しぬのが…?【流藤】
「藤真さん、飲みすぎ…」
なんて言っている俺も大分酔っぱらっている。
一升瓶が二本目ともなれば、当然ではあるが…
普段使いのおそろいのコップに注いで日本酒を煽っている。
総菜のパックだけでなくスナック菓子やカップ麺のゴミが散らかり始めたローテーブルを信念が来る前に片づけなくては…なんてぼんやり考えてみるけれど、藤真さんは全くお構いなしだ。
「っんだよ、流川。大晦日だからいいだろ?」
藤真さんは手酌で日本酒をコップになみなみと注ぐ。
ちびり…じゃなくて、ゴクリと喉を鳴らして飲んだ。
日本酒を飲む様も美しいけれど、2人きりの部屋で藤真さんのべらべらとくだを巻くのを相手する俺の身にもなって欲しい。
適当に相槌をうてば、「聞いてんのか?」と檄がとんでくるし…勘弁してほしい。
テレビでは、恒例の歌合戦が流れているけれど、藤真さんはあまり興味がなさそうだ。
コップの日本酒をぐびっと飲み干した藤真さんは唐突に、
「俺が別れるっつったら?」
と切り出した。
「別れねぇっす」
あったりめーだが即答だ。
「例えばだよ!人生、何があるか分かんないだろ?」
「…………死ぬっす」
「はぁ!!??」
新たに日本酒を手酌しようとした藤真さんの手が止まる。
「藤真さんと別れるくらいなら死ぬのが良いっす」
「酔ってんのはオマエだろ?」
「藤真さんほどじゃねぇっす」
実際に藤真さんと別れてどう生きていけばいいなんて全く想像がつかない。
…というか、想像なんてしたことがない。
俺がアメリカから帰国して、ひょんなことから再開して一緒に暮らし始めて、恋人同士になって……確かにまだ一生のパートナーだという感じはないかもしれないが、最後に添い遂げるのは藤真さんしかいないと思っている。
「じゃ、バスケと俺、どっちが大事?って聞いたら?」
「……………比べるもんじゃねぇ」
「だろ?お前は俺がいなくてもバスケで生きていける」
「無理」
「アホだろ…」
「メシより藤真さんが良い」
「は?」
「藤真さん食わないと死んじまう」
藤真さんがいないと、本当に生きていけないと思う。
この家だって、いつもの飯だって、バスケは確かに俺の人生だけど、よく考えたら藤真さんより大事じゃねぇか。
バスケなんかに浮ついている場合じゃねぇ。
「俺、藤真さんのためならバスケ辞める」
「ちょ、ちょ…待てって!」
藤真さんは、自分を落ち着かせるように一升瓶を両手で抱えて、自分のコップに注いで、俺のコップにも注ぎ足した。
ちょっと考えるようなしぐさをして、ちびりと舐めるように日本酒を飲んだ。
「流川の気持ちは分かった!が、ちょっと重すぎねぇか?」
「そんなことないっす。死ぬまで一緒が良いっす」
真剣に藤真さんを見つめる。
もう少しで俺の誕生日だっつうこんなタイミングで別れるなんてまっぴらごめんだから、俺は真剣だ。
酔いなんてすっかり醒めている。
なのに、藤真さんはどこまで本気なんだ…?
全く読めないその表情にヤキモキしてしまう。
「ま、飲めよ」
「うっす」
緊張で喉がカラカラになっていた俺は、日本酒を飲み干す。
「流川、俺の子ども産めねぇんだよなぁ…」
「……?」
「流川と俺の子ども出来たら、めっちゃくちゃ美形なのにな」
「子ども……」
「俺と流川の子ども」
突然話題が変わって俺は混乱する。
「っつか、藤真さんが産む?」
「は?俺は男だ」
「俺も男っす…」
「知ってるっつうの」
これだから、酔っぱらいは嫌なんだ。
別れる話は?
真剣に考えてしまった俺がバカだったのか…?
「出産は死ぬほど痛いらしいから、俺と別れるくらいなら死ぬのが良いって言ったオマエが産め」
酒飲みすぎで、どあほーになった藤真さんの言うことを真に受けるのは辞めよう。
「いいっすよ」
「じゃ、決まりな」
そう言って、残りのコップの日本酒を飲み干した藤真さんは、嬉しそうにコロンと横になって寝てしまった。
「藤真さん…」
最悪だ……後数十分で年越しなのに……
誕生日を甘い雰囲気で祝ってもらえると思っていたもくろみが外れてがっくりする。
さっきはセックスの話だってしたのだから、へべれけでイケねぇかもしれないけど、姫初めと称して少々興じてもいいじゃねぇか…
心の中で一通り文句を言い終えて藤真さんの顔を見る。
「流川、結婚だ…!」
デカい寝言で嬉しいことを言ってくれた藤真さんに少しだけ怒りの留飲を下げる。
「約束っすよ…」
そっと額の傷にキスをすれば、急激に俺も眠気に襲われる。
そのまま、藤真さんの顔が良く見える位置でゴロンと寝転がる。
このまま、2人で死んでも後悔はねぇよ…
電気もテレビもつけっぱなしなのもお構いなしで、俺は意識を手放したのだった。
***
2022.1.1.
