special friend…?【三藤】

「おめぇは、道を外れないでずっとバスケ頑張ってきたんだな…」

「当然だろ?おまえみたいに2年もバスケしないなんて、考えられないぜ!」

藤真は、当然といった表情で俺を見つめた。

俺以上に過酷な環境でバスケを続けてきたのに、俺は資質がある赤木に嫉妬して、自分の怪我をきっかけにグレてしまったことを改めて後悔する。

詳しくは聞けなかったが、藤真が監督を兼任する前にいた監督は藤真にセクハラまがいの行為をし、それを藤真の取り巻きの女子に告発されて辞任に追い込まれたらしい…

それを自分のせいで監督が辞めたのだと遠い目をして苦笑いした藤真の表情が頭から離れない。

辛い環境だったのに、夏のインターハイyでは監督としてチームをまとめ、自身もめちゃくちゃ上手いプレーヤーときたら、尊敬の念を抱かずにはいられなかった。

「俺は、本当におこちゃまだったよ…」

「ははっ!三井でも凹むことあんだな…」

「バカヤロウ!俺、あん時のことめちゃくちゃ後悔してるんだっつーの」

「よく分かんねーけど、今、バスケやって、夏には俺達に勝ったんだからもっと自信持ってくれねぇと困る…」

前を向いて、少し悲し気な表情で藤真はつぶやいた。

「バスケに関しては、多少自信はあるけどよ…もっと練習しねぇとって思ってるぜ」

「俺はその倍、練習して冬の選抜は俺らが勝つ!」

そんな会話を交わしたのが、国体でのこと。

藤真ともっと親しくなりてぇな…なんて思ったけれど、試合で会う以外、接点を持つのは難しいと思っていた。

そう、今日までは…

***藤真健司

ちょっとくらい道を反れても良かったのかもしれない。

もっと自分の気持ちに正直に、嫌だっつって逃げた方が良かったのかもしれない。

そう思えたのは、三井という男と国体で会話を交わしてから。

一志から何となく中学の時にMVP取ったやつで、高校に入ってすぐにグレちまった奴だとは聞いていたが、こんな人間味あふれるやつだったとは知らなかった。

おこちゃまだったと自虐的に笑っていたけれど、俺は少し羨ましかった。

俺だって、こんな環境は嫌だって少し距離をおいていれば…

実際、周りから見たらずっとバスケをやめなかった俺が歩んできた道の方が正しいって思われるだろうし、今のこの仲間たちとこうやってバスケが出来ているのはぐれたりしなかったおかげなのだけれど、三井という男が見せる魅力みたいなもんが気になって仕方ない。

もっと、三井と親しくなりたいと思っても、国体が終わってしまえば試合で顔を合わせるくらいしか接点がない。

少なくともさっきまではそう思っていた。

「藤真…?」

前からやってきた男に声を変えられて俺はめちゃくちゃ驚いた。

俺の自宅のマンションの入口で対峙しているのは、三井寿その人だったからだ。

「三井?なんでここに…?」

「なんでってここ、俺ん家のマンション」

「まじか!?俺もこのマンションだぜ」

こんな偶然あるんだろうか?

「これから練習か?…ってびみょーな時間だけど…」

バスケ部に所属している俺達が、15時くらいにバスケの練習もしないでこんなところで会うなんて、奇跡みたいなもんだ。

「明日からテスト期間だから、今日は休み」

「マジか!俺んとこも。ベンキョーなんてやってらんねぇって体育館で練習してたら、怒られてしぶしぶ帰ってきたとこ。全然身体動かし足んねぇ…」

「俺もちょうどランニングでもって思ってたとこだから…バスケ出来るとこあるからそこでやろうぜ!」

「いいな!っつーか、この辺にそんな場所あったか?」

「二年くらい前にできた」

「俺がグレてた間に…」

「ははっ!二年っつーのは大きいんだな!」

「ほんとにな…」

ほんの少し後悔をにじませた表情…これが三井の魅力なんだろうな。

この日を境に俺たちの友情が始まった。

そして、どんどん三井寿という男の魅力ハマっていったのだった。


***長谷川一志

ちょっと雰囲気変わったか?

そんな風に気が付いたのは、国体が終わってから。

夏の予選で決勝リーグにすら行けず、俺たちの夏は終わった。

そして、冬の選抜に向けて変わりたいともがいていた夏の終わり。

藤真も髭を伸ばしたり、外見から変わろうとしていたがそうそう変われる訳じゃないって、一通り試してすぐに元に戻ったけれど、色々苦悩していたが国体が終わって少しした頃、何かが吹っ切れたようにバスケに関して悩む姿を見せなくなった。

そして、冬の選抜は神奈川2位。

全国こそいけなかったものの決勝まで行くことが出来て、何とか有終の美を飾れたんじゃないか…そう思っている。

そして、藤真は大学の推薦を断りバスケを続けないことに決めた。

俺たちみんなが驚いたが、一般受験すらせず一浪して将来のことを考えるのだそうだ。

そんな俺は都内の大学に進学を決めているが、やっぱり藤真のことが気になっていた。

卒業を目前に控え、学校は自由登校で、今日の午後、部活に顔を出そうとバスケ部の3年で約束をしている。

そのため、午前は駅前の本屋にでも行こうと歩いていると、誰かと親しそうに歩いている藤真を見つけた。

「……三井寿…」

藤真と三井寿が並んで歩いているのを見て、何故か見つかってはいけないと店の陰に隠れた。

藤真から三井寿の話を聞いたのは、国体の後で、「あいつはすげぇ」って言っていたのを何だかもやもやとした気持ちで聞いたのを思い出す。

その時は「藤真の方がすげぇに決まってるんだろ!」「そういんじゃないんだけどな…」って会話を交わしたことは覚えている。

それ以降、特に藤真の口から三井寿の話題を聞いたことがなかったけれど、いつの間に親しくなったのだろうか?

