ロマンスでした【岸本実理、金平】
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一人暮らしのアパートの給湯器が壊れた。
修理には一週間ほどかかるらしい。
くそ暑い日が続いているから、水のシャワーをガーっと浴びてしまえばいいのだが、2-3日続くとそろそろ熱い風呂が恋しくなってくる。
今日は、久しぶりに南達とバスケをして飯を食った後、部屋のシャワーを浴びる気にはなれなくて、そのまま銭湯へと向かった。
暑いのは苦手やけど、ついでにサウナにも入って、汗を流しとこ。
番頭のおばちゃんにじゃり銭を払って、貴重品ロッカーに財布を預ける。
女風呂なんて全く興味ないフリをして一瞥し、男風呂ののれんをくぐる。
ざっと脱衣所を見た感じでは先客は3人程度。
ゆっくり風呂を楽しめそうや。
デカいバスケ用品が入ったリュックは場所を取るから、脱衣かごを二つ拝借して片方にリュックをおく。
タオルを取り出して、裸になり、ヘアゴムで長い髪をひとまとめにした。
大学に入ってから開けたピアスも外してリュックの前ポケットへ。
タオルで股間を隠すか肩にかけるか迷った末に手で持ったまま、ガラガラと引き戸を開けてもくもくと湯気が立ち込める中へと足を踏み入れる。
湯船へと向かう前に、髪をほどいて洗い場で身体を洗う。
本当は家にあるちょっとええシャンプーの方が仕上がりはいいのだが、今日はないので備え付けのリンスインシャンプーで頭をがしがしと洗った。
流した後、ちょっとごわつくのはしゃあない。
後で丁寧にドライヤーでもしたら何とかなるやろ。
最後に顔を洗ったら、濡れた髪をお団子に結って、湯船の前にサウナへと向かう。
小さな小窓からぼんやり先客が見える。
一人なら、ええか。
あんまり長居はしないから、大阪コテコテの口うるさいおっちゃんじゃないことを祈りつつ、戸を開けて俺は固まった。
金平やんけ……
あのくるくる天然パーマとちょっと辛気臭い顔は2,3年では忘れるわけはない。
高校時代のバスケ部は、少々苦い思い出がある。
北野さんの後からやってきた監督は、北野さんの指導を否定するかのような戦術を俺たちに押し付けてきた。
結果は、高三のインターハイ初戦敗退。
初戦で、やっと本音でぶつかり合えた俺たちと金平だったが、微妙な距離感はすぐに変わることはなく、わだかまりを残したまま俺達の代は高校を卒業した。
せや、インターハイ初戦のタイムアウト中に俺は金平に殴られたしな。
まさかこんなところで会うなんて思ってもみなかった。
豊玉をクビになった後もまだ大阪におったんやな。
扉を開けっ放しのまま、予想外の再会に驚いて立ち尽くしている俺に、
「あの…閉めてもらえませんか?」
全く気付いていない金平は言葉を発した。
「あ、すんません」
言葉を交わして、初めて目が合う。
金平は、目を大きく見開いて、固まった。
「どーも」
「お、おう」
狭いサウナの中では、隣同士に座るしかなく、俺は金平の隣に腰を下ろした。
「岸本…だよな?」
「金平……さん、久しぶりです」
「バスケ、続けてるか?」
「あー、大学の部活でやるほどやないですけど、してます。今日も南たちとバスケしてきました」
「それはよかった」
「何でですか?」
「俺のせいでバスケ嫌いになってたら…って思ったからな」
なんだかんだ、金平のおっさんもバスケ好きなんやな。
悪い人やないのは知っとったけどな。
その後、話は続かず、何とも言えない沈黙が流れる。
「そういや、金平さんは、結婚とかしとらんのですか?」