Image song : 藤井風「死ぬのがいいわ」
【あとがき】
酒癖の悪い藤真くんに翻弄される流川くんが書きたかっただけ。
自身も酔っぱらっているので、修正する可能性大ですが…
ちょっと過大解釈かもしれませんが、私のこの曲のイメージです。
なんて言っている俺も大分酔っぱらっている。
一升瓶が二本目ともなれば、当然ではあるが…
普段使いのおそろいのコップに注いで日本酒を煽っている。
総菜のパックだけでなくスナック菓子やカップ麺のゴミが散らかり始めたローテーブルを信念が来る前に片づけなくては…なんてぼんやり考えてみるけれど、藤真さんは全くお構いなしだ。
「っんだよ、流川。大晦日だからいいだろ?」
藤真さんは手酌で日本酒をコップになみなみと注ぐ。
ちびり…じゃなくて、ゴクリと喉を鳴らして飲んだ。
日本酒を飲む様も美しいけれど、2人きりの部屋で藤真さんのべらべらとくだを巻くのを相手する俺の身にもなって欲しい。
適当に相槌をうてば、「聞いてんのか?」と檄がとんでくるし…勘弁してほしい。
テレビでは、恒例の歌合戦が流れているけれど、藤真さんはあまり興味がなさそうだ。
コップの日本酒をぐびっと飲み干した藤真さんは唐突に、
「俺が別れるっつったら?」
と切り出した。
「別れねぇっす」
あったりめーだが即答だ。
「例えばだよ!人生、何があるか分かんないだろ?」
「…………死ぬっす」
「はぁ!!??」
新たに日本酒を手酌しようとした藤真さんの手が止まる。
「藤真さんと別れるくらいなら死ぬのが良いっす」
「酔ってんのはオマエだろ?」
「藤真さんほどじゃねぇっす」
実際に藤真さんと別れてどう生きていけばいいなんて全く想像がつかない。
…というか、想像なんてしたことがない。
俺がアメリカから帰国して、ひょんなことから再開して一緒に暮らし始めて、恋人同士になって……確かにまだ一生のパートナーだという感じはないかもしれないが、最後に添い遂げるのは藤真さんしかいないと思っている。
「じゃ、バスケと俺、どっちが大事?って聞いたら?」
「……………比べるもんじゃねぇ」
「だろ?お前は俺がいなくてもバスケで生きていける」
「無理」
「アホだろ…」
「メシより藤真さんが良い」
「は?」
「藤真さん食わないと死んじまう」
藤真さんがいないと、本当に生きていけないと思う。
この家だって、いつもの飯だって、バスケは確かに俺の人生だけど、よく考えたら藤真さんより大事じゃねぇか。
バスケなんかに浮ついている場合じゃねぇ。
「俺、藤真さんのためならバスケ辞める」
「ちょ、ちょ…待てって!」
藤真さんは、自分を落ち着かせるように一升瓶を両手で抱えて、自分のコップに注いで、俺のコップにも注ぎ足した。
ちょっと考えるようなしぐさをして、ちびりと舐めるように日本酒を飲んだ。
「流川の気持ちは分かった!が、ちょっと重すぎねぇか?」
「そんなことないっす。死ぬまで一緒が良いっす」
真剣に藤真さんを見つめる。
もう少しで俺の誕生日だっつうこんなタイミングで別れるなんてまっぴらごめんだから、俺は真剣だ。
酔いなんてすっかり醒めている。
なのに、藤真さんはどこまで本気なんだ…?
全く読めないその表情にヤキモキしてしまう。
「ま、飲めよ」
「うっす」
緊張で喉がカラカラになっていた俺は、日本酒を飲み干す。
「流川、俺の子ども産めねぇんだよなぁ…」
「……?」
「流川と俺の子ども出来たら、めっちゃくちゃ美形なのにな」
「子ども……」
「俺と流川の子ども」
突然話題が変わって俺は混乱する。
「っつか、藤真さんが産む?」
「は?俺は男だ」
「俺も男っす…」
「知ってるっつうの」
これだから、酔っぱらいは嫌なんだ。
別れる話は?
真剣に考えてしまった俺がバカだったのか…?
「出産は死ぬほど痛いらしいから、俺と別れるくらいなら死ぬのが良いって言ったオマエが産め」
酒飲みすぎで、どあほーになった藤真さんの言うことを真に受けるのは辞めよう。
「いいっすよ」
「じゃ、決まりな」
そう言って、残りのコップの日本酒を飲み干した藤真さんは、嬉しそうにコロンと横になって寝てしまった。
「藤真さん…」
最悪だ……後数十分で年越しなのに……
誕生日を甘い雰囲気で祝ってもらえると思っていたもくろみが外れてがっくりする。
さっきはセックスの話だってしたのだから、へべれけでイケねぇかもしれないけど、姫初めと称して少々興じてもいいじゃねぇか…
心の中で一通り文句を言い終えて藤真さんの顔を見る。
「流川、結婚だ…!」
デカい寝言で嬉しいことを言ってくれた藤真さんに少しだけ怒りの留飲を下げる。
「約束っすよ…」
そっと額の傷にキスをすれば、急激に俺も眠気に襲われる。
そのまま、藤真さんの顔が良く見える位置でゴロンと寝転がる。
このまま、2人で死んでも後悔はねぇよ…
電気もテレビもつけっぱなしなのもお構いなしで、俺は意識を手放したのだった。
***
2022.1.1.
Image song : 藤井風「死ぬのがいいわ」
【あとがき】
酒癖の悪い藤真くんに翻弄される流川くんが書きたかっただけ。
自身も酔っぱらっているので、修正する可能性大ですが…
ちょっと過大解釈かもしれませんが、私のこの曲のイメージです。
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