「三井!」

藤真の嬉しそうに三井寿を呼ぶ声に以前に感じたモヤモヤを思い出す。

意外な組み合わせのようで、お似合いの二人から目が離せずにこそこそと様子をうかがうことしかできなかった。

俺たちといる時とは違った雰囲気のキラキラした表情で、なんかお似合いの二人だな…悔しいけれど俺はそう感じた。


***堀田徳男

三っちゃんの雰囲気がまた変わった気がする。

そう気づいたのは、三っちゃんの国体が終わって涼しくなって来た頃。

何だかんだバスケ部に復帰してからも、つるんでる俺がいうんだから間違えねぇ。

国体でも活躍した三っちゃんは大学の推薦入試に合格してますますバスケに熱が入っているようだ。

そんな俺も何とか卒業出来ることになり、絶賛就職先を探しているところだ。

もうすぐ卒業で寂しくなってしまうが、俺はずっと三っちゃんの応援団だ。

今日は三っちゃんの自宅近くの駅に用事があって久しぶりに来たがタイミングよく三っちゃんを見つけた。

「お…三っちゃ…」

大声で呼ぼうとして俺はやめた。

あれは…緑のユニフォームの高校の…ホケツくん?

名前は何だったかな…?

親しそうに話していて、何故か本能的に見つかってはいけない気がして店の陰に隠れようとした時には怪しげに二人を見つめる男。

三っちゃんのストーカーか?

「おい…」

「しー!藤真と三井寿にバレるから…」

「そうだ、藤真だ!」

「静かにしてくれよ…って…すいません!」

その男は俺の風貌に驚いたのか急に敬語になった。

「いや、俺は三っちゃんのダチで…あんたは?」

「俺は藤真の友だちで、三井寿…三井くんのことは中学の頃から憧れてて…」

「おぉ!おまえ、分かってんじゃねーか!俺は堀田徳男」

「長谷川一志」

「一志、おまえは中学の三っちゃんを知ってんだな!で、あの二人はどういう関係だ??」

「いや、俺もよく知らねぇんだ…」

「そうか…」

俺と一志はただこそこそと喋りながら、仲のよさそうな二人を伺っていると、話していた二人は踵を返してどこかへ向かう。

慌てて二人で追いかけていると、駅近くのバスケットゴールのある公園へ向かうようだ。

三っちゃんは学ラン、藤真はブレザーを脱いで、バスケを始める。

練習とも違い、試合や練習とは違ってキラキラ楽しそうな三っちゃんの姿に嬉しくはなるけれど、その楽しそうな姿を俺に見せてくれないのはどこか寂しくて…涙があふれてくる。

そっとハンカチを差し出されたのでずびびっと鼻をかむ。

「ありがとな…」

「あ、ああ…」

気まずそうな顔の一志に伝える。

「二人が幸せで、俺達嬉しいよな!」

自分に言い聞かせるように一志に問いかける。

「そうだな…」

俺はこいつと良い関係になれるかもしれない。

「一志、俺達、ダチだよな?」

「あ、ああ…あんまり覗き見してるのも良くないし戻らないか?」

一志がそう言うので、俺はがっしりと肩を組んで新しく出来たダチと駅へ戻ったのだった。


***epilogue

いかにも不良な風貌の男と気の弱そうな男が肩をくんで去っていった公園では、公園のベンチでポカリを飲んで休憩している二人の高校生。

お互い違う制服を着ている。

「なぁ…藤真。本当に大学でバスケやんねぇのかよ…」

「あぁ…少し離れてみるよ」

「俺達の関係は…」「これからも…だろ?」

不敵に微笑んだのは色素の薄いさらさらな髪の藤真と呼ばれた男の方。

「いや…もっと、そのよ…」

「もっと…か…」

藤真はおもむろにブレザーを手に取って、いわゆる第二ボタンの位置にあるボタンを引きちぎって、顎に傷のある男に差し出す。

「これって…」

「三井もくれるだろ?」

きれいに微笑む藤真に三井と呼ばれた男は目を奪われたようにその場に立ち尽くしている。

「俺が取ってやろうか?」
「いや…」

三井は慌てて学ランの第二ボタンを引きちぎったものの、藤真の第二ボタンと並べて手のひらに並べたまま三井は見つめた。

「いただき!」

藤真は三井の手からボタンを奪うと満足そうな顔で、

「俺という男がいるから、女になびくなよ?」

はっきりとそう言った。

三井は戸惑っていたものの手に残ったボタンをぎゅっと握りしめて、

「ったりめーだろ!藤真こそ、モテんだから気を付けろよ!」

そう言うと同時に二人は照れ臭そうに笑いあった。

そして、それぞれ握りしめたボタンと逆の手を繋いで幸せそうに帰路に着いたのだった。

***
お題箱より
「三藤をお願い致します🙏🥺❤️
一志を挟んでのふたりが見たいです!」
Thank you for your Request!!

<あとがき>
一志を挟んでの二人が、一志と徳ちゃん目線から見る二人(しかも一志の登場少ない。。汗)になってしまいました。
しかも直接の絡みもなくてすいません。
何だかこんなお話が思い浮かんだので、書いてみました!
いつか4人の絡みも書けたらいいなぁ~
リク主様これじゃないだったら、本当にごめんなさい!
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