「結婚か……ま、そういう雰囲気の人がいたことはあったけどな」
ほー、この人の恋愛話は興味あんねんけど、、、
「あっちー!俺、出ますわ」
こんな蒸し暑いところに長居なんて出来るわけあらへん。
「は?ああ、俺もそろそろ出ようかな」
二人揃って、水風呂へと向かう。
ザブンと浸かって、
「金平さんの恋愛、興味ありますわ」
「お、俺の昔のロマンス、聞いてくれるのか?」
どこのおっさんも過去の栄光の話は好きなんやな。
確かに気にはなるけど、、、
「冷たっ!俺、あんまり冷たすぎる風呂もあかんのですわ」
「まだ、浸かったばっかだぞ?」
普段、サウナも水風呂にも入らない俺には、この良さが分からない。
隣の湯船へと浸かりなおせば、金平も俺を追いかけるように着いてきた。
意外と、寂しがりなんか…この人……
ちょっと面倒なような気持ちも湧いてくるが、北野さんに到底及ばないとはいえ、2年間監督でもあるわけやし…
ま、話を聞いておいて今度の南達との呑みの席での話のタネにするのもありやしな。
そう思って、隣りを見ると神妙な面持ちで話し出す準備をしている金平と目が合う。
「すまんが、聞いてくれ。俺は、豊玉の監督をしていた当時、付き合っていた彼女がいてだな……」
しかし……ここの風呂の湯、熱すぎや。
ったく…全然長く浸かれる気がせえへんし、絶対、金平の話は長い。
「あー、すません。熱すぎるんで出ますわ。金平さんの話聞きたないっちゅうわけやないんです。長風呂出来へんんですわ」
「おい、まだ何分も浸かってないだろ?」
明らかにがっかりした顔の金平に、可愛そうなことをしたかもしれないと思いながらも、これ以上、風呂に浸かっていたらのぼせてしまう。
「風呂もラン&ガンなんすわ」
「……それは、笑っていいのか?」
「……いや、サブいんで笑わんといてください」
ひんやりした気持ちで、俺は金平より先に風呂を出た。
風呂自体は早いが、このもじゃもじゃの長い髪の毛を乾かすのは、時間がかかる。
銭湯の出力の弱いドライヤーだと尚更だ。
金平のおっちゃんが出てきて、
「ラン&ガンじゃなかったのか…」
と笑って突っ込んでくれた。
中々話の分かるおっちゃんやないけ。
着替え終わった金平のおっちゃんは俺の隣で髪の毛を乾かし始めた。
俺が乾かし終わると、金平もドライヤーを止めて、
「コーヒー牛乳くらい奢らせてくれ」
「おおきに。普通の牛乳の方がええんですけど」
「ええで」
へたくそな関西弁にどんな顔するんが正解か分らんまま、男湯を出て、番台のオバちゃんから牛乳とコーヒー牛乳を買ってくいる金平を待った。
「いただきます」
グビッと牛乳を瓶半分ほど、飲み干す。
「風呂上り、めっちゃうまい!」
金平は、ゴクリとゆっくり味わうように飲んでいる。
「ゆっくり、俺のロマンスを話すのは、あまりに年寄りくさいから止めておくな。岸本、もし彼女がいるなら、大切にな」
「あー、なんかすんまへん。俺、今は彼女おらんのですわ」
「そうか。まだ若いからいい人が見つかるさ。その時は大切にするんだぞ」
「はい」
このアドバイスは素直に聞けそうや。
金平のおっちゃんがコーヒー牛乳を飲み終わるのを待って、銭湯を後にする。
「じゃあ、またどっかで会えたらな」
「はい、ごちそうさんです」
ちょっとだけ、金平へのイメージがよくなって、別れた。
家に帰って、金平の言った【昔のロマンス】の言葉を思い出して、名前の顔を思い浮かべた。
あの金平のおっちゃんにも好きだったのにわかれちまった彼女、おったんやなぁ。
そんな俺にも少し前に、『一生、一緒にいようね』「あたりまえやろ」なんて約束たのに、別れた彼女がおる。
