、今日、結婚まで決めるつもりで来たんだけどなぁ」
一転、ぐっと真剣な瞳で見つめられれば、私の心臓はドクンっと大きく跳ねる。
『す、少し時間をください』
「そっかぁ……でもさ、もう少し俺のこと知ってもらいたいから、デートじゃなくて食事だけでもどう?」
結構グイグイ来るタイプのようだ。
どうか時間をください……
そう思っているのに、食事だけならという気持ちになってきているのも事実だ。
仙道さんは、コーヒーをぐいっと飲み干して鞄を手に取って立ち上がる。
「さ、行こうか?」
仙道さんは手を差し出してくれる。
私はまるで王子様にエスコートされるお姫様の気分でその手を取ってしまったのだった。
***
2023.10.17.
私はよそ行きの格好をして、初対面の男性と向かい合って座っている。
仲介してくれるのは、このお見合いを取り持ってくれる仲人の女性。
堅苦しくない方が良いだろうと気を使ってくれて、両親の同席無し、会食も無しではあるけれど、私はかなり緊張している。
30歳に突入してすぐ、実家暮らしで出ていく気配のない娘の行く末を心配した両親は今日のお見合い話を持ってきた。
写真を見てすぐ二つ返事でお見合いすることを決めたのは、写真の男性が大変魅力的であるからに違いないのだが、いざ目の前にしてみると容姿のスペックの高さにめまいがしそうだ。
手が震えて粗相してしまいそうで、コーヒーカップを持ち上げることすら躊躇し、出来ること言えば笑顔を絶やさないことくらいだ。
「ここから先は、若い二人にお任せして…」
ひとしきりお互いのプロフィールを説明した仲人さんは、テレビドラマでだってちゃんと聞いたことないセリフを残し、伝票を持って席を立った。
残された初対面二人。
どんな内容の会話が適切なのだろうか…?
そもそも結婚を前提にしているわけだから何とか次につながるような会話を……と内心焦っているけれど、言葉が出てこない。
そもそも、何故、こんな女性に困っていなさそうな男性がお見合いをしようなんて思ったのだろう?さすがに初対面でこのような失礼な質問をぶつけるわけにはいかず、目線を合わせる勇気も出ず、洒落たテーブルの上のコーヒーカップに目を落として曖昧に微笑むのが精いっぱいだ。
「まいったな……」
長身で、ツンツン頭が特徴的な仙道彰さんは後頭部に手をあててヘらりと笑った。
その笑顔にいくらか力が抜ける。
見事なまでのイケメンで、目尻のシワがわずかに年齢を感じさせるが30代とは思えないくらいに若々しいし、その笑った表情はどこか少年っぽさも残す。
こんな風に笑いかけられたら、どんな女性でも恋に落ちてしまうだろう。
『まいりましたね…』
調子を合わせてみるけれど、どうしてこんなにも素敵な男性が、お見合いをする必要があるのだろうか?という疑問ばかりが膨らんでいく。
やっぱり私なんかはこんなに素敵な人には不釣り合いだ。
このまま、盛り上がることもなく終われば、向こうからお断りされるだろう。
そう、そもそも、こんな素敵なお見合い話なんて最初から無いも同然なのだ。
少しばかり、惜しい気持ちもあるけれど、こんなイケメン、お見合いで知り合って付き合うことになりましたなんて友だちに紹介する未来はありえない。
そんな風に自己完結してしまえば、スッキリだ。
後はコーヒーを飲み終えて、席を立ってさよならすればもう二度と会うことはないだろう。
コーヒーカップを持ち上げて、ぬるくなったコーヒーに口をつける。
香りもすっかり飛んでしまっているけれど、コーヒーのカフェインは、私の頭の中をさらにクリアにしてくれる。
もう2-3言交わして、ありがとうございましたでおしまいだ。
両親には、ホテルのケーキと上手くいかなかったという報告をするだけだ。
一方、仙道さんはのんびりとコーヒーをすすると、
「えーっと…結婚するか決めればいいんだよな?」
想像だにしていないセリフを放った。
『えっ?いや、そんなに焦る必要はないかと……』
「親もうるさいし、ミョウジさんのこと良いな…って思ってるんだけど、俺」
私に良いところなんてありませんよ?と言いたいところをこらえて、
『私なんかに仙道さんはもったいないんじゃあ……』
と、言葉を濁す。
「趣味が料理ってところも悪くねぇんだよなぁ」
改めて私のお見合い写真とプロフィールに目を落とした仙道さんは、嬉しそうだ。
けれど、まるでレストランのメニューで料理を決めるかのように結婚を決めてしまおうとしている気がしてならない。
まさか、この人、結婚詐欺師なんじゃあ……と疑いたくもなってしまう程の展開だ。
『私、お見合いって初めてなので分からないのですが、こういうのは一旦持ち帰ってご両親とも相談して、改めてデートの日取りを決めたりして進めていくものだと思っていたのですが……』
「そういうもんなの?じゃ、これからデートしようか?」
やっぱり急展開すぎる。
一回、家で冷静になって考える時間が欲しい。
『私は……今日は、自己紹介して終わりかと思ってました』
「俺は、今日、結婚まで決めるつもりで来たんだけどなぁ」
一転、ぐっと真剣な瞳で見つめられれば、私の心臓はドクンっと大きく跳ねる。
『す、少し時間をください』
「そっかぁ……でもさ、もう少し俺のこと知ってもらいたいから、デートじゃなくて食事だけでもどう?」
結構グイグイ来るタイプのようだ。
どうか時間をください……
そう思っているのに、食事だけならという気持ちになってきているのも事実だ。
仙道さんは、コーヒーをぐいっと飲み干して鞄を手に取って立ち上がる。
「さ、行こうか?」
仙道さんは手を差し出してくれる。
私はまるで王子様にエスコートされるお姫様の気分でその手を取ってしまったのだった。
***
2023.10.17.
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