頼られたい男【清田信長】
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『ノブくん、契約書持ってきて』
「げっ!?おまえ…何でもう知ってるんだよ」
『花先輩から聞きました。牧先輩も心配してたって』
「牧さーん!」
ここは、大学の宿舎のミーティングルーム。
大学のバスケ部が優先して入れる宿舎のため、バスケ部の寮のようなものだ。
部屋は部外者立ち入り禁止だが、ミーティングルームなどの共通スペースは立ち入り可能で、俺は今、俺の彼女南海と向き合っている。
南海と付き合い始めて一年近く。
出会いは、俺が大学の入学式の日に危うく怪しいマルチに引っ掛かりそうなところを南海に助けてもらった。
その後、何かと縁があり、牧さんとその彼女、花先輩の後押しもあって付き合うことになった。
俺は、バスケ以外に関しては、押しが弱く、生活力もない。
同い年とは思えないほどしっかりものの南海は、バスケ部の正式なマネージャーではないものの当たり前のようにこの宿舎に出入りし、俺の世話をやく。
大会前の忙しいときは、正式なマネージャーの花先輩の手伝いもこなす。
南海がいなかったら、俺はどうなってしまうのかと思うくらい頼りまくってしまっている。
正式なマネージャーになるよう何度も勧誘されているが、
『ノブくんで手一杯です!』
と、嬉しいような嬉しくないような言葉で断っている。
一度、オレからもバスケ部のマネージャーになったらと聞いたことがあるが、
『ノブくん以外の部員のお世話もしていいの?嫌じゃないの?』
なんて可愛く言われたら、オレは顔が真っ赤になって、それ以降は気軽にそんなこと言えなくなった。
南海にはオレだけを見ててほしい。
他の男にとられるなんてもっての他だ。
そして、昨日、俺はテレビの受信チェックにきた業者のセールストークに乗せられて、インターネットの契約をしてしまった。
NBAも放送される有料チャンネルも見放題になると言われ、即決してした。
ちなみに俺は、パソコンは持っておらず、これを機会に買うのもいいな~とのんきに考えていた。
宿舎のテレビのある部屋には、業者が入るので、牧さんが心配したのだろう。
連絡を受けた南海が朝から、押しかけてきたのだ。
そんな俺の頭の中を見越したように、はぁーと大きなため息をついた南海にしぶしぶ契約書を持ってきた。
『げっ!?月5000円近くするじゃん!すぐ解約の電話を入れてください』
「NBAも観れるし、便利だって。Wi-Fi使えるし」
『第一、ノブくん、パソコン持ってないでしょ。スマホだって、そんなに使ってないじゃん』
「それは、これから買おうかと…」
『じゃあ買ってから、また契約して下さい』
ぴしゃりと言われて、俺は、しぶしぶ解約の電話をかけることになった。
無事、解約手続きを終えると、
『よくできました!これで一安心』
そう言って、綺麗に笑った。
俺は、南海のこの笑顔が好きだ。俺も嬉しくておうっと笑った。
『じゃあ、部活頑張って!』
「南海はバイト?」
『…そうだよ』
急に南海の顔が曇る。
「なんか元気ないじゃん。バイト先でなんかあった?」
『んー大丈夫。ノブくんの顔見たら元気出たし、もう行かないと!』
「明日、部活自主練だけだから、今日バイト先行っていいか?終わったら、飲んで帰ろうぜ!」
『いいの!?待ってるね!』
少しほっとしたように南海は言った。
南海のバイト先は、スポーツバーだ。
大学に入ってすぐ、時給がいいからと働き始めた。
いつまでも親のすねをかじりたくないと学費以外の一人暮らしの費用はすべて自分でまかなっているらしい。
学業に、アルバイトに、俺の世話に、バスケ部のマネージャー手伝いに…忙しすぎるだろうと思うが、南海はいつも元気で笑顔を絶やさない。
そんな南海が少し元気がないのが気になった。
スポーツバーの仕事自体は楽しいらしいが、愛嬌のある南海は酔った客に絡まれることも多いらしい。
それどころか好意を寄せる客に言い寄られていると店長に聞いたこともある。
たまにバスケ部仲間と飲みに行って、様子を探るが、確かにそういう目で見ている客がちらほらいるのが気になっていた。
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