一生なんて言葉、時間が経てば反故されてしまう言葉なのに、その時は俺らは絶対大丈夫やなんて思っとったな。
自分の弱いとこ突かれて喧嘩もいっぱいしたけど、時間が経てば仲直りできるもんやと思っとったんやけどな。
ベッドにドカっと寝転んで、天井を仰ぎ見る。
「ま、元気にやっとるやろ」
一人暮らしの狭い部屋で呟いた声は思いのほか大きく響く。
『元気にしてるよ』なんて笑ってくれる声が聞きたくてたまらなくなる。
「ごめんな」『私こそ、ごめん』の後に『ありがとう』「おう、ありがとうな」って別れた日のことだけでなく、しょっちゅう一緒に歩いた彼女の家の近所の商店街の景色も、喜怒哀楽のあいつの表情も目を閉じれば鮮明に浮かんでくる。
似たような髪型の女性に、名前と見間違えてしまうこともしょっちゅうだ。
キラキラした思い出として、前を向いてあるくにはまだ時間が足りなさすぎる。
もっとおっさんに、いや北野さんくらい年とった時にもきっと忘れられない人のまんまやと思う。
いますぐ、ごめんって謝って抱きしめたいけれど、あいつの人生と俺の人生はきっともう交わることはない。
愛してんで。
幸せになりや。
健康にだけは気を付けるんやで。
俺たちの恋は終わってもうたけど、愛は終わっとらんで。
そんなサブいこと考えて、電気を消す。
このままでは寝られそうにあらへんから、おもろいことでも考えたろうと彼女の顔を金平に置き換えてみる。
そしたら、頭の中がぐちゃぐちゃになって、名前の顔と金平の顔の2つが一つの胴体から生えた人間が出来上がってしまい、
「あーーー!」
大声で叫んで起き上がる。
最悪や……
忘れられない綺麗な思い出は金平と共に――
そんなんムリや。
ベッドに大の字に寝そべって、目を閉じることもできずに天を仰いだ。
修理には一週間ほどかかるらしい。
くそ暑い日が続いているから、水のシャワーをガーっと浴びてしまえばいいのだが、2-3日続くとそろそろ熱い風呂が恋しくなってくる。
今日は、久しぶりに南達とバスケをして飯を食った後、部屋のシャワーを浴びる気にはなれなくて、そのまま銭湯へと向かった。
暑いのは苦手やけど、ついでにサウナにも入って、汗を流しとこ。
番頭のおばちゃんにじゃり銭を払って、貴重品ロッカーに財布を預ける。
女風呂なんて全く興味ないフリをして一瞥し、男風呂ののれんをくぐる。
ざっと脱衣所を見た感じでは先客は3人程度。
ゆっくり風呂を楽しめそうや。
デカいバスケ用品が入ったリュックは場所を取るから、脱衣かごを二つ拝借して片方にリュックをおく。
タオルを取り出して、裸になり、ヘアゴムで長い髪をひとまとめにした。
大学に入ってから開けたピアスも外してリュックの前ポケットへ。
タオルで股間を隠すか肩にかけるか迷った末に手で持ったまま、ガラガラと引き戸を開けてもくもくと湯気が立ち込める中へと足を踏み入れる。
湯船へと向かう前に、髪をほどいて洗い場で身体を洗う。
本当は家にあるちょっとええシャンプーの方が仕上がりはいいのだが、今日はないので備え付けのリンスインシャンプーで頭をがしがしと洗った。
流した後、ちょっとごわつくのはしゃあない。
後で丁寧にドライヤーでもしたら何とかなるやろ。
最後に顔を洗ったら、濡れた髪をお団子に結って、湯船の前にサウナへと向かう。
小さな小窓からぼんやり先客が見える。
一人なら、ええか。
あんまり長居はしないから、大阪コテコテの口うるさいおっちゃんじゃないことを祈りつつ、戸を開けて俺は固まった。
金平やんけ……
あのくるくる天然パーマとちょっと辛気臭い顔は2,3年では忘れるわけはない。
高校時代のバスケ部は、少々苦い思い出がある。
北野さんの後からやってきた監督は、北野さんの指導を否定するかのような戦術を俺たちに押し付けてきた。
結果は、高三のインターハイ初戦敗退。
初戦で、やっと本音でぶつかり合えた俺たちと金平だったが、微妙な距離感はすぐに変わることはなく、わだかまりを残したまま俺達の代は高校を卒業した。
せや、インターハイ初戦のタイムアウト中に俺は金平に殴られたしな。
まさかこんなところで会うなんて思ってもみなかった。
豊玉をクビになった後もまだ大阪におったんやな。
扉を開けっ放しのまま、予想外の再会に驚いて立ち尽くしている俺に、
「あの…閉めてもらえませんか?」
全く気付いていない金平は言葉を発した。
「あ、すんません」
言葉を交わして、初めて目が合う。
金平は、目を大きく見開いて、固まった。
「どーも」
「お、おう」
狭いサウナの中では、隣同士に座るしかなく、俺は金平の隣に腰を下ろした。
「岸本…だよな?」
「金平……さん、久しぶりです」
「バスケ、続けてるか?」
「あー、大学の部活でやるほどやないですけど、してます。今日も南たちとバスケしてきました」
「それはよかった」
「何でですか?」
「俺のせいでバスケ嫌いになってたら…って思ったからな」
なんだかんだ、金平のおっさんもバスケ好きなんやな。
悪い人やないのは知っとったけどな。
その後、話は続かず、何とも言えない沈黙が流れる。
「そういや、金平さんは、結婚とかしとらんのですか?」
「結婚か……ま、そういう雰囲気の人がいたことはあったけどな」
ほー、この人の恋愛話は興味あんねんけど、、、
「あっちー!俺、出ますわ」
こんな蒸し暑いところに長居なんて出来るわけあらへん。
「は?ああ、俺もそろそろ出ようかな」
二人揃って、水風呂へと向かう。
ザブンと浸かって、
「金平さんの恋愛、興味ありますわ」
「お、俺の昔のロマンス、聞いてくれるのか?」
どこのおっさんも過去の栄光の話は好きなんやな。
確かに気にはなるけど、、、
「冷たっ!俺、あんまり冷たすぎる風呂もあかんのですわ」
「まだ、浸かったばっかだぞ?」
普段、サウナも水風呂にも入らない俺には、この良さが分からない。
隣の湯船へと浸かりなおせば、金平も俺を追いかけるように着いてきた。
意外と、寂しがりなんか…この人……
ちょっと面倒なような気持ちも湧いてくるが、北野さんに到底及ばないとはいえ、2年間監督でもあるわけやし…
ま、話を聞いておいて今度の南達との呑みの席での話のタネにするのもありやしな。
そう思って、隣りを見ると神妙な面持ちで話し出す準備をしている金平と目が合う。
「すまんが、聞いてくれ。俺は、豊玉の監督をしていた当時、付き合っていた彼女がいてだな……」
しかし……ここの風呂の湯、熱すぎや。
ったく…全然長く浸かれる気がせえへんし、絶対、金平の話は長い。
「あー、すません。熱すぎるんで出ますわ。金平さんの話聞きたないっちゅうわけやないんです。長風呂出来へんんですわ」
「おい、まだ何分も浸かってないだろ?」
明らかにがっかりした顔の金平に、可愛そうなことをしたかもしれないと思いながらも、これ以上、風呂に浸かっていたらのぼせてしまう。
「風呂もラン&ガンなんすわ」
「……それは、笑っていいのか?」
「……いや、サブいんで笑わんといてください」
ひんやりした気持ちで、俺は金平より先に風呂を出た。
風呂自体は早いが、このもじゃもじゃの長い髪の毛を乾かすのは、時間がかかる。
銭湯の出力の弱いドライヤーだと尚更だ。
金平のおっちゃんが出てきて、
「ラン&ガンじゃなかったのか…」
と笑って突っ込んでくれた。
中々話の分かるおっちゃんやないけ。
着替え終わった金平のおっちゃんは俺の隣で髪の毛を乾かし始めた。
俺が乾かし終わると、金平もドライヤーを止めて、
「コーヒー牛乳くらい奢らせてくれ」
「おおきに。普通の牛乳の方がええんですけど」
「ええで」
へたくそな関西弁にどんな顔するんが正解か分らんまま、男湯を出て、番台のオバちゃんから牛乳とコーヒー牛乳を買ってくいる金平を待った。
「いただきます」
グビッと牛乳を瓶半分ほど、飲み干す。
「風呂上り、めっちゃうまい!」
金平は、ゴクリとゆっくり味わうように飲んでいる。
「ゆっくり、俺のロマンスを話すのは、あまりに年寄りくさいから止めておくな。岸本、もし彼女がいるなら、大切にな」
「あー、なんかすんまへん。俺、今は彼女おらんのですわ」
「そうか。まだ若いからいい人が見つかるさ。その時は大切にするんだぞ」
「はい」
このアドバイスは素直に聞けそうや。
金平のおっちゃんがコーヒー牛乳を飲み終わるのを待って、銭湯を後にする。
「じゃあ、またどっかで会えたらな」
「はい、ごちそうさんです」
ちょっとだけ、金平へのイメージがよくなって、別れた。
家に帰って、金平の言った【昔のロマンス】の言葉を思い出して、名前の顔を思い浮かべた。
あの金平のおっちゃんにも好きだったのにわかれちまった彼女、おったんやなぁ。
そんな俺にも少し前に、『一生、一緒にいようね』「あたりまえやろ」なんて約束たのに、別れた彼女がおる。
一生なんて言葉、時間が経てば反故されてしまう言葉なのに、その時は俺らは絶対大丈夫やなんて思っとったな。
自分の弱いとこ突かれて喧嘩もいっぱいしたけど、時間が経てば仲直りできるもんやと思っとったんやけどな。
ベッドにドカっと寝転んで、天井を仰ぎ見る。
「ま、元気にやっとるやろ」
一人暮らしの狭い部屋で呟いた声は思いのほか大きく響く。
『元気にしてるよ』なんて笑ってくれる声が聞きたくてたまらなくなる。
「ごめんな」『私こそ、ごめん』の後に『ありがとう』「おう、ありがとうな」って別れた日のことだけでなく、しょっちゅう一緒に歩いた彼女の家の近所の商店街の景色も、喜怒哀楽のあいつの表情も目を閉じれば鮮明に浮かんでくる。
似たような髪型の女性に、名前と見間違えてしまうこともしょっちゅうだ。
キラキラした思い出として、前を向いてあるくにはまだ時間が足りなさすぎる。
もっとおっさんに、いや北野さんくらい年とった時にもきっと忘れられない人のまんまやと思う。
いますぐ、ごめんって謝って抱きしめたいけれど、あいつの人生と俺の人生はきっともう交わることはない。
愛してんで。
幸せになりや。
健康にだけは気を付けるんやで。
俺たちの恋は終わってもうたけど、愛は終わっとらんで。
そんなサブいこと考えて、電気を消す。
このままでは寝られそうにあらへんから、おもろいことでも考えたろうと彼女の顔を金平に置き換えてみる。
そしたら、頭の中がぐちゃぐちゃになって、名前の顔と金平の顔の2つが一つの胴体から生えた人間が出来上がってしまい、
「あーーー!」
大声で叫んで起き上がる。
最悪や……
忘れられない綺麗な思い出は金平と共に――
そんなんムリや。
ベッドに大の字に寝そべって、目を閉じることもできずに天を仰いだ。
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